【チューブレス完結編2】石鹸水もシーラントも使わないビード上げの方法(チューブレスのやり方・導入方法)
さてチューブレスの導入方法の続きです。前回はチューブレスバルブを装着しましたので、続いてタイヤを装着してビード上げを行います。
3、タイヤの装着
適切な厚みでチューブレステープを巻いたら、タイヤを装着します。タイヤ装着の際、手で簡単にはめられないことを目安としましたので、ここはテムレスやニトリル手袋など『摩擦力の増えるアイテム』を使ってはめていきます。握力や指の皮の厚さに自信のある方は素手でも良いでしょう。
タイヤ装着のコツ
タイヤ装着は、クリンチャーの時とは逆にバルブ周辺を最後にします。
チューブレスタイヤ装着にはちゃんとコツがあります。まずチューブレス対応ホイールのリムの構造なのですが、センターグルーブという溝が必ずあります。これは内寸を計測した時の画像ですが、リムのセンターが明らかに低くなっていることが分かります。
まずタイヤのビードを両方ともこの溝にしっかり落とします。センターは一段低くなっているわけですから、円周としてはセンター部分が一番短くなるのですね。まずここにビードを落とす。次はバルブの180度反対側から、手で揉みながらバルブに向かってタイヤをしごく(寄せる)作業をします。そうすることで、わずかな『タイヤの遊び』の部分をバルブ周辺に集めるのです。これをちゃんとやると、バルブ周辺に数ミリですが余裕が出来ます。こうなると手ではめることが可能になります。
バルブ側を最後にはめるのは、最初にバルブ側をはめてしまうとこの『寄せる』作業がバルブのせいで出来なくなってしまうからですね。
リムとタイヤの組み合わせによっては、全くはまらないという事もあると思われます。その場合は最終手段でタイヤレバーを使います。タイヤ裏側のシールを傷つけないように専用品がありますので、こちらを使いましょう。チューブレステープ貼りの段階でも結構な握力を消費しますので『テープ貼り⇒タイヤはめ』の連戦に自信が無い方は、あらかじめ用意しておいても良いと思います。『極悪』『最凶』『650Bかと思った』と言われるGP5000チューブレスも、このレバーのおかげではめることが出来ました。
注意点
タイヤ装着時の注意点ですが、タイヤをはめた後に
- リムテープの剥がれ、めくれが発生していないか
- バルブのゴムがビードの中に収まっているか
をチェックします。クリンチャーの時は、チューブを噛みこんでいないかチェックしたと思いますが、あれと同じようなものだと思って下さい。タイヤを1周チェックしながら、タイヤのビードをリムセンターのくぼんだ場所(センターグルーブ)に改めてしっかり落とします。
4、空気を入れる
いよいよ空気を入れてビードを上げます。ここまでしっかり施工出来ていれば、フロアポンプでもビードが上がるはずです。
フロアポンプで空気を入れる時には、片手でバルブ付近のタイヤを握るように押さえ、もう片方の手でポンピングします。バルブ付近はバルブのゴムがあるため、リムとの密着度が甘くなりがちだからです。
チューブレステープを追加で巻く前は、ユルユルで全く空気が入りませんでした。さてチューブレステープの施工後はどうでしょう?ポンピングすると2割くらいは膨らんでくれるのですが…最後のところで『プシュッ』とエア漏れ。気密が足りずビードが上がらない状態です。
しかし今の私にはフロントホイールの経験がありますので『これはイケる』と判断し、インフレーターを投入します(ベストは更にテープを巻くことですが、さすがに面倒だった…)。
要は、漏れる空気の量よりも入っていく空気の量が大幅に多ければ、ビード上げが可能なほどの圧力を発生させることが出来るわけです。インフレーターはそのためにあります、楽をさせてくれる便利アイテムですね。インフレーターに6.0barまで空気を溜めて、レバーOFF。一気に空気が入って『パキン、パキン』と無事にビード上げが完了です。
石鹸水について
一般的には、ビード上げの際には石鹸水の助けを使うのが定番です。IRCによると、タイヤビードおよびリムに石鹸水と塗っておくと摩擦が減るので
- タイヤの組付け作業がやりやすくなる
- タイヤとリムのフィットが向上する
とあります。これは確かにその通りです。一見きちんとビード上げが出来たように見えても、何かの理由で一部分だけビードの上がりが悪く、リムと完全に密着していないケースがあるからです。摩擦を減らしてビードを移動しやすくしてあげれば、そのようなトラブルの確率は減ると思います。これが石鹸水を使用する場合のメリットですね。
しかし今回紹介する方式ですと、
- チューブレステープを適切な厚さに巻く
- その目的は気密性を上げるため
なので、タイヤを装着 ⇔ ダメならチューブレステープ追加 の工程を往復する必要があります。この作業に石鹸水が邪魔なのです、なぜなら濡らしてしまうとテープを追加で巻けないからです。使うとすれば、フロアポンプでビードが上がることを確認した上で、リムフィットを向上させるために最終段階で塗布する程度でしょうか。
個人的には、一部微妙にフィットしていないためにエアが漏れるような事があっても、シーラントが塞いでくれます。メリットとデメリットを考慮すると、今のところは不要かな?と考えています。
ただ今回は新品のリムで作業する場合の話です。使い古してシーラントがたくさんこびりついているようなリムの場合だと、石鹸水を使った方がメリットが上回るケースが出てくることもあると思います。私も今後チューブレスを使う中で色々痛い目に遭ってくると、いつの間にか『石鹸水は必須!!』とか言い出しているかもしれません(笑)
5、一晩放置する
ビードが上がり空気が入ったら、その状態で一晩くらい放置します。
目的は
- 高圧の空気によって、チューブレステープの密着度を上げる
- 明らかなエア漏れがあった場合、対処するため
ためです。
どんなにちゃんとテープを巻いて、テープとリムをしっかり密着させたつもりであっても、実はテープとリムの間に隙間があっていつの間にかシーラントが浸透してそこからスローパンク…ということが起こります。
そのために空気圧で押し付けて、テープの密着度を上げます。またこの時点でテープやバルブに隙間があれば、そこから『シュー』と空気が漏れているはずです。ニップルから漏れている場合はテープの施工不良ですし、バルブから漏れている場合はバルブの取り付けを確認です。
バルブをつかんでゆすってみて、それでもエア漏れしないか確認してみて下さい。最初は絶妙なバランスでエア漏れしていないけれども、ちょっと動かすと漏れてくることがあります。この程度で気密が破られるようではいずれにせよその内にエア漏れしてきますので、面倒でもタイヤを外してバルブをしっかり装着し直します。
石鹸水があるとこの作業がやりづらくなりますし、ましてやいきなりシーラントを入れると更に面倒になります。
4の工程でフロアポンプで空気を入れることが出来ていれば、そんなに簡単に空気は抜けません。数時間~一晩程度はそれなりの空気圧を維持しています。今回はインフレーターを使わないと空気が入らなかったので、約2時間で1bar程度まで低下していました。
それでも明らかな空気漏れの音はどこからもしていません。一度ビードが上がればフロアポンプでも追加補充出来ます。なるべく高圧の状態を維持しておきたいので、何度か5.0barくらいまで空気を継ぎ足した後、一晩放置しました。この程度の空気漏れでしたら、後はシーラントが塞いでくれると思います。
6、シーラント投入
そして翌朝。いよいよシーラントの投入です。まずシーラントは『これでもか!』という位シェイクしましょう。シーラントはゴム繊維の入った液体ですので、容器の下の方に固まっていると思って下さい。目安は1分です。
シーラントについて
私は安定信頼のSTANS(スタンズ)を使いました。シーラント使用量の目安は25Cのタイヤ1本で30mlと言われており、ちょうど2本分の60ml弱で使いやすい容量です。先端も細くなっていて、バルブに挿してそのまま注入出来るようになっています。
入れる時は、上記画像のようにバルブコアを外してそこから注入します。この直接注入の方法ですと、正直なところ非常に適当に注ぐことになり正確な量が分かりません(とっても楽ですけども)。沢山注ぐ分にはタイヤ外周部が重くなるだけであり、それ以外のトラブルに直結するようなデメリットは無いので心配不要です。むしろ不足する方が気密性の低下につながるので、ケチって不足する方を心配すべきです。
しかしタイヤ外周部が重くなるというのは、リムを軽くするためにホイールにウン十万円払うという行為を台無しにしますので、可能な限り避けたいですよね(笑)
そこでシリンジ(注射器)を使って計量しながら注入するという方法もあります。
100円ショップのものでも十分代用可能ですが、スタンズ純正でも1000円程度です。ちゃんとバルブに連結出来るようになっていますので、何かのついでに買っておくと良いでしょう。これのメリットは正確な量が管理出来るだけでなく、お得な大容量ボトルタイプのシーラントが使えるという点です。
スタンズのノーマルタイプシーラントは、先ほどの2オンス(56ml)、16オンス、32オンスの3タイプがあり、当然ながら32オンスが一番お得です。私は2オンスを400円で買っていますが、32オンスを2オンスで換算すると150円程度。タイヤの太いMTBでも気兼ねなく使えますね。
特にロードではホイール全体の重量を10g単位で管理したいという方が多いでしょうから、ここはしっかりシリンジを使って重量管理するのが良さそうです。シリンジを使った後はシリンジとチューブの水洗いが必要ですのでお忘れなく。
ちなみに今回のタイヤは28Cなので、どの位の量を使用したのかと言いますと、、、初期状態の2オンスボトルの重量は73gでした。
『これ位かな?もう少し入れとくか?』と適当に入れた結果、重量は14gに。シーラントの質量は1mlでほぼ1gなので、全部入れてしまいました…(笑) 参考にならん。
これ、入れた直後は『入れすぎや!(勿体ない)』と思いました。実際、シーラントを全体になじませる前にホイールを振ると『チャプチャプ』と音がします。そりゃ60mlも入れば音もするでしょう。
しかしホイールをぐるぐると回してタイヤ全体…特にビード部分に行き渡るようになじませると、ホイールを振っても先ほどの音は一切しなくなります。全部なじんでしまいましたね…。それでも多かったとは思いますが、気密性確保のためと割り切って前向きに考えます。
再度空気を入れる
シーラントを全体になじませました。いよいよ空気を入れます。昨夜は2時間ですっかり空気が抜けていたのですが、さて今回はどうか。
フロアポンプでポンピングすると、順調に空気が入ります。フロントホイールの時は、気密性の低い個所からブクブクとシーラントが漏れ出して、すきまを塞ぐ様子が見られました。しかし今回はその様子が全くありません。ちゃんと作業するとこうなるのか~。
チューブレステープをしっかり巻いて気密性の高い施工をしたので『最初からビードがしっかり上がっており、かつリムとのフィッティングも必要十分』という事なのでしょう。
しっかりテープを巻く ⇒ フロアポンプでビードが上げられる ⇒ 適切な内圧がかかる ⇒ しっかりビードが上がる
というロジックですね。(今回は手抜きしてインフレーターを使いましたけども…。。。)
その後、空気圧を5.0barにセットして一晩様子を見ました。空気圧の低下は何と0.1bar程度。ほとんど低下していません。
※タイヤとホイールの相性によっては、しっかり施工しても微量のエア漏れが(4時間で1.0bar程度とか)止まらない場合があります。このケースの場合、リムとタイヤビードの間の気密が完全でなく、そこから漏れている可能性が高いです。対処方法として『100kmくらい走行』して『リムとビードの間にシーラントを行きわたらせる』ことで、エア漏れを止めることが可能です。まずは4~5時間程度の走行を2日ほどやってみて、どの程度エア漏れが低減するか試してみて下さい。GP5000TLとシュワルベ プロワンの時はこの方法で仕上げました。
ようやくチューブレスホイールの施工が終わりました。今回はチューブレスタイヤの導入方法、やり方についての説明でした。後は実際に走ってみて、走行感を確認してみたいと思います。楽しみです。
前回、その他のチューブレス関連の記事はこちらから。
「ここまでしっかり施工出来ていれば、フロアポンプでもビードが上がるはずです」は思わずにっこりする一言です。
石鹸水の利用については、リムよりもむしろタイヤ(ビード)の方にシーラントが付いた場合、と私は考えています。リムのシーラントは比較的簡単に除去できます(リムテープはもちろん除去できませんが)。
私淑する(というのは言い過ぎかもしれませんが)ヤン・ハイネ氏の指導によれば、チューブレスレディタイヤの再利用はシールが甘くなるのでやめた方がよい、ということで、確かにその傾向を感じていて暫定的にチューブド運用していますが、密閉性が甘くなる理由の一つに、ビードへのシーラント固着によるリム〜タイヤ間のシールの甘さがあると思います。
https://www.renehersecycles.com/how-to-set-up-tubeless-tires/
この記事の最後にあるTipsを読むと、それがよく分かります(分かります、と言っても私はmorou2さんのように、実際に体感しないと分かりっこないのですが)。
同時に、シーラント液が蒸発すると、リム〜タイヤ間のシールが甘くなってくるので、減圧が起こりやすくなる、とあります。
ブログに書いた通り、STAN’SのRACEシーラントを私は使っているのですが、このシーラント、シリンジで注入することができません(詰まるor密閉用のファイバー成分が注入できないので)。
つまり、追加をするには少なくとも片側のビードを外さないといけないので、このシーラントを使う=タイヤは使い捨て、ということになります(RACEって書いてあるからうなずける話ではありますが…)。
上記のハイネ氏の記述は、ケーシングの柔らかいCompass(Rene Herse)タイヤの使用について語っているポイントなので、他のタイヤだとそこまで心配する必要はないかもしれませんが、ご参考まで。
この内容は今度あらためて自分のブログにまとめたいと思います。
そのまんま受け売りで、お恥ずかしい限りです…。でも本当にその通りなんですよね。
ヤン・ハイネ氏ですが、ブルべの世界でも有名な方です。リンク先のRene Herse CyclesのサイトにもPBPの記述がありますね。
私もリンク先を読んでみましたが、タイヤの再利用は非推奨ですか…。使い切るまで外すな、ということですね。確かにその通りではあります。
チューブレスでパンクしたら、一般に『チューブ入れればよい』と言われますが、私の知り合いにも余計にトラブルになるのでタイヤは外さず、シーラント継ぎ足しのみで対処するという人がいます。
チューブレスは奥が深いですね~。性能も良いし楽しいですが、同時に一般的にはならない、とも思います…。これは対処できる人が限られますね。
チューブラー(使ったことないですが)に比べたら楽勝ですよ!(たぶん)
上でコメントしたことは自分のブログにまとめ直したのですが、趣味の世界なのでこのくらいの難易度があってもよいような気がしています。