【2023PBP走行記 その11】PC７：CARHAIX～PC８：LOUDEAC（782km）まで

PBPの走行記録その11です。今回はカレを出発し、補給ポイントのグアレックを経由して782km地点のPC８、ルデアックまで。ようやくドロップバッグのある拠点に戻ってきました。前回（その10）はこちらから。

■補給ポイント：GOUAREC（732km）まで

まずはたったの35km先である732km地点のグアレックを目指すこととします。前回も書きましたが、グアレックの計画上の到着時刻は18:50。カレの出発時刻が既に18:30。大丈夫なのだろうか…。クローズタイム（仮想）は22:47なので問題はありませんが、計画からの遅れが生じると仮眠時間が減って辛い。

ちなみにカレ～ルデアック間のコースプロファイルは以下の通り。前区間のブレスト～カレと距離はさほど変わりがありませんが、獲得標高は300m近くも減っておりかなり走りやすくなっています。

クリートからの異音

さてたったの35kmですから特に書くことも無いかと思っていたら、意外と写真を残していました。

まずはSPEEDPLAYの異常。カレ到着の前から、どうもSPEEDPLAYのクリートが嵌まらない。そしてダンシングすると異音がします。私は知っています、この症状はクリートのＣリングバネが割れる前兆であることを…。

Ｃリングバネが割れる要因は、主に雨。雨でオイルが流れてしまうと摺動摩擦が大きくなり、最後は金属製のＣリングバネが割れます。しかし３月に走った『400km全て雨』のアタック老越路でＣリングを割っており、その際に交換しています。わずか半年でそこまで劣化するとは考えにくい。

もちろんPBPではこれまで雨は一切降っていません。また信号もほとんど無いので、脱着による劣化も考えられません。異音は両足から聞こえてきますので、PBPを走り始めてから両足とも急速に摩擦が増大する事象が発生していることになります。

走行中は劣化しようがないので、消去法的にPCでの行動が原因ということになります。PCでの行動を思い返してみると…砂地や芝生などを何度も歩いている（特にタンテニアックなど）ことに気づきます。間違いなくPCでダートを歩かされていることが原因ですね。

割れた場合の予備として、Cリングを１つツールボトルに入れていますが、このままでは両足とも割れてしまうでしょう。そうなると詰み…とまではいきませんが、残り400km以上ありますから膝がおかしくなる可能性があるなど、色々とリスクがあります。

とにかくクリートが汚れているであろうことは間違いない。どこかで停車して、携行しているアルコールシートで清掃する必要があります。

グロメルのレストランへ

どこでクリートの清掃をしようか考えていると、カレを出てから15km（712km地点）のGlomelという街に入ります。その街ではPBPのロゴを使用した『Restaurant 500m』という看板が設置されていました。

私設エイドの予告なわけですが、これまでの道中でPBPのロゴまで使用した看板は無かった気がします。時間にも余裕があるし、非常に気になったのでクリートの掃除を兼ねて立ち寄ってみることに。

到着するとそこは『PIZZERIA TAN DEZHI』という大きなレストラン。こんなに明るいのですが、時刻は19:30です。ほんと、時間間隔が狂いますわ…。『こんなに明るいから、まだ17時くらいだよね』と思っていると20時を回っているとか。焦ります。

看板を出してアピールしているだけあり、店の大きな裏庭（street view を見ると普段は駐車場の様子）にテーブルと椅子を増設していてかなりのキャパシティがあります。この記事を書く際に調べたところ、FBに以下のポストがあったことを見つけました。

『2023年８月22日（火）はPBPのために10:30～23:00まで以下のメニューを継続的に提供します』とあります。

以下のメニューとは、スパゲッティ（カルボナーラ or ボッロネーゼ）、デザート or 飲み物 or コーヒー。このお店のFBポストを事前に見つけられている人はどれだけいるのか…？前回以前も参加して、このお店の存在を知っている人しか情報を得られないような。2027年に参加する際は、このお店のFBをチェックしておきましょう。

とにかくお店の前まで来ると非常に賑わっており、私もトイレ＆クリート清掃＆補給のため立ち寄ります。中に入ると街の規模に比べて立派なレストランです。前述の裏庭でも多数のランドヌールが食事をしています。

私が入店した時にはイタリア人が指でジェスチャーして『俺はこの形のパスタが食べたいのだ！それはあるか？』とマダムと交渉していました。PBPの道中でカルボナーラが食べられるだけでも有難いと思うのですが、パスタの形状も交渉するとは…。ジェスチャーからするとショートパスタが食べたかった様子です。何でもいいから早くオーダーして(笑)

察するにこれまでのPCでの茹ですぎパスタはイタリア人には耐え難いものだったのでしょう（そこは分かる）。交渉の末にどこかで妥協点を見出したようで、oui、と応答して逞しいマドモアゼルが鍋を振り始めました。

私は綺麗なトレイを借りて満足。出るとランドヌーズが２人ほど私が出てくるのを待っていたので、やはり綺麗なトイレは需要があるのですね。お待たせして申し訳ない。

パスタと飲み物（もしくはデザート）のセットで15ユーロは安いと思うのですが、特にお腹も減っていないのでパスタセットはパス。

クリートの清掃

私は特大サイズのコーラを買って、飲みながら外のベンチでクリートを分解すると両足ともこの通り。これは末期症状ですね。放置していたらヤバかった。

アルコールシートで拭いて綺麗にしました。掃除した後は異音も消えて、あれだけ嵌らなかったクリートキャッチもスムーズです。さてグアレックまで頑張りましょう。

グアレックに到着

あっさり到着するはずだったのですが、ようやく732km地点のグアレックに到着です。クリート破損リスクを回避したので仕方ない。時刻は20:30。カレから35kmを２時間で到着していますので、クリートの清掃やらで30分もグロメルに滞在していたことを考えると上出来です。ただし計画比では1:40遅れています。

ここは補給ポイントのためスルーしても全く問題ないのですが、どんな施設なのか確認したいので無駄を承知で立ち寄ることにします。

往路のサンニコラと同様にコンパクトな施設です。自分のメモでは仮眠所もあると記載していますが、ぱっと見たところ無さそうです。トイレは綺麗そうでしたが、その代わりに長蛇の列。私は列の長さを見て諦めたので便座の有無は確認していませんが、並んでいるということは『便座もあって綺麗そうだ』という期待なんだと思います。その様などうでも良いことまで推察出来るようになってきました。

※追記：baruさんによると以下の場所に仮眠所があったとのこと。

そして計画上のルデアック到着時刻は21:50。そのルデアックは51km先でして、現在時刻は20:30。明らかに遅れているので、施設には入りましたが食事はせずにスルーして先に進もうとしました。

しかし小さな施設ゆえ…レストランで食事をしている人の皿が否応なしに目に入ります。それは明らかに出来立ての料理でして、どう見ても『間違いない』というやつ。

カレからここまで35kmですから腹は減っていないのですが、直感が働いて『これ程美味そうなら満腹でも食べられる』と判断してレストランを利用することに。

そしてこちらが出てきた料理。写真だと地味ですね、PBP中に寄せて撮影するような余裕はありません(笑)

絶妙な加減でボイルされたチキンのもも肉 with トマトソースとライス。タイミングが良かったのか分かりませんが、作り置きでは無く出来立てです。サンニコラの仮眠所と同様に、参加者の半数も立ち寄らない施設なので出来る対応ですな。

ナイフを入れると湯気と共にほのかにピンク色のチキンが見えて、これは間違いないやつ。PCでこのクオリティの肉料理が食べられるとは…直感は間違っていなかった。PBPの道中で一番美味しかった。ワインを合わせられなかったことが唯一の心残り。

お腹は減っていなかったのですが、無事にチキン＆ライスは完食。一方、プレートの上にあるサラダは全く手を付けられず。理由はお腹が減っていなかったからです。

腹が減っていなくても食べられるとは恐るべし、このチキンは本当に美味しかった。補給ポイントはこのようなマニアックな楽しみがあります。

このレストランでは再びけいたさんと一緒になりました。カレでは辛そうでしたが、ひざの調子はどうにかなっている様子で良かったです。またブレストでも一緒になった日本のランドヌーズの方とも食事を共にしたのですが、お名前が分からず（この方とは事前受付（8/19）の電車の中でも会っていた）。ここまで来たら残りは400km、お互い頑張りましょう。

■PC８：LOUDEAC（782km）まで

次は51km先の782km地点、PC８のルデアックに向かいます。予定外の食事をしてしまったので、出発は21:10。しかし『食べられる』ということは何よりも重要なので仕方がありませんし、『美味しく食べられる』ということは体が要求する栄養素を補給出来ているということでもあります。

1,200kmを走るには（普通の人は）４日かかりますので、食事と睡眠のサイクルや量を日常に近づけていくことが重要だと思っています。

その辺も結局はクローズタイムとの相談となるわけですが、クローズタイムにはどうにか間に合っている状況なので、カロリー補給を優先する状況でした。ここにライフハック的なものは無いと思いますので、残り時間と相談しながら、自分なりの睡眠と食事のサイクルを維持していくほかありません。

ルデアックに到着

ということで残り51km、日没後であまり記憶は無いのですが無事に400kmぶりにルデアックに帰還しました。782km地点、時刻は23:57と日付が変わる直前。ちょっとした達成感がありますが、気を抜くにはまだかなり早い。

シャワー、仮眠、食事

どうにか日付が変わる３分前に到着しましたが、計画比で２時間の遅れ。しかしクローズタイム比では３時間の貯金です。ここでは仮眠をする計画なので、シャワーを浴びてから寝ます。

時間の無い状況ですが、ここで往路のルデアックで必要も無いのにシャワーを浴びた経験が生きます。素早い動きでシャワーを浴びますが、往路ではふんだんに使えたボディソープが残念ながら空になっています。サンニコラで活躍したパウダーソープは、油断してサドルバッグの中…。ちゃんと補充しといて…。

諦めてお湯でさっぱりするだけで済ませます。周りの海外勢も空のボトルを見て『oh…』という表情。

ぶっちゃけフランスのボディソープの洗浄力は低く大量に使わないと泡立たないし、そもそもランドヌール（ズ）は汚いのでその点からも大量のボディソープが必要なのです。次回からは枯渇しない量のボディソープを配置して欲しいところ。

シャワーの後は目の前の建物にある仮眠所に向かうのが効率的に宜しいのですが、その前に（レーサーシューズのまま）走ってドロップバッグへ向かう。気持ち良く寝るために新しいウェア（カステリの裏起毛半袖ジャージ）に着替え、更に気温５度に備えて用意してあったカステリのperfetto ros convertibleを取り出す。

訓練された動きで素早く仮眠所へ。受付スタッフは５人ほどで並列処理していたので、処理の早そうな列を見極めて並ぶ。しかしどこに並んでも大して変わらなかった。５分ほどで自分の順番が来たので２時間後の時間を伝えてコットに案内され、仮眠。

カステリのジャケットを着て、ぬくぬくした状態でおやすみなさい。カステリのジャケットはここでしか使わなかったのですが、おかげで快眠できた気がします。

そして瞬間的に寝落ちして気付くと２時間が経過していたらしい。例のマダムには遭遇しなかった気がするのですが、仕方なく起床してカロリー補給のためにレストランへ向かう。

夜中の２時ですから、レストランは死屍累々（昼間のレストランでも死屍累々ですが）。食事をしている人数よりも寝ている人数の方が多いのでは？食べられる場所を探すのが大変。

こちらの方のアームウォーマーはカステリです。カステリのアームウォーマーは良いですよ。やはりヨーロッパはカステリ率が高い。

そして毎回思いますが、例え30分であっても仮眠所で寝た方が効率が良いと思うのですが…。本当にギリギリ隊で１分たりとも寝ている余裕など無いが、さりとて寝ないとどうにもならないので、２～３分のつもりで10分寝ているという流れなのでしょう。私もその気持ちは分かるので、無事に完走できることを願うばかり。

ともかく、食事を済ませるとリスタートです。

スタートから実に800kmぶりに新しいジャージとアンダーウェア、ビブショーツ、ソックス、グローブに交換して、食事の間に新しいモバイルバッテリーでライトに充電。ストレッチをしてサプリメントを飲んで、プロテクトJ1を塗り直して歯磨きをしてリスタート。完璧だ。

気温は夜間でも15度以下に下がらないので、ウェアは半袖ジャージ（裏起毛ですが）とレーパンのままです。用意していた冬装備は使わず、ドロップバックに入れたまま。こういうこともあるでしょう。最後に、みいさんとりゅうさんから貰った補給食と梅干しシートをサドルバッグに突っ込みます。

わずかな２時間の睡眠でしたが、すっきりして次のポイントであるケディヤックに向かいます。

その12に続きます。

＠morou2

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管理人は40代のロードバイク乗り。20年前にCannondaleのCAAD3を買って以来、Cannoncdaleばかり乗り継いでいます。 昔はメッセンジャーやレース、今はロングライドとブルベ中心。ブルべの主担当もやります。
年間走行距離は約10,000km。身長170cm、体重57kg。