【パワーメーターその4】自転車でのパワーウェイトレシオ(PWR)について
さて皆様いかがお過ごしでしょうか。
前回は『FTPとLT値について』でした。パワーメーター編の4回目となる今回は『パワーウェイトレシオ(PWR)』についてです。
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■パワーウェイトレシオとは?
さて、FTPを測ってみたりしてパワーを意識して走るようになると、今度は他の人と比較をしたくなってきます。能力が数値によって可視化されるので、トレーニングの指標となるだけでなく、他の人との比較も簡単に出来るわけです。
そこで出てくるのが、パワーウェイトレシオ(PWR)と呼ばれるもの。これは出力を体重で割ったもので、能力を推し量ったり比較したりするのに有用な数値です。例えば自動車の世界では非常に一般的な用語ですが、パワーメーターが普及したことで、自転車界でも一般的に使われるようになってきました。
■パワーウェイトレシオを算出してどうするのか?
例えば、私のFTPはだいたい210wくらいです(最近練習していないので低下気味…)。一方、私の周囲にはFTPが200w後半とか300wとかという人が沢山います。単純にパワーを比較すると1.4倍くらいの開きがあり、これだけの開きがあると私が圧倒的に遅いように見えると思います。実際、ゴール前のスプリント勝負では10回やって10回負けるでしょう。
ところが登りになると、逆に私の方が速く登れます。あくまでブルベのペースで走っていての話ですが、登りで抜かされた経験は、あまりありません。
これは要するに、特に登りの速さにおいてはライダーの体重が大きく関係してくるということを示しています。登りに関しては、やせ型のヒルクライマー体型の人に身体的なアドバンテージがあるというのは皆さん経験で知っていると思います(逆に、平地は体の大きい人が有利)。そのため、登りではパワーの絶対値よりも、体重を加味したパワーウェイトレシオが速さを判断する際の指標として用いられています。
ちなみに私の場合、体重が57kgなので、210w÷57kg=約3.68w/kg という事になります。
そこに例えば、体重75kgで260w出せる人がいたとします。その人のパワーウェイトレシオは約3.47w/kgですね。ということは、ヒルクライムのレースがあった場合は210wしか出せない私の方が速く登ることが出来る(であろう)…ということになります。
またパワーウェイトレシオは出力を体重で割った値ですから、この数値を上げるためには出力を増加するだけではなくて、体重を落としても向上することになります。
このように、出力増と体重減の両方の観点を持つことで、より効率よくトレーニングが出来るというわけです。
■パワーウェイトレシオは万能ではない
ヒルクライムが好きな人にとっては絶対唯一の指標のように使われているパワーウェイトレシオ。これが高いに越したことはないですが、やはり全体的なトレーニングとしては、パワーの絶対値が向上するようにトレーニングすべきです。
なぜなら自転車においてはパワーウェイトレシオが同じであれば、体重が重くても、パワーの絶対値が高い人の方がメリットが多いからです。正直なところ、体重が軽くて有利なのは登りくらい。逆に登り以外の全ての場面でデメリットが色々あります。
・下りで遅い(空気抵抗に負ける、慣性力が小さい)
・向かい風の影響をより多く受ける
・荷物や自転車の重量増の影響をより多く受ける
というところでしょうか。
例えば、
Aさん FTP210w、体重60kg ⇒PWR 3.5w/kg
Bさん FTP280w、体重80kg ⇒PWR 3.5w/kg
という2人がいたとします。
ヒルクライムの時に、重力に逆らって運ばなければならない荷物(荷重)は、実際には自分の体の他にも自転車と積載している荷物がありますよね。仮に自転車がお互い8kg、ブルベを走っているとしてライトやら食料、ボトルの水や輪行袋などの荷物が全部で4kgあるとします。合計12kgですね。
これを加味してPWRを算出すると…
Aさん 210÷72=約2.92w/kg
Bさん 280÷92=約3.04w/kg
というように、荷物や自転車の重量の影響は、パワーの絶対値が高い人の方がその影響が薄くなるわけです。体が大きくて体重が重い人の方が一般的には単純に力持ちなんですから、当然の話です。
このため、体重の軽い人の方がより金をかけて自転車を軽量化する必要があるということになります(笑)
私の場合は、軽量化の必要があると言いつつも、ホイールはワイドリムですしコンポも6770系電動アルテグラで重いです。全然軽量化していません。これは登りはある程度登れるので、それよりも平地を楽して走った方が脚が残って、ブルベではトータルで早くなる(速くではなく)と考えているからです。
ということで、PWRに固執するあまりダイエットしすぎるのも良くありません。トレーニングの結果、体重が1kg増えたとしてもそれが筋肉であればそれ以上にPWRは改善しているはずです。
自転車に使える筋肉だけを純粋に1kg増やすなんてのはそりゃもう大変なことですけれども、そのあたりのバランスを取って体作りとトレーニングをしていきたいものです。
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