【レビュー】新型アルテグラ(R8100)を使ってみて STIレバーとブレーキ編
新型アルテグラのレビュー4回目です。前回に続き『使ってみて分かった』点を中心に紹介します。今回はSTIレバー、ブレーキを紹介します。
前回の記事はこちらから。
■STIレバー(ST-R8170)について
重量について
ST-R8170の公称重量は391g(ペア)です。前作よりも31g重くなっています。主に無線機能の追加、ブラケットの大型化によるものと思われます。実測重量は404g(画像の白いレバーストッパー、無線用のボタン電池込み)。13gも差異がありますので、公称重量には電池の重量は含まれていない可能性があります。
ちなみに電池は約2g。
ブラケットの形状について
新型ではブラケットの長さが約4mm延長されたと言われています。形状自体もリファインされているため単純に長くなったわけではありませんが、確かに3本の指がしっかりかかるために非常に持ちやすくなりました。根元までしっかりとフードカバーで覆われているのもポイント。
逆に手の小さい人には大きくなってしまったので、持ちづらくなるパターンもありそうです。
またいわゆるツノに関しては、格段に握りやすくなりました。電池が入ったことで長くなり、レバー上部もカバーで覆われているのでしっかりと握ることが出来ます。完全にハンドルの第4のポジションと言っても良いと思います。
こちらは前作のST-R8070ですが、レバー上部が露出していたためツノを握るとレバーが動いてしまうんですよね(上の矢印方向に押すと、下の矢印方向にレバーが動く)。ブレーキがかかるわけではないのですが、『ブレーキレバーが逆向きに動く』という現象のため、気になる人は気になっていたポイントでした。
また油圧のオイルラインの向きが少し修正されたように感じます。ホースが水平にハンドルに沿うようになり、根元のふくらみが少なくなりました。以前は若干上を向いたためホースの存在感が結構あり、握る際に邪魔だったのです。ここは個人的にとても嬉しい点です。
ワイヤレス変速について
目玉の1つであるワイヤレス変速ですが、今のところ特段のデメリットは感じません。私のフレームは完全内装に対応していないため、今までステムの下にはオイルホースとDi2ケーブルがありましたが、オイルホースのみになってかなりすっきりしました。またケーブル内蔵式のフレームやハンドルにしても、Di2のケーブルが無くなるだけで内蔵の作業工数は確実に減るはずです。
ちなみに30分操作しないとスリープ状態になります。その場合、走り始めて最初のクリックは『起動』の操作となりますので変速しません。1回目の操作から2~3秒すると信号を受け付けるようになります。
サーボウェーブ機構について
こちらも今回のR9200/R8100からブレーキに関してPRしている機能です。パッドがローターに当たるまでは素早く動き、ローターに接触後はカム比が変化して緩やかになるため、コントローラブルになるという機構です。
まるで新しい機能の様に聞こえますが、MTBでは10年以上前からある機能です。また前作のR9100、R8000でも『機械式変速+油圧ディスク』のSTIには搭載されていました。それが『Di2変速+油圧ディスク』にも横展開されました。
ブレーキに関する機能ですが、カム比が変化する機構はSTIレバーに搭載されています。詳細はブレーキの項目に記載します。
ボタン電池について
ワイヤレス化したことで、STIレバーにもボタン電池を搭載するようになりました。中はどのようになっているのか興味があったので、バッテリーホルダーを開けてみました。まず開けるためにはマイナスドライバーが必要ですが、ネジが小さいため精密ドライバーが必要でした。携帯工具では大きすぎて無理です。
ホルダーを開けると、このようにくりぬかれたスペースにCR1632がきっちり収まっています。
手で電池を抜こうとしましたが、あまりにぴったりと収まっているので抜けません。ビニールテープで絶縁した上で、ペンチで掴んで抜きました。意外と手間がかかるので、出先で行う作業ではありません。
電池のもちに関しては、1年半~2年もつとシマノは言っています。最初に入っている電池はテスト用とのことなので、予防的に交換しておけば出先で電池が切れることは無いと思います。また電池残量はサイコンからも確認することが出来ます。
ちなみにツノ部分には、ボタン電池の他に内蔵バッテリーも搭載されています。
フードボタン(隠しスイッチ)について
いわゆる『隠しスイッチ』、正式名称は『フードボタン』です。ブラケットフードが気持ち薄くなり、押しやすくなりました。デュラエースには、確か9000系Di2から搭載されています。アルテグラは前作のR8000系からですね。
Di2とサイコンについて
今回からDi2のみになってしまいましたので、初めてDi2を使うという人もいると思います。Di2はサイコンに認識させることで、様々な機能が使えるようになります。
ギア位置の表示、バッテリー電池残量、ブラケットの電池残量、フードボタン(隠しスイッチ)操作などが使えるようになります。機能の概要は、こちらの記事からどうぞ。
サテライトシフターについて
今回もサテライトシフターを導入しました。使っている人をあまり見かけないのですが、ヒルクライム時のタイム短縮には有効です。ダラダラ走る時も、上ハンを持ったまま変速出来るようになります。今回から取り付け方法が簡素化され、更に省スペースになりました。
多くの人はワイヤレスのみで使うと思うのですが、参考までに有線ポートがどうなっているかをお見せします。先ほどと同じ画像ですが、、、R9270とR8170はポートが2つあります。下側はサテライトシフター専用のポートになっています。
サテライトシフターのコネクタ先端は、このように突起がついています。そのため切り欠きが入っている下側のポートにのみ接続出来るようになっています。
今回からこれらサテライトスイッチの名称が変わり、『サテライトシフター トップ』『サテライトシフター ドロップ』になっています(相変わらずスプリンタースイッチと呼ばれると思いますが)。
■ブレーキ(BR-8170)について
最後にブレーキキャリパーです。
サーボウェーブ機構について
先ほど紹介したサーボウェーブ機構です。ブレーキレバーを引いていくと、パッドに当たったあたりからの調節幅が広くなりますというメカニズムです。
確かにガツンと効かなくなり、前作よりは微妙なコントロールが可能になりました。MTBコンポに搭載され始めた頃の初期のサーボウェーブ機構は、レバー比が変化するところが分かるという人もいました。ロードの場合は一瞬でパッドに接触するためレバー比が途中で変化することは全く感じ取れません。
クリアランスの拡大について
パッドとローターのクリアランスが10%拡大したそうです。パッドとローターが擦れる時に発生する『シュッ、 シュッ 』という非常に気になる音の発生が低減出来るとして話題でしたが、正直なところ体感は出来ません。
新品のローターと新品のパッドを装着すると、クリアランスが非常に狭くて調整が超シビアなことには変わりありませんでした。元々パッドとローターの隙間は1.0mm未満なのですから、これが10%拡大したと言われても『そうですか…』というのが正直な感想。ハードブレーキングの熱で一時的に歪んだ時には、擦れにくくなっていると思いますが。
またこの変更は、先ほどのサーボウェーブの採用とセットで実現出来たものと思います。レバーを少し引くとすぐにパッドに当たる様になったわけですから、クリアランスを拡大しても問題無いということです。
ブリーディング方法の変更について
今まで『オイルの排出口』と『排出口の開閉』をブリードニップル1つで担っており作業性が悪かったのですが、これが『ブリードボス』と『ブリードねじ』の2つに分かれました。
これが今までのやり方。排出口に開閉のバルブの役割もあるため、レンチでホールドしてからチューブを繋ぐのが面倒だったり、レンチでの開閉の際に油断するとチューブが抜けて大惨事…という事があり得ました。
今回からは画像の様に分離されました。バルブの調節を独立したブリードねじで行うため、作業性が改善しています。
ピストンについて
前作ではセラミックのため乱暴に扱うと割れることがあったピストンですが、今回からレジンになり割れにくくなりました。ブラックになって汚れも目立たない(笑)
パッド軸の仕様変更
地味に嬉しいのが、このパッド軸の仕様変更です。前作ではマイナスドライバーが必要だったところ、3mmの六角レンチで可能になりました。しかし何故かデュラエース(BR-R9270)では安全性重視のためか、マイナスドライバーのまま。
こちらが前作のキャリパー。マイナスドライバーを使用するのはこの箇所だけで、パッド交換のたびに少々面倒でした。
■まとめ
STIレバーはワイヤレス通信機能を内蔵したうえ、形状も大幅に見直されて多くの人には使い易くなったと思います。前作と比較すると30gほど重くなりましたが、この程度ならハンドリングへの影響は感じません。
ブレーキについてはブレーキタッチの微妙なコントロールが可能になったこと、及び整備性の改善がなされている点が地味に嬉しいですね。
ただしワイヤレス化したことで、価格は上昇する一方。STIはアルテグラでも左右で8万円もします。やむを得ないのでしょうが、もう何とかならなかったのか?とは価格を見る度に感じます。
次回は総合的なインプレを書いて、終わりとします。
既にパーツ単品で入手可能なので、お金があったら…ピンポイントでデュラに変えていくかも。