【レビュー/インプレ】超軽量チューブレス IRC FORMULA PRO TUBELESS READY S-LIGHT

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IRCのヒルクライム用軽量チューブレスレディタイヤ『IRC FORMULA PRO TUBELESS READY S-LIGHT』のレビュー/インプレです。軽さに特化しているため、チューブレスにこだわっているIRCでは珍しくチューブレスレディになっています。今回購入したのは、ENVEのフックレスリムに合わせて28Cです。

■総合評価

  • 重量の軽さにより、走りも軽い
  • グリップ、剛性もしっかりある
  • 摩耗が早くパンクしやすい、ハマらない、外せない

■購入動機

シュワルベのプロワンの次のタイヤとして用意していました。タイヤについては、銘柄を固定せずになるべく多くのタイヤを使ってみることにしているのですが、選定した理由は以下の通りです。

  • ENVE45(フックレスリム)に適合するタイヤとして。フックレスリムなので、メーカーのテスト済みリストに載っているタイヤから選ぶ必要があります。
  • チューブレスとして非常に軽いので一度使ってみたかった。TTに特化しているヴィットリアのコルサスピードよりも更に軽い。
  • IRCのタイヤは安全性を重視して非常にはめ辛いという評判なので避けていたが、食わず嫌いせずに一度は試してみようと思ったため。

ENVEの適合タイヤリストには、27-29C幅のカテゴリに2021年8月の時点で24銘柄が記載されています。意外と多いのですが、食指が伸びないタイヤも多く載っています。例えばENVE純正(定価12,000円もする…)やBontragerやGIANT(直営店に行かないと買えない)など。その中で、IRCは広く販売されている貴重なタイヤなので採用しました。

■製品概要

チューブレスレディ

IRCは、チューブレス/チューブレスレディの『FORMULA』シリーズとして3種のタイヤを販売しています。IRCは以前からチューブレスレディではなくチューブレスを推していますが、S-LIGHTは軽さを重視しているためシーラントが必須となるレディタイヤとなっています。

個人的には、チューブレスでもパンク時の対処としてシーラントをあらかじめ入れておく方が良いと思っています。そもそもタイヤの組付け時には、チューブレスであってもリムとビードのわずかな隙間から空気が漏れます。その隙間を埋めるためにシーラントが必要なので、チューブレスである必要性はあまり感じません。

重量

このタイヤの最大の特徴です。25Cで220g、28Cで250gという驚異的な軽さを実現しています。主要な他ブランドのチューブレスタイヤの重量一覧は以下の通り。

タイヤ幅銘柄重量(g)
28CS-LIGHT(IRC)250
GP5000(コンチ)315
コルサ(ヴィットリア)305
プロワン(シュワルベ)279
25CS-LIGHT(IRC)220
GP5000(コンチ)295
コルサ(ヴィットリア)290
コルサスピード(ヴィットリア)240
プロワン(シュワルベ)265


GP5000はチューブレスなので重くても仕方ありません。S-LIGHTはコルサスピード(耐摩耗性、耐パンク性を無視したTT用タイヤ)よりも更に軽いというスペックです。

実測の重量ではどうだったかというと、以下の通りでした。公称250gですから誤差3gは優秀です。

トレッドパターン

IRCの特徴である杉目パターンのドレッドです。転がり抵抗は若干増えるが、コーナーリングの限界付近でタイヤの挙動を掴みやすいとのこと。

タイヤインジケーターも付いており、タイヤの摩耗度合いを的確に把握できます。すぐに無くなってしまうタイヤなので、これは重要ですね。

ディスクブレーキ対応

ディスクブレーキの制動力に対応し、ビード部分が補強されているとのこと。個人的にはこのタイヤの脱着には苦労しましたので、ビードは補強しすぎだと思います(笑)

ただ私の体重は58kgしかないですが、メーカーとしては体重100kgの人が下りでフルブレーキすることも想定しないとならないですから、安全マージンを取るのは致し方ないところだと思います。

脱着性

IRCは10年以上前からチューブレスを販売している老舗メーカーです。その当時から脱着性については『最凶』との呼び声が高く、リニューアルして改善されたとはいえ非常にビードが固いとの評判。どんなホイールに装着されるか分からないため、メーカーとしては『外れないことが第一です』との非常に頼もしい設計思想のもと製造されています。

その一方で、サイトには『チューブレスレディタイヤの組付け方』などもしっかりと掲載したりしていて、ユーザーへの配慮もうかがえます。ネットでインプレを検索すると『はめやすいです』などの記載が出てきますが、さて実際のところどうなのでしょうか。

■レビュー

レビューです。

脱着性

走行性能以前の要素として、気になる脱着性です。まずは無事に組付けが出来るのでしょうか。ビードは非常にしっかりとした造りで、いかにも剛性がありそうです。走っている時は良いと思いますが、ハマらない、外れない雰囲気が漂います。

実際に装着します。片側のビードを入れるだけで一苦労。

最後に残ったビードを押し込む図。IRCのタイヤなのにIRCのタイヤレバーでは歯が立たず(レバーの幅が広いので差し込めない)、レザインのごついタイヤレバー(レバーの幅が狭い)を使ってしまいました。下の画像はここまでビードを入れたら大丈夫だろう、ということで撮影した状態です。レバーを入れる前は、ビードが入っていない部分の長さはこの倍はありました。

レザインのタイヤレバーはIRCよりも更にゴツいので頼もしいのですが、レバーの幅が狭いのでリムには良くないですね、コレ…。レバーの幅が半分になるならば、面積あたりにかかる応力は2倍になりますからね。リムにはすごい圧力がかかったと思うのですが、破損しないのはすごいです。まぁ悪いのはタイヤレバーじゃなくて、ハマらないタイヤ&リムの組み合わせだと思います。一概にタイヤのせいにしてはいけませんが、GP5000チューブレスでもここまで苦労しませんでしたよ。

格闘の末に装着に成功です。これをフロントもやるとかあり得ん。。。
※ちなみにタイヤの向きを間違えているのですが、もう一度作業するのは嫌だったので気づかなかった事にしました。トレッドパターンが逆になっても、そこまで影響ない…かなと…。IRCさんスミマセン…。

続いてビード上げです。一度、石鹸水無しでトライしましたがビードは上がらず。石鹸水を塗りたくって再度チャレンジします。石鹸水を作って塗るのは手間ですが、副産物としてホイールがピカピカになるので嫌いな作業では無かったりします。

インフレーターも投入して無事にビードが上がりました。その後、空気圧の様子を見ているとやはり若干の空気漏れ(30分で1barとかの低下度合い)があります。続いてシーラントを注入してビードとリムの隙間を塞ぎます。この現象って、チューブレス(GP5000など)でも同じように起こるんですよね。私がチューブレスでもシーラントが要るというのは、この現象が起こるからです。チューブレスなら確かにタイヤからは漏れないけど、リムとの隙間から漏れるんだから、結局はシーラントが要るのです。

シーラントを入れて空気圧を上げていくと、隙間からシーラントが泡状になって出てきます。

これでタイヤの装着は完了です。評判通りのハメにくさでした。リムとの相性にもよりますが、苦手な人はショップにお願いして装着してもらった方が良いレベルでした。しかしその後は空気漏れも無く、快適に走れています。この安定性と引き換えのハメにくさということですね。

空気圧ですが、フックレスリムなので低めです。ENVEの推奨空気圧にしたがうとENVE45で体重58kgの場合は約3.8barですが、その通りに運用しています。

ちなみに、後日パンクしたのでタイヤを外そうとしましたが、ビードをセンターグルーヴ(中央の溝)に落とすことすら出来ずに泣きそうになりました。最終的には、タイヤレバーを使って何とかビードを落とすことに成功しました。ビードを落とすためにタイヤレバーを使う羽目になるとは。

走行性能

これを履いて600kmのブルベを走ってきました。600kmのうち400km以上は雨が降っていたブルベだったのですが、パンクも無く無事に完走。

軽さ:軽さからくる漕ぎだしの軽さは確かに感じられます。GP5000チューブレスあたりの重いタイヤからの変更だと、顕著だと思います。速度がのると軽さだけではなくなってくるので、軽さの恩恵はあまり分かりませんん。

グリップ:非常に良い。杉目パターンが雨でもドライでも良い仕事をしています。転がり抵抗はGP5000などと比べてしまうと不利ですが、安心感はこちらの方が上。フックレスのリム性能もあるのですが、タイヤ全体に軽量タイヤとは思えない剛性感があり、コーナーでもしっかりと『コシ』があります。踏み込んでもタイヤが沈むことなく瞬時に反応してくれます。

杉目のパターンは転がり抵抗が不利になることを承知で採用しているそうで、理由はタイヤの挙動がつかみやすいからだそう。本当に感覚の世界で言語化出来ないのですが…このパターンは、スリックなパターンよりもロードインフォメーションを多く伝えてくれる感覚があります。

素人の想像に過ぎないのですけども…ほんのわずかにグリップが甘くなるせいで、限界を超えるといきなりスリップするのではなく、限界の手前から少しづつ滑り出すという挙動になるのでは。

振動吸収性:普通です。細かな振動はカットしれくれますが、それは他のチューブレスの28Cタイヤでも同じ。シュワルベのように段差で上手にへこんで衝撃を吸収するような芸当は出来ません。IRCの方が剛性があるからですね。ここは仕方がないところです。S-LIGHTは、そもそもヒルクラ用チューブレスタイヤなので。

耐久性:上記の過酷な雨ブルベでもしっかりと走り切ってくれました。しかし1,500kmほど使ってトレッドが薄くなったところでグラベルっぽい道を走ったところ、残念ながらパンクしてしまいました。パンクの経緯などは、以下の記事に書いています。舗装路のみ走っていたら、もう少し使えたと思います。やはりトレッドが減るのは早いですね。

ちなみに、約1,500kmでの減り具合は以下の通り。インジケーターが消える直前で、センターの杉目パターンはほぼ消えてます。体重58kgの私が1,500km走ってこの減りなので、もっと体重のある人なら更に短命ということになります。

■まとめ

IRCが販売する超軽量チューブレスレディタイヤです。走行性能、軽さとも、ここぞという時に使える性能は十分持っています。しかしこの脱着のしづらさはかなりのもので、レース前に気軽にタイヤ交換出来るものではありません。レース前に交換したいなら、ショップに依頼してしまうのが賢明ですね。

またトレッド部も薄いので、調子に乗って練習で使いすぎると無くなってしまいます。まさに勝負タイヤ。性能は好みでしたが、使いどころが難しいタイヤです。タイヤ交換が苦にならない、相性の良いリムを使っているという人はぜひ使って欲しいと思います。国産のため価格も比較的安いのも特徴です。

その他のチューブレスタイヤのインプレは以下より。

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  1. 読者

    いつも分かりやすいレビューありがとうございます。
    IRC TL 28C(MAVIC COSMIC SLR)での運用経験(現在進行形)です。
    脱着性4:タイヤレバーは必要ですが、フロアポンプのみでビードは上がります。
    気密性5:シーラントなしでもありと同等の気密性を確保しています。
    (1週間後に確認、パンク対処のためその後シーラント使用)
    走行性5:競技者ではないのでグリップ感、転がり、振動吸収性等とくに不満ありません。
    価格2:購入価格は比較的安いが耐久性がないので結果的に割高です。
    耐久性1:ドライ舗装路1000km以内に2回(2本)パンク
    (いずれもリア、トレッッド面のカット、シーラントで走行中は気付かないレベル)
    総合評価3:耐久性の無さには辟易ですが、ホイールとのマッチングは秀逸です。
    チューブレステープが不要なことでリムベッドの形状に個体差(個人差?)が
    生じないことが大きく寄与していると感じています。
    ご参考になれば。

    • morou2

      読者さん

      非常に参考になるコメントありがとうございます。新しいMAVICのホイールとの組み合わせは良さそうですね。耐久性以外は特にご苦労されていないようなので、ちょっとMAVICが欲しくなってしまいました(笑)

      シーラントが無くとも気密が保たれるというのは軽量化出来ますから良いですね。脱着も普通レベルの難易度であれば、シーラント不要と相まって山に行くときにタイヤ交換するとかも出来そうです。
      しかしこの耐久性の無さは気になりますね。何か対策したらその分だけ重くなりますから仕方ないのですけど…。

ABOUT ME
@morou2
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当サイトは自転車関連のパーツレビュー、ブルべの走行記録を中心としたブログです。
管理人は40代のロードバイク乗り。20年前にCannondaleのCAAD3を買って以来、Cannoncdaleばかり乗り継いでいます。 昔はメッセンジャーやレース、今はロングライドとブルベ中心。2022年エベレスティング達成、2023年PBP認定、2024年キャノボ達成。ブルべの主担当もやります。
年間走行距離は約10,000km。身長170cm、体重57kg。
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