反射ベストの規格について知ってますか?より安全にブルベを楽しむために(EN ISO20471・EN1150)
先日、久しぶりに埼玉ベスト以外の反射ベストを購入しました。
反射ベストについて色々調べてみましたので、内容を共有したいと思います。
■反射ベストの規格について
現状
今年(2019年)はPBPイヤーなので、特に話題になっていますが…反射ベストは実は規格化されています。反射ベストというか、正確には『高視認性衣類(High Visibility Clothing)』という呼称がありまして、反射ベストは『高視認性衣類の中で、形状がベストになっている(袖なし・no sleeve)』だけのものです。
正直なところ日本では、まだこの High Visibility Clothing そのもの関する意識が低いと思います(私もブルベを始めてから意識しだしたことなので、人の事は言えません)。日本でもISO20471を受けてJIS化はされている(それも2015年という最近の話)ものの、一般に広く認知されているかというとそうではありません。
またフランスの道路交通法では、夜間に路上で活動する場合は反射ベスト類の着用が義務付けられていますし、車にも搭載が義務付けられています。安全意識の高いヨーロッパでは、昼間に路上で活動する職種の人は危険回避のために高視認性の衣類を着用するというのが一般化しているのですが、その『高視認性の衣類(High Visibility Clothing)』についても規格化する必要があるよね、ということで制定されているのです。
規格について
その規格は大きく3つあります。
- EN1150(一般人向け:non professional)
- EN471(仕事用:for professional。2013年からISO20471がリリースされたので、実質的に役目を終える)
- EN ISO20471(用途の区別は無いが実質プロ用)
PBPに参加する場合は当然ながらフランスの法令を遵守する必要があるのでこれらの事は知っておいた方が良い訳ですが、PBP参加者向けには更に詳しい情報をまとめている方がいます。私はPBPに参加する予定はありませんし、同様に参加予定の無い方も大勢いる(と言うかPBPに参加する方が少数派ですよね)と思います。またこれらの規格をクリアした製品をさがすと『自転車向きだな』という製品はほとんどありません。そのためここではあまり細かい話はしませんが、押さえておくべきポイントを大まかに紹介します。
反射素材と蛍光素材の面積
何度もお話ししていますが、昼は蛍光色が、夜間は反射素材が視認性を高めます。そのため蛍光色素材と反射素材の最低限の面積がそれぞれ規定されています。中には『全面反射素材』というベスト・ジャケットもありますが、そういった製品は夜間こそ高性能ですが昼間の視認性・安全性は捨てているということになります。ランドヌール札幌では、ローカルルールとして『蛍光色の伴わない反射ベストは不可』と明記されています。こういうものですね。
面積でいうと、EN1150では蛍光色:0.15㎡以上、反射素材:0.1㎡以上と規定されています(身長が低いとこれより少なくても可)。EN ISO20471はクラス1~3まで3段階あり、中間のクラス2では蛍光色:0.5㎡以上、反射素材:0.13㎡以上と規定されています。これは身長に関係なく面積が規定されている(しかもヨーロッパ人基準)ので、例えば身長150cmの人がこれらの衣服を着ると、反射ベストが歩いている様な感じになってしまうと思います。この蛍光色の面積をクリアしようとすると、前回紹介した埼玉ベストタイプでは難しく、必然的に生地の面積が大きいジレのようなものになります。
ブルべでスタッフをしていると感じますが、やはり埼玉ベストは視認性という観点からは低いと言わざるを得ません。開発された当時は反射ベスト自体が無かったですから最先端でしたが、残念ながら視認性という点では面積の小ささから劣っています。私も埼玉ベストで育ちましたから悪く言うつもりは無いですが、単純に布の面積は小さいです。バックポケットへのアクセスとか、ストレスの少なさとか、そういった面で優れているんですね。
埼玉ベストよりも更に布の面積が小さい反射ベスト(とはもはや呼べない)ようなグッズを着用している人もいます。各ブルべのクラブにて規定が無い以上、何を着用しても自由ですけれども、安全性の観点からは一考していただきたいと感じています。
蛍光色の色
また蛍光色の色にも規格がありまして、EN ISO20471だとイエロー・オレンジ・レッドのみが認められています。これは色に意味があるためで、ピンクやグリーンだと注意喚起の意味で無くなるからです。ちなみにグリーンには安全という意味になるので、ランドネきたかんのグリーン反射ベストはNGということになります。ただしEN1150は一般人が使う日常使用を想定しているので、グリーンもOK。全部で8色が認められています。
反射素材について
反射素材の配置についても細かい規定があります。
・幅は50mm以上(EN1150は25mm以上で可)
・ロゴマークなど小さいものは面積に含めることが出来ない
・胴回りに2本の水平の反射素材を配置する
・または胴回り1本(2本でも可)+両肩までの縦方向の反射素材
・反射素材帯のペアは、50mm以上離す
などなど。文章だと分かりづらいのですが、『EN ISO20471』で画像検索するとこんな結果になります。採用されているのは横2本と縦2本が一般的で、どれも似たような見た目になるということが分かります。
Amazonで売っているものだと、例えばこれ『salzmann』の蛍光イエローと蛍光オレンジがEN ISO20471の認証を受けています。(蛍光イエロー/オレンジにメッシュタイプがありますが、それはNG)。実際に購入してみましたが、タグに『EN ISO20471』の表記があります。これで1,500円ならお安いですね。
※Yahooショッピングには、扱いがあったりなかったりします。また扱いがあっても高い事が多いです。今のところAmazonから買うのがおススメです。
現物はこんな感じです。これは確かに目立ちます、確実に安全性の向上に寄与していると思います。Amazonにはたくさんの種類がありますが、メッシュは蛍光色の面積が減るので20471の規格を取得出来ません。これを着ている方をしばしば見かけますが、実際に見る限りではメッシュでも視認性に対してそれ程の差は無いと思います。またスタッフしてると分かりますがコレ結構人気です。着ている人多いです。ポケットが活用出来るみたいですね、皆さん補給食を入れてます。
その他の要件
その他の基準については、素材の耐久性やラベルの表示方法について定められています。耐久性は蛍光色部分の強度や洗濯耐性について、反射素材部分も摩耗や洗濯への耐久性、低温時の折り曲げ耐性など様々な項目があります。
今まで『反射ベスト』が商品名に入っているとか、それっぽい物から自由に選んできた立場からすると面倒ですよね。ただこれらの基準に準拠する製品を選ぶ、もしくはいくつかの項目だけでも準拠する製品を選べば、確実に安全性も高まるであろうという事は理解いただけたかと思います。
某R社のジレなどは反射帯の面積も少なく、本体生地も蛍光色でもないため、規格対応製品と比較するとファッションアイテムとしての性格が強いと言わざるを得ないと思います(そういうものなので、それはそれで良いのですが)。
こういった高視認性衣料に関する規格がある、それに準拠したベストを購入する選択肢もある、全く準拠しない製品をデザイン性優先で購入する選択肢もある…日本では着用を義務付ける法律が無いため全くの自由です。ですが少なくとも、これらの情報を知識としてインプットした上で選択した方が、納得感が大きいのではないでしょうか。
ブルベを始めたばかりの方でも、ベテランでも、より安全に路上を走ってもらいたい。怖い思いをする事なく楽しんで欲しいじゃないですか。私も夜間走行時は未だに怖い思いをする事があります。でもそれは、こういった製品を選ぶことで怖さを減らす事も出来ると思っています。蛍光色や反射素材の少ないベストを着用していつも冷や冷やするのであれば、各自の判断で必要な製品を選んでよりブルベやロングライドを楽しんで欲しいと願っています。
ちなみにこの辺のベストなんかも見た目には問題が無いように思えるのですが、特に準拠している等の記載がありません。反射材の性能が不足しているのでしょうかね?まぁ、実際に認証を取るとなると費用もかかりますので、わざわざ認証までは取っていない可能性も十分あります。いずれも反射ベストは1,000円程度の製品が多いので、気軽に試せるのが良いですね。
この製品も反射材の面積だけは規格に準じていそうですが、蛍光色部分の面積が明らかに不足しています。着ている人は割と見かけますし、夜間は良いのですが、完全に昼間の視認性を犠牲にしています。そのうちに淘汰されてしまうのか。
EN ISO20471の対応商品で安いのは、今のところは先程紹介したこの辺りになりそうです。
単純に人気度で言うと、この辺りの軽量なものも使用率が高いですね。反射材、蛍光色とも面積が全く足りませんが、使い勝手という意味では良く出来ています。