【レビュー】新型アルテグラ(R8100)を使ってみて ドライブトレイン編(前編)
さて10月まで納期不明だった新型アルテグラ(R8100)が突然納品されました。前回に続き、新型アルテグラのレビュー2回目です。cyclowiredに載っていることを書いても仕方がありませんので、マニアックな点を中心に紹介します。今回はドライブトレイン関連です。前編としてFD、RDを紹介します。
前回の記事はこちらから。
■フロントディレイラー(FD-R8150)について
コンパクト化、軽量化
まずシマノのコメントとしては、旧型デュラ(R9170)と比較すると1.5倍ほど変速が速くなったと言っています。その理由は、従来よりトルクのあるモーターを使ってパンタグラフのリンク構造を見直し、構造をシンプルにしたとのこと。
実物を見ると、確かに構造がシンプル&コンパクトになっています。
私が今まで使っていたのは2世代前のFD-9070ですが、こちらと比較すると如何にコンパクトになったかが分かります。ちなみに前作であるFD-R9150も、大きさ的にはFD-9070と変わりません。
コンパクトになれば、当然に重量も軽くなります。アルテグラの場合、前作のFD-R8050からは約22gもの軽量化(132g⇒110g)。デュラエースのFD-R9250に至っては、公称重量が96gと100gを切っています。機械式変速ですか?と聞きたくなるほどの軽さです。
変速速度
変速の速度ですが、シマノの謳い文句通り本当に今までのリア並みの速さで変速します。実際に自分のバイクで体験するまで半信半疑でしたが、本当でした。従来が『ウィ~~ン、ガチャ』というテンポで動作していたのが、今回は『ウィン!』で完了します。
フロント変速の速さとスムースさは、かなりのアドバンテージなのでは無いか?と思います。
フロント変速が楽というのは電動のメリットの1つです。私は600kmブルべの終盤で機械式のフロント変速が疲れて面倒になり、電動化を決意した経緯があります。5800系105のFD&レバーだったので、結構重かったんですよね…。
■リアディレイラー(RD-R8150)について
続いてRDです。
ジャンクション機能を内蔵
従来のジャンクションAの機能がリアディレイラーに内蔵されてしまいました。これでジャンクションAの位置に悩む必要は無くなり『ファンクションボタン』という機能に衣替えすることになります。ファンクションボタンはリアディレイラーのこの位置にあります。丸いものが2つ並んでいますが、左側がファンクションボタンです。
ファンクションボタンの役割
ファンクションボタンには、以下の機能があります。機能の呼び出し方と共に紹介します。
・バッテリー残量確認:シングルクリック(ただしEdgeシリーズならサイコンから確認可能)
・シフトモード変更:ダブルクリック
・bluetooth接続モード:長押し(ただし2秒まで)
・アジャストモード:2秒以上長押し(ただし5秒まで)
・有線ペアリングモード:5秒以上長押し
以上の5種類の機能を持っています。
まずバッテリー残量確認はクリックすると残量に応じで異なる色のLEDが光ります。『光でお知らせ』ってやつです。シマノが意図してやっているのか分かりませんが、何故かスプロケットに光が当たって近未来な感じ。
GarminのEdgeシリーズを使っていれば、ボタンを押さなくてもバッテリー残量をサイコンの画面で確認することが可能です。これはワイヤレスユニットが出た時からの機能なので、新しい機能ではありません。Garmin以外の他メーカーでも可能とは思いますが未確認です。
シフトモードはシンクロシフトのことです。Di2の割と初期からある機能ですが、これを機にDi2を使い始める方もいるでしょうから紹介します。
シンクロシフトには2つのモードがあります。まずセミシンクロシフトは、フロントの変速に合わせて、ギア比を維持するために自動でリアが変速するモード。例えばアウター⇒インナーの変速をすると、自動でリアが何枚かシフトアップします。
次にシンクロシフトですが、リアの変速に合わせてフロントが変速するモードです。例えばフロントアウターのままリアをシフトダウンしていく時、ファイナルローから2枚目(11-30Tなら27T)になると自動でフロントがインナーに入ります。何枚目になったら機能を発動させるか?はE-TUBEアプリで自由に設定可能です。
あまり使われていない機能だと思うのですが、私はトップバースイッチ(サテライトスイッチ)と組み合わせてヒルクライムで活用しています。上ハンに付けたスイッチだけではリアの変速しか出来ませんが、この機能を使うとフロント変速も可能になるからです。
(※トップバースイッチにフロント変速をあえて割り当てる事も可能です)
Bluetooth接続モードはスマホと接続してE-TUBEアプリ(シンクロシフトの設定なんかが出来る)を使用する場合のモードです。アジャストモードはリア変速を微調整するモード。機械式変速のアジャストボルトと同じです。有線ペアリングモードは、組付けした後にSTIとRDを固有のペアとして紐づけするためのモードです。無線で使用する場合はこの処理が必要なのは分かりますが、有線接続する場合でも必要なのです。有線で使う人には、余計な手順が増えたことになります。
ワイヤレス機能について
RDのワイヤレス機能について。無線変速を行う場合、まずはスマホに入れたE-TUBEアプリでマスターユニットであるRDをユニット登録します。次のステップとして、STIの登録を行います。STIにはQRコードがプリントされているので、それをスマホで読み取り、既に登録されているRDと紐づけを行います。これが無線変速を行うにあたり必要な初期のペアリングです(先ほど書いた通り、有線変速でも必要なのですが)。
ショップでコンポを購入して組付けも依頼する場合、この作業はショップが行います。そうしないと変速が出来ないためです。通販でコンポを購入した場合など組付けを自分で行う場合は、この作業も自分で行う必要があります。
RDはANTとBluetoothでの通信が可能です。サイコンとは主にANTで通信、スマホとはBluetoothで通信することになります。先ほどEdgeシリーズではバッテリー残量確認が可能と書きましたが、ANTで通信可能なサイコンであれば、バッテリー残量表示機能は備わっていると思います。
充電について
充電についてです。従来はジャンクションAに充電ポートがありましたが、ジャンクションAがRDに内蔵されたためRDに充電ポートがあります。充電ポートの位置はここです。防水性が若干心配ですが、シマノですから問題無いのでしょう。このカバーはスモールパーツとして交換が可能です。
充電ケーブルはこちらです。コンポと同様に紙箱、紙袋に入っています。また今回からACアダプターが無くなり(RDに内蔵されたとのこと)、ケーブルのみになりました。随分とコンパクトになり、遠征時の荷物が減ると思われます。
ケーブルの片方はUSB。もう片方は専用の形状をしています。ピンが4本ありますが、ピンの1本は長くなっているため接続の向きは決まっています。
デザインについて
見た目がカッコ悪くなるので、個人的な信条としてRDのロングケージは使わない様にしてきました。しかし今回から、そもそもデュラエースがロングケージのみになってしまいました。諦めてロングケージを使うしかありません。
近くで見るとかなりゴツいです。我々ユーザーが望む多段化の末に。
バックビューです。前作からシャドーデザインになったため、ゴツい見た目に反して外側への張り出しは最小限になっています。
新たにエレクトリックケーブル用のクリップが装備され、本体に沿うルーティングになりました。ケーブルの損傷を防ぐ効果もあると思います。
変速速度
変速の速さを追求すると無線になったとシマノは言っているが、本当なのだろうか。従来の有線式だって、ケーブルの長さは高々1mちょっとです。そんなに違いが出るとは思えないのですが、実際に変速をしてみると本当に速い。アルテグラでさえ、これ以上速くすることは出来ないのでは?と感じるほどの速度で変速します。
シマノが言うにはジャンクションAや無線ユニットなども全てRDが内蔵しているため、『脊髄反射』のように変速するとのこと。確かにボタンを押した瞬間に変速が完了している。従来は変速時に一瞬ペダルへのトルクを抜く動作をしていましたが、そんな事を考える暇もなく変速が終わっています。
従来のアルテグラDi2では『ウィーン』というテンポで変速していたところ、今回は『ウィ!』くらいで完了してしまいます。いや、これ本当に変速が楽。ストレスフリーです。フロント変速もかなり速くなったので、ロングライドでも十分メリットがあると思います。価格は高いですけども、、、
■まとめ
FD、RDとも明らかに分かるほどに変速が速くなりました。デュラエース搭載車も試乗しましたが、変速速度についてはアルテグラとの違いは僅かでした。両方乗り比べて分かるレベルです。
シマノいわく『速くなったのは無線化、RDへの機能統合による』という趣旨の発言をしていますが、リムブレーキ用の有線STIでも速くなっているのか興味があります。無線は使えませんが、RDは同じものを使うわけですからね。
使っていないので適当なことは言えませんが、RDが同じならば変速速度もかなり近い性能が得られるのではと想像します。リムブレーキ派の人も、12速化するメリットはありそうです。
後編のクランク、スプロケットはこちらから。