【2023 PBP】まとめと振り返り、完走へのポイントなど
■2023 PBPのまとめ
2023PBPのまとめと振り返りです。初参加で完走しただけの立場でおこがましいですが、自分なりに完走に貢献したと思われる要因、事前の想定と実際の差異、自分への備忘録などを忘れる前に書き出してみます。
2019PBPについても同様の内容をまとめたブログ等がありました。その内容は本当に人それぞれなのですが、その視点の多様さが役に立つこともありました。以降の内容も初参加の私の経験に基づくものですが、1つでも次回以降の参考になればと思います。
各PCの通過時刻などは以下の記事にまとめてあります。
■走行結果
まず走行結果です。
- 完走タイム:86h50m
- スタート時刻:20時(グループQ)
- 折り返しのブレスト到着時間:38h05m(3日目の10時05分)
- 走行時間:約55時間(Edge530計測)
86時間台で何とか完走。出走グループはQと遅い時間帯でした。早い時間帯の人気が高いですが、遅い時間でも特にデメリットに感じた点はありませんでした。21時半くらいまで普通に明るいですし。スタート当日にじっくり寝られたので、むしろ良かったです。
■事前の計画を検証。実際はどうだった?
私は、出発直前に書いた記事の中で『ブレストまでは15km/hで進む必要があり、時間がタイトである。そのために以下の対策を行うことでブレストに40時間以内に到着する』と書いていました。
- レストランは使用しない
- シャワーは浴びない
- 混雑するルデアックでは仮眠しない
- 補給は走行中をメインとする
- 道中のツイートと写真撮影を極力控える
実際に走った後でも『事前の作戦としては妥当だろうな』と思いますが、果たして上手く実行することが出来たかどうか。検証してみます。
レストランは利用しない ⇒ レストランばかり利用した
PCでの食事は学食形式のレストランと、サンドイッチ等のファストフードが買えるカフェ(バー)の2つがあります。カフェのサンドイッチはすぐに出てくるので時短になるのですが、結果としてはレストランばかり利用していました。
カフェを利用しなかった理由は以下の2つ。
量が足りない
バゲットのサンドを買うと、出てくるものは以下のようなシンプルなもの。画像はハム(シャンボン)が入ったものですが、これ1つでは長いPC間を乗り切れません。
時短にならない
では2つ食べれば良いのでは?と思いましたが、20cm以上ある固いバゲットを食べるのに10分かかりました。意外と時間がかかります。
一方、レストランはさほど混んでおらず、並ぶのに3~4分。小皿が並んでいるゾーンにたどり着いてサラダやヨーグルトなどの小皿を取り、メインディッシュゾーンでメインを盛り付けてもらい(パスタ or ライス、肉 or 魚など)会計まで更に5分。食べるのに15分。という感じです。
ちなみにカフェも並んでいる場合が多く、その点でも大した時短にはなりません。
これがレストランでの食事の一例ですが、パスタや米をスプーンで一気に食べた方が早いです。カロリーやその他の栄養素も十分に摂れますし、美味しいので食も進みます。
バゲットはバッグポケットに挿したりフロントバッグに入れておき、走行中に食べることが出来るのが利点ですが、トレインを組んで走っていると片手運転ができないのでやりませんでした。後述しますが、走行は誰かとトレインを組むのが基本。その為にPCで栄養バランスの取れた食事をしっかりするというのが私の走り方になりました。
(トレインを組んでいると、走りながら補給がしづらいというのは当初からの懸念事項ではありました)
またレストランの食事はまずく、口に合わないという意見もあるのですが、味の好みには個人差があることを考慮しても『日本人が普通に食べられる』水準はクリアしていると思います。美味くもないがまずくもない、学食のようなイメージです。
ただし、フランスらしくシャンボン(ハム)と、パスタにかけるソースは美味しいです。パスタ自体は大量に茹でられたものなので、柔らかめの食感なのは事実。茹で加減については日本人よりもイタリア人の方が許せない人が多い様子でした(笑)
後半はライスにシャンボンを載せて、グレイビーソースをかけてもらうというのが定番のパターンになりました。シャンボンは適度に塩気があって美味しい。食べない方が損しています。
こちらはグアレックでの食事。特にPCでは無いのでスルーすることも考えましたが、他の人が食べていたこのチキン。『他のPCの料理とは異なり、しっかり手間をかけて調理されている』ことが見ただけで分かったので、思わずオーダーしてしまいました。火の通り加減が絶妙で、ナイフを入れるとじわっと肉汁が溢れてくるほどのクオリティ。トマトソースも素晴らしかったです。PCでの食事では、ここが断トツ美味しかった。
食事についてはどうしても最大公約数的なメニューになってしまうので、各国のこだわりに応えるには中々難しいと思いますが、回を重ねるごとに進化しているようです。
また私は国内でも600kmブルべを走ると、コンビニ飯に偏っている影響か(なるべくラーメン屋や牛丼屋など、コンビニ以外のお店を利用するようにしているのですが)、サプリメントを飲んでいても味覚が鈍くなります。
ところがPBPでは上記のようなライス+肉+少しの野菜という食事ばかりだったにも関わらず、味覚の障害は起きませんでした。サプリメントも飲んでいましたが、意外と栄養バランスは良かったようです。ミネラルの含まれる硬水を大量に飲んでいたのも良かったのかもしれません。
シャワーは浴びない ⇒ 浴びなくてもOK
国内の600kmでは仮眠をして、その際にシャワーも浴びることがセットでした。目的は股を清潔に保って、皮膚トラブルの可能性を軽減すること。
PBPではシャワーを浴びる代わりに汗拭きシートで代用してブレストまで乗り切ることにしましたが、これは有効でした。PCごと(約50~90km間隔)に汗拭きシートで股を拭けば十分でした。
時間に余裕が出来たのでサンニコラ(480km地点)で仮眠の際にシャワーも浴びてしまいましたが、1日に1回シャワーを浴びるよりも、PCごとに汗拭きシートでマメに体を拭く方が、皮膚トラブル対策としては有効でした。
ルデアックでは仮眠をしない
ルデアックは400kmおよび800km地点に置かれているコントロールであり、ドロップバッグを置くに都合の良いポジションにあります。そのため多くの人が着替えなどを行うのですが、ついでに仮眠をする人も多いです。
利用者数が多いため、仮眠所の申し込みのために並ぶ、うるさい等のデメリットがあり、仮眠所のクオリティとしては低いという話でした。私はルデアックを避けて47km先のサンニコラでまとまった仮眠をしました。
確かにサンニコラの仮眠所は空いていたので、これは正解だったかなと思います。またコンパクトな拠点なので、仮眠所とシャワー室が隣接しており(体育館の中にシャワー室がある)、仮眠とシャワーを使う場合には便利でした。
復路では時間的な都合からルデアックで仮眠をとりましたが、確かにルデアックの仮眠所は混雑しており、申し込みに7~8分ほどの時間がかかりました(ちなみにサンニコラでも3分ほど並んだ)。またルデアックは仮眠室(体育館)とシャワー室が別の建物(隣同士ではある)のため、移動にも若干ロスが生じます。
ただし仮眠については眠くなったり疲労が蓄積する前に適切に取るべきです。ルデアックが混雑すると言っても10分以上並ぶことはそうそうありませんし、各PCの通過時刻は各人のスタート時間によって大きく変わりますから、この辺の作戦は柔軟に変更するのが適切かと思います。
補給は走行中にする
これは序盤のPC1までは有効でした。特に最初の120kmは補給ポイントがほぼ無いため、携行する補給食で乗り切る必要があります。
実際には50~60km地点あたりで深夜営業しているパブなどがあるのですが、序盤で非常に混雑しており、スルーしました。序盤は人口密度が高くトレインに乗り放題なので、良いペースで走り切ってしまう方が有効でした。
PC2以降は、前述の理由でPCでまとまって食事をするようになりました。ドロップバッグに大量の携行用補給食を用意しておいたのですが、全く使用せずに済んでしまいました。
ツイートと写真撮影を控える
これは有効でした。国内でも同様ですが、スマホをいじっているとあっという間に時間が過ぎます。資料用に写真撮影を行いたかったのですが、それすら控えました。当然ながら、撮影やツイートを控えた分だけ時短になっていると思います。
ただしレストランで並んでいる時や、PC到着時の記録用など、最低限のツイートは行いました。また走りながらスマホを取り出してサッと撮影する、というのは行いました。前後に車は全くおらず、道も広く舗装状態も良いため、安全を確保しながらの撮影は比較的容易でした。
以上、当初の想定と実際でした。
■完走に貢献したと感じるポイント
その他、完走に貢献したと思われるポイントを徒然なるままに。
前日までの疲労を抑える
観光などはせず、スタートまでは最低限の行動にしました。それでも荷物の開梱や自転車の組み立て、スタート前日の事前受付などそれなりに予定が入ってきますので、ゆっくりする時間はあまりありません。
空港から宿までも、事前に予約したタクシーで移動しました。費用はかかりますが、自転車を抱えて慣れない公共交通機関で移動することを考えたら安いものです。初回の参加なので特に。慣れている人は、電車やバスで安く移動しましょう。
作戦は適宜修正する
実際に走ってみないと分からない点も多いので、未経験者が事前に聞いた話と想像で立案した作戦は、現地で柔軟に変更する必要があります。
私は周りのヨーロッパ系とみられる人たちの走り方を見て、真似できる点は真似するようにしました。それがPBPに合った走り方だと感じたからです。食事はレストランでしっかり摂るというのもその1つ。
私設エイドなどPC以外の補給ポイントを活用する
食事はPCのレストランで…と言いつつもPC以外の補給ポイントがたくさんありますので、見つけたら活用します。PC間の間隔が長い(90kmなど)場合は、必ずといって良いほど中間地点のどこかにパブなどが出店を出しています。特に昼間は当てにして大丈夫だと思います。
もちろん100%期待は出来ないのですが、地元勢で補給食を持って走る人が少ないのも、これがあることを分かっているためだと思います。夜間も営業しているお店はありますが、昼間ほどではないためバナナを2本ほど持って走れば安心です。
こちらは早朝から営業しているバー。
グロメルという街にあったPBPの提携レストラン。『まともなパスタ』を目当てにイタリア人が押し寄せていました。ボロネーゼとカルボナーラが人気の様子。
アンブリエール=レ=ヴァレーという街のレストランが出していた出店。仮眠用ベッドまであります。1分で画像の食事が出てきて便利です。
また沿道の農家さんなどが開設している私設エイドも山ほどあります。今回は暑かったので水の消費量が非常に多かったですが、水に不自由することはありませんでした。慣れてくると、景色や辺鄙さの度合いを見て『この辺はしばらく私設エイドが無い』などということが感覚で分かるようになってきました。
トレインを組んで走る
かなり影響が大きい要素です。これだけ周りに参加者がいるのですから、積極的に誰かと一緒に走りましょう。
トレインの効果ですが、単独で走っていると例えば27km/h程度で100wほどの出力のところ、誰かの後ろにつくと32km/hでも70wで済んだりします(レースをしている人には今更な話ですが)。
序盤の120kmは8割ほど誰かに引いてもらっていたため、120kmを4時間で走りましたが脚はほとんど使わずに済みました(状況に応じてしっかり先頭も引いてます)。脚を使わないというのは、具体的には120kmの大半を70w程度の出力で走れてしまったということです(私のFTPはだいたい200wくらい)。海外勢は体が大きな人が多いため、ドラフティングの効果もしっかりあります。
トレインは人数が多いほど1人あたりの負荷が減るため、見かけたら遠慮せずに乗車しましょう。
■その他、備忘録的なもの
次回参加の予定は無いのですが、忘れそうなので残しておきたい事項。
バッテリー関連
ライト、サイコン、スマホ、Di2の充電のためにモバイルバッテリーを3つ用意しましたが、使ったのは2つでした。ライトを充電するために用意していましたが、ほぼスマホとサイコンの充電に使用。
ライト:夜間は基本的に集団走行するため、点灯するライトは1灯で十分だった。路面が良いので、下り以外は単独でも1灯で問題なかった。
Di2:1,200km走っても半分以上残っていた。理由はフロント変速の頻度が低いため。2~3%の勾配であればアウターのまま登れてしまうので、インナーを使う機会が無かった。Di2充電用のケーブルまで携行していましたが、杞憂に終わりました。
ライトは定番のキャットアイ VOLT800NEOを使っていました。予備カートリッジもドロップバッグに入れてありましたが、モバイルバッテリーからの充電で間に合ってしまったので、予備バッテリーは使用せず。
なるべくクラブジャージやjapanジャージで走る
国籍の分かるジャージを着て走った方が、色々なところで会話のきっかけになります。受付時に配付されるPBPジャージを着て走っている人も多かったですが、もったいないと思います。
といいつつ、私は3日目に上から下まで全てカステリになってしまった時がありました。予定ではAJたまがわのクラブジャージを着るはずだったのですが、前日の受付でブラジルジャージとジャージ交換してしまったので予定が狂ってしまいました。
また前回から言われていましたが、例のAJ反射ベストの目立ち度合いは際立っており、夜間の日本人の識別に非常に役立ちました。ざっくり言って8割程度の参加者はPBP公式反射ベストで済ませており、反射ベストまで作成している国は少なかったです。
道中でも、2回ほど『あのベストはどこで買えるのか』と聞かれるほどでした。
ノンストップの乗り方を身につける
PBPのコースには信号がほぼありません。交差点は基本的にラウンドアバウトです。そのためPCを出ると停車する機会がなく、おかげで私は600kmを過ぎたあたりからお尻の痛さとの戦いでした。
日本であれば信号待ちのたびにサドルから腰を下ろしますので、600kmでここまで痛くなることはあまりありません。信号がないことは事前に分かっていたことなので、対策をすれば良かったのですが経験するまで分かりませんでした。
お尻の痛みは個人差があるとはいえ、基本的にサドルに座っている時間に比例します。そのためサドルに座っている時間を減らすことが最も効果的な対策ですが、信号がない場合はどうするのか。
海外勢を見ていると、どうやらダンシングを多用することで対策している様子。何もない平地でもとりあえずいきなりダンシング。登りもシッティングでいけるけど、あえてダンシング。
また下りでもペダリングはせずに、サドルから腰をずらして惰性で下っています。私は登りと下りしかないPBP地形の走り方として、下りでなるべく加速して、登りはある程度勢いで登ってしまう…ということを聞いていました。実際、効率の良い走り方はその通りで、タイム短縮には非常に有効でした。
しかし尻痛対策としては、序盤から下りでは積極的にサドルから腰を下ろして、尻への蓄積ダメージを少しでも減らすことが有効でしょう。尻が痛くなるとまともにペダリングできませんからね。このあたりはフォームや走り方とも密接に関わっていますので、自分が何を優先するのか判断基準を持っておくのが良いと思います。
SPEEDPLAYユーザーは気を付けろ
SPEEDPLAYユーザーは、途中でクリートを分解して掃除が必要になります。掃除しないと恐らくCリングが途中で割れます。理由はPCで砂地や芝生などの上を容赦なく歩くためです。
今回は800kmを過ぎたあたりからダンシングの際にギシギシと異音が発生し始めました。『これはCリングが割れる直前の音だ』と感じましたが、CリングはPBPの前に交換していますし、PBPでは信号ストップがなくクリートを外さないので劣化する理由が思い当たりません。
要因を考えながら走っていると、PCで砂地を歩いていたことを思い出しました。仕方なく途中で停車して分解してみると、思った通り砂まみれです。
携行していた汗拭きシートで掃除すると、異音は消えてクリートキャッチの感触も元通りに。SPEEDPLAYユーザーの人は気を付けましょう。
以上、PBPに参加して感じたことのまとめでした。次回からは時系列で走行記録を書いていきます。その1はこちらから。