【ENVE】ディスク用ホイールのまとめ。2022年度版
2022年時点でのディスクブレーキ用ロードホイールをまとめています。今回はENVEです。2022年5月に新しいSESシリーズが発表されましたので、その内容を反映しています。
■ENVEを簡単に紹介
性能もさることながら、価格が高い事でも有名なENVE。ホイールだけでなく、カーボンのハンドルやステム、シートポストなども作っています。アメリカのユタ州に拠点を持ち、Made in Americaを強力にPRしています。日本での代理店は2019年からダイアテックに変わりました(その前はアメアスポーツ)。
ロード用のディスクブレーキホイールでは、2022年現在で『SES』と『FOUNDATION COLLECTION』という2つのラインがあります。
SESは『Smart ENVE System』の略で、フレームに装着した状態を考慮して前後ホイールを統合的に開発したものです。そのため前後でリムの形状が異なっており、風を最初に受けるフロントはハイトは低め、リアはハイトが高くなっています。以前は前後でリム幅も異なっていました。またMTBでは今や普通となった『フックレスリム』も早くからロード向けに展開しており、2022年5月のリニューアルでSESシリーズもほぼフックレス化されました。
カーボンリムも自社で製造しているため技術力が高いとも謳っており、カーボンのレイアップを1枚単位で調整したりとか、スポークホールを最初から穴の空いた状態で成型するなどしています。プリプレグの状態から自社で作っていることになりますね。
※プリプレグ:樹脂を含侵させたカーボンのシート
FOUNDATION COLLECTIONはSESしか無かったENVEが初めて出したセカンドラインで、フックレスリムなどの技術はそのままで前後のリムは同じものを使うなどしてコストを抑えたラインです。20万円代の市場を狙った製品ですね。
ENVEは価格が1パターンしか無いというのも特徴で、SESシリーズの価格はどれを買っても393,800円。FOUNDATIONは272,800円です(価格はいずれも税込)。税込みで40万近くしたENVEが、FOUNDATIONなら7割弱の27万円で買えてしまいます。
※FOUNDATIONシリーズは、2020年12月に217,800円に値上げされました。
⇒2022年4月に更に値上がりして272,800円になりました。
■SESシリーズ
それではまずはSESから並べてみます。SES7.8以外は全てフックレス化されたことで、フックレスモデルを表していたARシリーズの名称は無くなりました。フックレスについては、次のFOUNDATIONモデルのところで少し詳しく書いていますので参考にしてください。
リニューアルされなかったSES7.8以外はフックレスになったため、チューブレスで使うしかありません。今のところENVEとZIPPがフックレス化を推進していることがはっきりしました。新しくなったSESシリーズは、全部で5モデルとなります。
※リム高はフロント/リアの順です。
※重量は、フリーボディがXDRの場合のものです。シマノフリーの場合の重量は公表されておりませんが、20g程度重くなると思われます。
リム高 | 内寸 | 外寸 | 重量 | 価格(税込) | |
---|---|---|---|---|---|
SES 2.3 | 28/32 | 21 | 25 | 1,197 | $2,850 |
SES 3.4 | 39/43 | 25 | 32 | 1,390 | $2,850 |
SES 4.5 | 50/56 | 25 | 32 | 1,452 | $2,850 |
SES 6.7 | 60/67 | 23 | 30 | 1,497 | $2,850 |
SES 7.8 | 71/78 | 19 | 29/27.5 | 1,651 | ¥393,800 |
モデル名について
モデル名の数字ですが、数字が大きいほど平坦コースの走行を想定しており、空力が重視されリムハイトが高くなります。
重量について
ENVEのホイールはハブが選択できることも特徴でしたが、リニューアルされてからはオリジナルのENVEハブのみとなりました。ハブによって重量も変化するのでスペック一覧表を作るのが手間でしたが、1種類になったので楽になりました(7.8を除く)。
リニューアル後は主力のSESシリーズもほぼフックレスに。ENVEのサイトを見ているとグラベルを走っている画像が多く出てきますから、必然的にワイドリム、チューブレス、フックレスという構造になるのでしょう。
そしてSESの2.3は1,200gを切るというかなりの軽さです。最も売れ筋になりそうな3.4、4.5は旧3.4AR、4.5ARのスペックを受け継いでいます。そのためリムの内寸は25mmに。想定しているベストなタイヤ幅は、27~28mmだそうです。
また重量1,390g、1,452gと旧ARから大幅な軽量化を果たし、非常に競争力のあるスペックに。例えばシマノのWH-R9200-C36は1,350g、WH-R9200-C50は1,461gです。
6.7になるとリムハイトが60/67となりますが、リム内寸は逆に23mmと狭くなるのが興味深い。グラベルで使わないからワイドの必要は無い…とか?(23mmでも十分にワイドですが)
※2022年5月時点では、日本の代理店であるダイアテックのwebサイトには新SESシリーズがまだ掲載されておりません。しばらく日本国内では旧製品も流通すると思いますので、参考として旧モデルのスペックを載せておきます。ENVEの本国サイトでは、旧モデルのページは既にアクセス出来なくなっています。
リム高 | 内寸 | 外寸 | 重量 | 価格(税込) | |
---|---|---|---|---|---|
SES 3.4 DISC | 38/42 | 21 | 27.5 | 1,420 | ¥393,800 |
SES 3.4AR DISC | 39/43 | 25 | 32 | 1,417 | ¥393,800 |
SES 4.5AR DISC | 49/¥55 | 25 | 31/30.5 | 1,569 | ¥393,800 |
SES 5.6 DISC | 54/63 | 19 | 29/28 | 1,553 | ¥393,800 |
SES 7.8 DISC | 71/78 | 19 | 29/27.5 | 1,651 | ¥393,800 |
■FOUNDATION COLLECTION
次にセカンドラインのFOUNDATIONです。こちらはロード用で2モデルあります。
※ENVE45の重量を1,541gから修正。こちらはSRAMのXDRフリーの場合の重量でした。
※2022年4月の価格改定を反映(217,800円⇒272,800円)。
リム高 | 内寸 | 外寸 | 重量 | 価格(税込) | |
---|---|---|---|---|---|
ENVE 45 | 45 | 21 | 28 | 1,561 | ¥272,800 |
ENVE 65 | 65 | 21 | 28 | 1,641 | ¥272,800 |
セカンドラインのFOUNDATIONはSESの7割程度の価格となっています。SESと同じ工場でリムを作っているのですから、お買い得に見えてしまいます。重量は特に軽いわけではありませんが、ENVEブランドが欲しかった人にはお勧めです。カンパのWTO45は1,520gで324,500円ですからね。
こちらもチューブレス前提のフックレスリムです。ディスクブレーキオンリーに加え、チューブレスオンリーです。ディスクブレーキじゃないとダメ、チューブレスじゃないとダメ、と最新のホイールを買うのも楽ではありません。
フックレスでも、パンク時にはチューブを入れる事も可能です。しかしチューブレスの状態で推奨空気圧が4.0bar程度ですから、人によっては非常に低圧です。あまり速度を出さない様にする必要がありそうです。ちなみに私の体重は58kgなので、クリンチャーの時から5.5barくらいで走っていました。なので空気圧が4.0barでも全然問題はありません。
ちなみに安いのはフックレスだから、という部分が大きいと思います。フックレスのリム自体は以前からMTBではありますので珍しくはありません。やっとロードにも波及してきたというところです。
フックレスのメリットは、ENVEは構造がシンプルになることで同じ重量で頑丈に出来ると言っています。また製造工程も単純になるのでコストが下がります(それならSESのARも価格が変わっても良い気がしますが…)。カーボンの成型方法を考えると、構造をシンプルにするというのは強度も上がるしコストも下がるし良い事づくめのはずです。
またより理想的な形状でタイヤがはまるため、タイヤのサイドウォールの変形が減り転がり抵抗も減る。リムとタイヤがよりツライチになるので空力も向上する、などもメリットとして挙げられます。
ハブについてはSESと同等グレードのものを使用。フランジの加工を減らすことでコストを削減しているとのこと。この価格でこのスペックは気になりますね。デザインも、個人的には好みです。
※結局、ENVE45を買いました。
■まとめ
価格が2種類しかないので、ENVEとしては割安なFOUNDATIONのコスパの高さが光ります。リニューアルしたSESも性能はかなりのもの。価格は2,850ドルとのことですが、果たしてダイアテックを通した価格はいくらになるのか。単純に1ドル=127円で換算すると370,000円くらいになりますので、値下がりは期待出来なさそうです。
しかし最近のロード用ホイールも内幅が21mm以上というのが普通になってきました。リムの重量が幅広になっても変わっていないのは、技術の進歩を感じさせます。単純にリムの断面の三角形を広くすると、剛性も上がるという理由もありそうですが。
しかし想定される27や28Cのタイヤを装着すると、確実に重くなってしまうのがデメリットです。いったん走り始めてしまえば現実の路面では25Cと比べて28Cの方が軽やかなのですが、タイヤメーカーの進歩が追い付いていない印象を受けます。そろそろ21mmの内幅を前提に軽量な28Cタイヤを作って欲しいところ。
ENVEも自社ブランドのタイヤ(OEM元はTUFO)を出していますが、特に軽いという訳ではありません。25Cから2mm刻みで太さがあるところはメリットですね。ちなみに想定のタイヤ幅が27Cと言っているのは、このENVEブランドのタイヤに27Cがあるからです。これを21mmのリムにはめると28mmになるとなっており、絶妙な太さですね。
他のブランドはこちらから。