【レビュー】着実に進化を遂げたiGPSPORTのスマートライト『VS800S』
2025/01/15にiGPSPORTから発表されたスマートライト『VS800S』のレビューです。
iGPSPORTは、サイコンの他にライトにも注力しています。2024年2月にリリースされたVS1200を皮切りに、今回で実に5作目。
- VS1200:2024年2月リリース
- VS800: 2024年5月リリース
- VS1800:2024年6月リリース
- VS500: 2024年10月リリース
モデル名の『VS』に続く数値は最大ルーメン数を表しており、本作『VS800S』は最大で800ルーメンを照射するライトとなります。
2024年5月に開催されたサイクルモードのiGPSPORTブースで話を伺ったところ、iGPSPORTでは事業部として『サイコン』『ライト』『ウェアラブル』の3つを組織しているということでした。ライトが事業部として組織されているとのことで、力を入れて開発していることが伺えます。
■総合評価
主な特徴は以下の通りです。着脱式のマウントなど、外観を含めて前作の『VS500』を踏襲しており、VS500のバージョンアップ版といえます。また最大ルーメン数が同じである『VS800』と比較するとランタイムが2倍前後になっており、性能の向上が伺えます。
- 400lmで約7時間、200lmで約10時間という実用的なランタイム
- 着脱式のマウントホルダーを備え、ハンドル上置き/下吊りに対応
- アプリから輝度を設定することで、ランタイムの調節が可能
- リバース充電機能を搭載してモバイルバッテリーとして利用可能
- アプリやサイコンに概ね正確なバッテリー残量を表示
兄弟モデルであるVS1200、VS800、VS1800のレビュー記事はこちらからどうぞ。
■入手経緯
今回はiGPSPORTさんよりVS800Sを提供いただきました。そのため通常は『購入動機』とするところ、今回は『入手経緯』としています。いつもありがとうございます。
■製品概要
スペック
主なスペックは以下の通りです。
- 価格:7,920円(税込)
- 明るさ:最大800lm
- 重量:公称160g、実測167g(本体のみ)
- 本体材質:アルミニウム合金
- 本体サイズ:108×31×29(長さ/幅/高さ)
- 使用温度範囲:-10~50度
- 防水等級:IPX6
- バッテリー容量:4,000mAh
- 公称ランタイム:800lm/5h、400lm/7h、200lm/10h
- 通信規格:Bluetooth
- 充電ポート規格:USB Type-C
- 搭載センサー:加速度センサー
VS500、VS800とのスペック比較
兄弟モデルとなるVS500およびVS800とのスペック比較表です。
VS800S | VS500 | VS800 | |
公称重量 | 不明 | 160g | 155g |
実測重量 | 167g | 162g | 156g |
価格 | 7,920円 | 6,930円 | 7,920円 |
サイズ(mm) | 108×31×29 | 108×31×29 | 108×31×29 |
ランタイム(lm) | 800:5h、400:7h、200:10h | 500:3.5h、250:8h、100:35h | 800:2h、400:4h、150:8h |
バッテリー容量 | 4,000mAh | 4,000mAh | 4,000mAh |
防水等級 | IPX6 | IPX6 | IPX6 |
搭載センサー | 加速度 | 加速度 | 加速度、環境光 |
充電ポート | Type-C | Type-C | Type-C |
通信規格 | Bluetooth | Bluetooth | Bluetooth |
使用温度範囲 | -10~50 | -10~50 | -10~50 |
マウント | Garmin互換、上下反転可能 | Garmin互換、上下反転可能 | 独自マウント |
基本の使用形態 | 上置き/下吊り | 上置き/下吊り | 上置き |
明るさとランタイムを見ると『最大ルーメン数の異なるVS500』、『高効率のLEDを搭載したVS800』のような性能です。
価格についてはVS500と1,000円程度の差、VS800とは同額になっています。特に理由が無ければVS500よりもVS800Sを選択しても問題無いと思います。VS800とどちらを選択するかについては、マウント形状と環境光センサーによる自動点灯機能の有無を基準にすると良いです。
またVS500から採用されたGarmin互換の着脱可能な樹脂製マウントを今回も採用。上下を反転させることで、上置きと下吊りに対応している点が有難いですね。工具が不要な点もポイント。
しかしながらGarmin互換マウントは、着脱にスペースが必要な点がデメリット。またGarminマウントを下吊りで長期間使用すると、他ブランドでは劣化によりマウントの爪が割れてライトが脱落する危険性があることが知られています。
iGPSPORTではその点を踏まえてマウントが強化されて…いれば良いのですが。
またこれまでと同様にアプリから明るさをカスタマイズ可能ですので、好みに合わせてランタイムを調節することが可能です。
パッケージと同梱品
今回は開封動画を撮影しました。製品概要も含めて紹介しています。質感などを確認したい方はぜひご覧ください。
パッケージはこちら。これまでと同様に白基調のシンプルなパッケージです。
パッケージ裏面には、モードごとのルーメン数とランタイムが記載されています。
800ルーメンの場合のランタイムは5hとなっているのですが、アスタリスクが付されています。表の下側には注記があり『バッテリー残量が20%を下回った場合、バッテリーライフの保護機能が自動で有効になる』とあります。
VS800では800ルーメンで2hでしたから2倍以上の効率になっているわけですが、5hという数値はこの保護機能の発動により照度ダウンした状態も含めてのランタイムである可能性があります。
このアスタリスクは800ルーメンと400ルーメンの場合にのみ付されていること、および『custom brightness』と記載されていることから、照度ダウン後の明るさは200ルーメンになるのでは?と私は推測しています。
また本作からランタイムの測定環境(温度:23±2度、湿度30~60%)がパッケージに明記されるようになった点も、評価できるポイントです。前作のVS500ではマニュアルに記載されていたのですよね。
続いて同梱品です。ライト本体の他、USB Type-Cケーブル、マウント&シム、2.5&3&4mmアーレンキー、ネジ2本にマニュアル、そしてGoProアダプターが入っています。
VS500では付属しなかったUSB Type-Cケーブルが、今回は付属しています。またGoProアダプターの他、このアダプター用の2.5mmのアーレンキーと2.5mmのネジが付属しています。このGoProアダプターの使用方法は後ほど紹介します。個人的には、このGoProアダプターの価値が非常に高い。
マウントは見ての通り、Garmin互換マウントです。
外観、実測重量
VS500と並べて撮影しました。上がVS800S、下がVS500です。同一の筐体を使用しています。
裏側です。しっかりとGarmin互換です。
VS500には無かった仕様として、VS800Sには本体裏側に技適番号やバッテリー容量などがプリントされています。
マウントホルダーは着脱可能です。本体上部に電源ボタンが配置されています。
電源ボタンの長押しで電源ON/OFF、クリックでモードの切り替えを行います。また電源ボタンをトリプルクリックするとSOSモードに入ります。
後端部は半透明の樹脂となっています。充電に関する仕様も記載されており、INPUT/OUTPUTとも『5V-2A』となっています。
前面のレンズ部です。縦スリットの新たなレンズ形状となっており、左右への拡散を意図した形状となっています。
実測重量は167g(公称は160g)。VS800は156g、VS1200は160gなので僅かに重い。恐らくマウントホルダーの影響でしょう。
マウントは標準シム込みで33gでした。VS800のキャットアイ風マウントは12gでしたから、如何にゴツいかが分かります。
充電ポート
後端部にある充電ポートはUSB Type-C。フタは1mm程度の薄いゴムでVS800と同じ仕様となっています。VS800はブルべでの雨ライドで酷使されていますが、幾度かの雨でも特に問題は発生していません。
ちなみに防水等級は、これまでのiGPSPORTの他のライトと同様にIPX6。IPX6は『あらゆる方向からの強い憤流水による有害な影響がない』と定義されています(VOLT800NEOはIPX4)。
※数字が大きければ一概に優れているというわけではありません。実際にロードバイクの雨ライドで使用して浸水しないかはまた別の話です。
初回起動保護機能
輸送中に電源が入ってしまう事故を防止するため、開梱して充電するまでは起動しないという保護機能が搭載されています。
本体側面に図解がなされており、STEP1は充電、STEP2で点灯するよ、という流れになっています。本体に通電し、緑ランプが点灯するとアクティベーションが完了するという仕組みです。
アプリからの設定
この製品の最大の特徴が『アプリとの接続が前提である』ことです。アプリとの接続なしでも使えますが、それではこの製品の価値が半減します。
アプリとの接続後は以下のようにアプリ上に製品が表示されます。
接続後は以下のメニューが使用可能になり、本製品の性能をフルに活用することができます。ファームウェアのバージョンは、2025/01/15時点でV1.03です。
バッテリー残量および仮想ランタイムが表示される他、カスタマイズモードの編集、オートスリープのON/OFFなどの設定が可能です。詳しくは後述します。
■レビュー
マウントについて
VS800Sの最大の特徴がこのマウント方式です。マウントホルダーを反転可能な仕様とすることで、上下どちらでも設置可能となっています。
マウントホルダーは硬めのゴムといった素材で十分な固定力があり、走行中にホルダーがずれることはほぼ無いと思われます。Garmin互換なので、Garminマウントであれば何にでも装着可能です。
逆にこのマウントにGarmin Edgeなどを装着することも可能。例の細いゴムバンドで固定するだけのマウントよりもはるかに固定力があるので、これは意外と使い道があると思います。
VS1800も着脱式のマウントを備え上下を変更可能な方式でしたが、VS800Sは工具不要。本体にネジ穴が空くこともなく、防水性と言う視点では優秀な方式です。
また例のゴムバンドで固定する方式と比較すると、高さが出るようになっています。空力は悪く不格好ではありますが、着脱の際に90度ターンしても周囲の機器と干渉しないような配置が可能です。
空力を気にしなければ高さを出せますし、周囲のデバイスにも干渉しませんので、個人的には悪くない方式だと思います。
また冒頭の開封動画でも紹介しましたが、同様のマウントを採用しているVS1200と比べると精度が格段に向上しています。装着すると『カチッ』と音が出るほどで、非常にしっかりと固定されます。
Garminマウントを下向きにして使用することは、マウント側の爪強度に不安があることから個人的にはあまりお勧めしないのですが、これだけの精度で嵌合していると振動の影響を受けづらいと感じます。樹脂は紫外線の影響で劣化しますから、当然ながら5年も10年もマウント側が耐えるとは思いませんが、電池の寿命の範囲(2年程度)では下向きでも十分に実用的なのでは…?と感じてしまいます。
そして良く見ると、このマウントはGopro方式が採用されており汎用性が高い。画像のように互換性のある他のアダプターが装着可能で、接続部の『めねじ』側はマウントに埋め込まれており固定力も高いです。
GoProアダプターについて
先ほど紹介したGoProアダプターですが、アウトフロントマウントの裏側に装着して使用します。
第一作目のライトである『VS1200』も、デフォルトの固定方法はアウトフロントマウントの裏側にアダプターを装着して固定する方式でした。しかし雌ネジの固定方法が洗練されておらず、固定力が弱いという課題がありました。それを改善したのが今回のアダプターです。
まずこちらがiGPSPORTのアウトフロントマウント『M80』です。
裏側は各種アダプターの装着が可能な構造です。
デフォルトで装着されているネジを外して、代わりにアダプターを装着。固定はアーレンキーと一緒に入っていたネジを用いて行います。
装着したところです。上が今回のアダプター、下は私が使っているVS1200用のアダプターです(マウントはキャットアイのGPマウントに交換しています)。今回の新型は、雌ネジ側はアダプターに埋め込まれていて固定力が増しています。
固定用のネジもM5の太いタイプに変わっています。
このようにVS800SとVS500を両方マウントすることも可能です。
このアダプターは非常に良く出来ているので、これを目当てにVS800Sを購入するというのもアリだと思います。
アプリとの連携、カスタマイズについて
アプリと接続するとバッテリー残量および仮想ランタイムが表示されます。2024年12月あたりにアプリがアップデートされ、中央のスライダーとアイコンで輝度やモードを調節する方式に変わりました。
これまでのテスト結果から、実際のランタイムは仮想ランタイムより1割ほど短くなります。恐らくですが、発熱等による電力ロスを考慮していないためか?と思っていたのですが…baruさんの検証によると、最後の1時間になると突如光量がアップするためランタイムが短くなっているとのこと。確かに、最後の1時間はバッテリーの減りが倍の早さになるのですよね。
VS1200とVS800で存在していた『待機モード(スタンバイモード)』はメニューとしては無くなりましたが、必要であればカスタマイズモードで『待機モード(=輝度を0%にする)』を作れるようになっています。
また、そこそこの明るさを確保しつつ、状況(距離)に応じてなるべく長時間使いたいというのがブルべにおけるニーズ。
『600kmなら(深夜は仮眠するため)12時間点灯すれば良いので15%にしよう』など、表示されるランタイムを見ながら少しでも明るさを上げて安全性を向上させることが可能になります。
『インテリジェントな関数構成』(関数=functionの誤訳と思われます)は各種オート機能の設定です。
VS1200/VS800も自動機能を搭載していましたが、VS800Sでは新機能が追加されています。主な項目の概要は以下の通り。
- 速度による明るさ:サイコンとペアリングしている場合、サイコンから速度情報を取得して速度に応じた明るさに自動調節します(3段階程度)。速度向上と共に明るくなります。
- オートスリープ:設定した時間でスリープモードになります。
- 静止した低輝度:静止状態を検知すると、設定した時間が経過後に輝度が下がります。
ランタイムについて
ランタイムについては、デフォルトの各モードにおける公称値では以下の通りとなっています。
※200lmの場合のみ『約』が付いている理由は不明
- 800lm/5h、400lm/7h、200lm/約10h
また比較として、メジャーどころの製品におけるカタログスペックは以下の通り。
- VOLT800NEO(キャットアイ):200lm/12h(4,800mAh)
- RN1500(OLIGHT):300lm/12.5h(5,000mAh)
※RN1500が非常に優れているように見えますが、実際は300lmを維持するのは最初の30分程度であり、以降は200lm弱になることが知られています。
VS800Sは、VOLT800NEOよりも少し小さい4,000mAhのバッテリーを採用。ランタイムを8割にしたVOLT800NEOのような性能ですね。
個人的にはライトを最大輝度で使う場面というのは経験が無く、そこそこの明るさ(200lmとか)で長時間稼働してくれるスペックが一番有難い。輝度を調節可能な点も含めて、この性能がこの価格というのは非常に有難いですね。
参考として、デフォルトで用意されているモードおよびカスタマイズモードで明るさを調節した場合に表示される仮想ランタイムは以下の通り。
- 高輝度常時点灯(800lm):4h50m
- 中程度の明るさで常にオン(400lm):6h50m
- 25%(推定200lm):7h50m
- 20%(推定160lm):9h45m
公称値では200lm時に約10hですが、アプリで25%に調節した場合に表示されるランタイムは7h50m。10hに近いランタイムとなるのは、20%に調節した場合です。
一方、パッケージを見ると200lmという数値の横に『default』という文字があります。最初にカスタマイズモードを使用すると、デフォルトでセットされている値は20%。そのためiGPSPORTは20%の場合に200lmであると言っていることになります。
しかしこれでは、%の表記の基準が分からなくなります。『100%=800lm』と考えるのが自然ですが、その場合は『20%=160lm』のはずです。VS500の時も同様でしたが表記の整合性が取れていない点があり、どこかの表記が誤っているか、%表記と明るさが連動していないか、どちらかの可能性があると思われます。
最後に仮想ランタイムの検証のため、カスタムモードで輝度25%(推定200lm)に設定し、バッテリー残量100%から消灯するまでの時間および残量の変化を記録しました。前述の通り、25%の場合で表示される仮想ランタイムは7h50mです。各種自動機能は全てOFF、テストは2回実施して同様の結果だったため2回目の測定値を採用しています。
テスト結果はちょうど7hで消灯しました。これまでのiGPSPORTのライトと同様に、実際のランタイムは1割ほど短くなりました。残り4.5hまではバッテリー残量が30分あたり5~7%づつ減少していますが、それ以降は30分あたり8~9%の減少となっています。
残量が40%を切ると輝度がアップする…かどうかは測定してみないと分からないので、機器を買って確認するしかないかなと思っています。
配光について
配光はVS500と同様に、縦にスリットが切られたレンズとなっています。これを壁に向かって水平照射すると、このように半円形の照射範囲となります。上方向への配光がカットされていますね。
実際に屋外で地面に向けて照射するともう少し拡散してこのような形状になります。上方向をカットしつつ、足元は意外と広く照射されています。
サイコンとの連携について
iGPSPORTのサイコンとペアリングさせると、バッテリー残量とランタイム情報をサイコンに表示することが可能になります。手元にあるサイコンで試したところ、iGS800/iGS630S/iGS630/BSC300Tはペアリングができました。
■まとめ
iGPSPORTの5作目のライトです。
豊富な自動機能を搭載しており、アプリを使って任意の明るさ、任意のランタイムに調節が可能です。160lm(推定)で10時間持続する性能を有しており、ブルべにおいても十二分に実用的です。
アプリで簡単に設定変更が可能な点もポイント。私はV1200とVS800を使っていますが、信号待ちの最中にささっと設定を変更出来るのは大変便利。
また着脱可能なゴムバンド式のマウントホルダーを採用し、ハンドル上置き/下吊りのどちらにも対応してきました。マウントがGarmin互換な点が唯一のウィークポイントですが、マウントの高さが出るように取付けすることで、周辺の機器との干渉は一応解消可能です。
これだけのスペックを備えていながら、価格は7,920円。VS800から据え置きです。ハンドル上の取付スペースさえ確保できればブルべでも十分に使えるスペックで、驚異的なコストパフォーマンスと言えます。バックアップを含めて2つ買っても16,000円程度ですからね。
これだけのスペックを有していながら1万円を切る価格であり、ブルべでも十分に一晩を凌げるスペックを有しています。1つ目のiGPSPORT製品としてもお勧めです。