【2023PBP走行記 その5】スタート~PC1:VILLAINES-LA-JUHEL(203km)まで
さていよいよ1,219km、4泊5日の旅のスタートです。今回はPC1のVILLAINES-LA-JUHELまで。前回(その4)はこちらから。
■補給ポイント:MORTAGNE-AU-PERCHE(119km)まで
スタート直後は集団で進みますが、スタートから10kmほどはバイクによる先導があるらしい。何せ1グループは300人弱にもなり、列が長いのでグループQの先頭を視認することは出来ないのですが、確かきっちりと35km/h程度だったか?で進んでいった記憶があります。
しかし、この車の全く来ない区間を多国籍の大集団で進んでいく雰囲気は、PBP以外では中々体験できない唯一無二のものではなかろうか。一言でいうと、最初から楽しい。
序盤の走行計画
まずは最初の補給ポイントの街、119km地点のモルターニュ-オ-ペルシュを目指します。区間距離が長いですが、序盤はライダーが分散していないため少しでも分散させようという意図なのでしょう。
モルターニュはPCではないためパスすることも可能です。パスするならば最初のコントロールであるヴィレンヌまでの200kmがノンストップとなりますね。
この最長距離区間の計画は以下の2つ。
- 補給はフロントバッグに入れたカロリーメイトで凌ぐ
- 人の多さを利用してパックで走り、アベレージを稼ぐ
途中の60kmあたりの街でBarが営業しているらしいですが、恐らく混んでいて入れない気がしています。さて計画通りに行くかどうか。
前のグループに追いつき始める
しばらくすると、後方から先頭に上がっていくグループが出てきます。トレインに乗っていこうか…と思いましたが、まだ勝手が分からないこと、序盤で脚を使いすぎるなというベイさんからの教えを守り、しばらくは様子見。
15kmほど進み集団も伸びてくると段々慣れてきたので、上がってくる人の背中について私も前に上がっていきます。この人とは2時間くらい一緒に走ったでしょうか?サドルバッグも無ければリュックを背負っているわけでもなく、相当な軽装備です。かなり明るいですが、時刻は20:47。
初日の陽が、彼方まで続く大地に沈んでいきます。
この後も4~5人でローテを回しながら前に上がっていきます。少し向かい風だった気がするのですが、だいたい30~35km/hで進んでいきます。車は来ないし信号も無く、皆さんトレインにも慣れているので本当に快適。30km/h出ていても、出力は70W程度。これなら手持ちのカロリーメイトの補給でモルターニュまでは走れそうです。
暗くなってくると、各自のタイミングで反射ベストを着用します。
その内に、パスする人のスタートグループがPからO、N、Mと徐々に早い時間帯のものになってきます。走っても走っても、どこまでも続くランドヌールの列。壮観の一言です。
途中には聞いていた通り深夜営業中のBarが2軒ほどありましたが、混雑していたこととパックで走っていたためスルー。出来る限り貯金を作っておきます。
モルターニュに近づくと、徐々に地形が変化しだし、4~5%程度の斜度も出てくるように。完全に暗くなってしまいましたが、周囲にいくらでもライダーがいるのでライトは1灯で十分です。↑の写真の通り、路面の状況も良い。
モルターニュに到着
無事に最初のポイントである119km地点のモルターニュ-オ-ペルシュに到着。時刻は00:30くらい。グロスアベレージは26.5km程度とまずまずです。
当時のツイートを見ると割と辛かったらしい。
とにかく初めての補給ポイントなので勝手が分からない…まずは広い駐輪場に設置されたラックに駐輪。後で調べると、この施設は『Carré du Perche』というイベント会場らしい。
今回は往路のブレストまでのクローズタイムが前回よりも厳しくなっていることから、補給は混雑するレストランでは無く売店でバゲットを買った方が良いとベイさん/トリさんからアドバイスをもらっていました。
素直に教えに従い、売店でシャンボンサンドとコーラをオーダー。しばらく待っても出てこなかったので、これは忘れられているな…と思い隣の窓口に移動して改めてオーダー。すると1分くらいで出てきたのでやはり忘れられていた模様。窓口のおっちゃんの当たり外れが大きいみたいです。
これをPC(ではないけど)内のどこでどうやって食べたのか?全く記憶にないのですが、とにかく食べ終わりリスタート。バゲットサンドは楽しみにしていた食べ物の1つだったのですが、本当にバターとシャンボンしか入っていないシンプルなもの。食べきるまでに時間がかかる割にカロリーと栄養が不足しそうなので、これ以降は避けるようになってしまいました(味は美味しい)。
ここでは30分ほど滞在しました。出口でのトラッキングは00:53。計画よりも1時間、仮想クローズからは約3時間の貯金があります。
■PC1:VILLAINES-LA-JUHEL(203km)まで
次は203km地点のPC1、ヴィレンヌ-ラ-ジュエルを目指します。区間距離は84km。これを6:00までに到着し、1時間仮眠をとる…というのが事前の計画。このペースなら3.5時間ほど、4:30には到着できそうです。
モルターニュを出ると、少し肌寒さを感じました。出発してすぐでしたが、いったん停車してアームウォーマーとレッグウォーマーを装着。これから更に気温が下がるでしょうから、念のために早めに装着しておきます。こういうのをサボると後悔するのです。
ちなみに気温については、この後のヴィレンヌを出た直後あたりで10度を記録しています。これが今回の最低気温でした。
フランスの道中の景色は特徴的な場所があまりなく、しかも夜間だったためコースの記憶があまりありません。
相変わらず森の中と平原が繰り返し出現し、そこそこのアップダウンがあるという非常に走りやすい地形。この区間も積極的にパックで走って距離を消化していきます。しかし道が走りやすいのは良いのですが、刺激に乏しく、1人で走っていたら集中力が切れてペースダウン必至です。
ここではシアトルランドヌールの反射ベストを着た人が良いペースで走っていたので、背中を貸していただきました。
PC1に到着
そして約3時間後、最初のコントロールである203km地点のヴィレンヌに到着。時刻は4:00。83kmを約3時間、ここまでの203kmを8時間で進みました。計画よりも3時間、クローズよりも5時間半の貯金です。
ここでは仮眠をする計画です。90分ほどの予定ですが、寝ると寝ないとでは翌日のパフォーマンスが変わってくるでしょう。またここの仮眠所は快適なことで有名なので、基準としてどんなものか利用してみたかったということもあります。
駐輪をするとまずはサコッシュを出して、コントロールの滞在で必要なものを詰め込みます。財布、スマホ、モバイルバッテリーやおしり拭きなど。その後はコントロールに移動して、忘れずに最初のスタンプもget。当然ながらブルべカードには時刻が記入されますが、実務上はコントロールの入り口でRFIDによるトラッキングがなされるため、コントロール到着時刻はトラッキング履歴を見れば把握できます。
そのためクローズタイムに間に合うのであれば、いつコントロールに行っても構いません。私はコントロールへの立ち寄りを忘れており、仮眠後にスタンプをもらったこともありました。
仮眠所探し
ということで、まずは食事の前に仮眠。食事をすると消化にエネルギーが使われ回復力が落ちますので、まず仮眠。ところがこのコントロールは道路を挟んで両側に施設が並ぶ構造になっており、仮眠所の位置が非常に分かり辛い。
baruさんのサイトに載っていたマップ(印刷して携行している)によると道路の反対側にあるらしい。しかしマップを見てもなお入口が分からず、かなり迂回してどうにか反対側のゾーンに到達。
やはりPBPに複数回参加するとこのあたりの経験が蓄積されるので、この手の『初見ならではの無駄な行動』が無くなるだけで2~3時間は時間を節約できそうです。ちなみにこのPCは『D20』という道路を挟んで北側が市役所(地図上では『メリー』)の施設、南側はelementary school、private nursery schoolの施設を利用していると思われます。
仮眠所の利用方法
ようやく見つけた仮眠所。ヴィレンヌでの利用方法を簡単に書き残しておきます。
まずは仮眠所受付の建物に行きます(体育館など、仮眠所建物が大きい場合は入り口に受付がある場合もある)。すると恐らく高学年くらいの小学生がガイドについてくれ、利用目的(シャワーもある)と起床時間のヒアリングを受けます(子供たちは英語が通じます)。それを受付担当に伝えてくれて、利用する建物が割り振られるとガイドの子が仮眠所まで案内してくれます。料金は5ユーロ、カード支払いに対応。
こちらが仮眠所。私は復路でもヴィレンヌの仮眠所を利用したのですが、復路では別の建物で、ここは使われていませんでした。
中に入ると厚さ10cmほどのマットレス。暖房も効いており、最初の仮眠所体験にしては素晴らしい環境。モバイルバッテリーをスマホにつなぎ、就寝。私は遅い時間スタートということもあり大して汗もかいておらず、シャワーも浴びずに寝ましたが快眠できました。
このヴィレンヌのPCですが、小学校を利用していることもあってか、仮眠所やシャワーの利用に際して前述の通り小学生がアテンドしてくれます。どうも英語教育の一環として行っている様子で、復路ではいきなり『How are you?』と話しかけられて驚きました(フランスの小学生からそのセンテンスを聞くとは思っていなかった)。
起床と食事
時間が来ると『ムシュー』と呼び掛けて起こしてくれます。感覚的には10分程度しか経過していないのですが、しっかりと90分が過ぎ去っていた模様。
室内は土足厳禁なので、入口でシューズを履き外へ出る。次は食事。ここにはカフェもあるのですが、仮眠所受付の隣にあるレストランを覗いてみると非常に空いているのでレストランを利用してみることに。
こちらがレストランの食事。メインはボロネーゼ…的な何か。それと例の謎スープ、サラダ。薄いと揶揄されるPBPのパスタですが、食事については毎回改善されているらしく、味的には全然いけます。これで文句を言っていたらブルべを走れない(イタリア人は文句を言っていたが)。穀類(ライス/パスタ)とソースやメインを別々にオーダーすることが可能な方式で、ベジタリアンの人でも困ることは少なかったとのこと。
お値段はだいたい15ユーロ程度。これにバナナとコーラを付けてカロリーと食物繊維を補助します。マルチビタミンサプリも忘れずに飲んでおく。
ちなみにPC1からしてビールとワインが普通に売っています。しかもワインはフルボトル(ハーフボトルもある)。買う人はいるのか???
噂には聞いていたが本当だった。ああ、こういう感覚なのね、と。お酒を飲まない人には一切理解できないと思いますが、毎日飲んでいる私にも理解できません。
ヴィレンヌでは食事をピックアップする建物と、食事をする建物が分かれています。食事をする棟も空いており、たまたま日本人の方が集まっているテーブルがあったので混ぜてもらいます。
ちなみに↑の画像の奥に見えるゾーンもバーになっており、ここでもビールやワインが普通に買えます。ピックアップゾーンでは買わなかったけど、『やっぱり飲みたい!』という人のニーズに対応するためなのでしょう(謎)。
またテーブルクロスが『Crédit Agricole』なのもポイントが高い。Crédit AgricoleはフランスのJAバンクに相当する企業で、農業大国のフランスでは大企業です。ATMコーナーもそこら中にあり、ランドヌールの貴重な寝床になっています。
以前(1998~2008)は自転車チームをスポンサードしており、TDFの常連でした(ただしフランス枠)。Crédit Agricole以前の母体チームは『gan』。そしてそこのエースが『クリストフ・モロー』。彼の在籍は2002~2005でして、私のハンドルネームの元となった選手です(表記は『Moreau』ですが…)。
食事をしているとYO-TAさんがやってきましたので、仮眠所の女子小学生のキュートさを力説しておきました。
出発
さて仮眠、レストランでの食事と一通りイベントを経験し、カロリー補給も十分なのでPC2のフジェールを目指します。区間距離は90km、トータルでは293km。食事を終えたのは6時近かったので間もなく夜明けです。
出発の前に忘れずにアルコールシートで股を拭き、プロテクトJ1を塗り直しておく。あと歯磨きも忘れずに。
正直なところ、パックで走れる人がそこら中にいて、効率よく走ることが出来るとなると『1,200kmを走り切る』こと自体に不安な要素はあまりありません。コースも斜度10%を超える峠とかありませんし。
私の場合、残る不安要素は股におできが出来ること。国内では何もケアしないと600kmを走るだけで免疫力が落ちて、おできが出来ます。そのためこの点だけは重点的にフォローすることにしました。
具体的にはコントロールで停車するたびにアルコールシートで股を拭く、もしくはシャワーを浴びるという対策をとりましたが、PBP走行中は健康な状態を保ってくれました。帰国してからは見事におでができてしまい、、クロスバイクで数キロ移動するにも難儀しましたが。
それではその6に続きます。