【レビュー】汚れないオイルを求めて… ヴィプロス ロッサーノ(Vipro’s Rossano)
ヴィプロス社(Vipro’s)のオイル『ロッサーノ(Rossano)』を買いましたので、レビューします。粘度が低く汚れづらいので、汚れによる性能の低下が少ないことが特徴です。
■総合評価
数年前より株式会社ヴィプロスが販売する『サスペンド系』というオイルです。サスペンド系とはヴィプロス社が提唱する概念のようで、高い浸透力と高い定着性を両立したオイルとのことです。
- 非常にサラっとしており、チェーンへの高い浸透力を持つ
- その低い粘度により、非常に汚れづらい
- 潤滑性能はそこそこ
■購入動機
『チェーンの汚れによる性能低下のないオイルが欲しい』と思ったのがきっかけです。
ブルべの様なロングライドでは、600kmや1,000kmという距離も走りますし、その全てが雨ということもある過酷な環境です。ですから粘度が高く持続性のあるオイルを選択することになるのですが、そのようなオイルはチェーンが非常に汚れるのです。
同じヴィプロスの『ムオン』を使ったことがありましたが、持続性の高さと引き換えにチェーンが汚れで真っ黒になります。600kmブルベなどでも最後までオイル切れにならないのはありがたいのですが、一方で汚れの蓄積と共に性能は低下しているはず。
そこで、
- 粘度が高い(持続性は高い)が汚れるのも早いオイル
- 粘度が低い(持続性は低い)が汚れないオイル
について、どちらがロングライドで実用的なのか?を確認したくなった次第です。
■製品概要
ロッサーノの位置づけ
ヴィプロス社は自動車用やバイク用など様々な用途のオイルを販売していますが、自転車用としては2024年現在で5種のオイルを販売しています。
今回レビューするロッサーノは、ヴィプロス社が『サスペンド系』と呼ぶオイルに分類されます。サスペンド系とは『摩擦係数の小ささ(粘度の低さ)とチェーンにとどまる強さ(粘度の高さ)を両立したオイル』とのこと。
サスペンド系オイルには3種類がラインナップされており、基本となるのは『ブルーノ』です。ブルーノの製品ページには『ムオンの潤滑耐久性』『ケイテンの防汚性』を両立した『ヴィプロス』の最高傑作と書かれています。
ロッサーノはサスペンド系オイルの第2弾として、ブルーノよりも耐久性を若干落としつつ、代わりに防汚性を向上させた製品とのこと。
■レビュー
商品構成
オイル本体の他に小分け容器が付いてきます。小分け容器は遠征時などに使う想定とのこと。ロッサーノの想定走行距離は300~350km程度となっていますので、ブルべでも小分け容器が役に立ちます。
オイルは第1石油類、危険等級Ⅱとなっています。容量は62ml。小分け容器の容量は10mlとのこと。
ノズルは一般的な形状です。
注油方法
チェーンに1コマづつ注油するのですが、このオイル、謳い文句の通り粘度が非常に低いです。オイルというよりも水です。
※低粘度はヴィプロス社のサスペンド系オイル全般に共通する特徴です
粘度が低いのは浸透性が高いということでもあります。注油後はすぐに浸透剤が揮発して、潤滑成分だけがチェーンに残るとのこと。水平に傾けただけでオイルが出てきますので、注油の際は気を付けましょう。
うっかり逆さまにしようものなら、大量にオイルが出てきます。こちらはチェーンを貫通してチェーンステーにかかってしまった図。
前述の通り注油後は浸透剤が揮発するとのことなので、注油後の拭き取りは不要です。試しに拭き取りをしてみましたが、ウエスはほとんど汚れませんでした。
潤滑性能&防汚性
ここでは潤滑性能と防汚性をセットで評価します。
ヴィプロス社も、カタログでの『滑らかなフィーリング』という項目では『ムオン:星5』『ロッサーノ:星3』と評価しているほどで、ロッサーノの潤滑性能自体はほどほどです。
一方、ムオンは集塵性が高く驚くほどチェーンが汚れます。ロッサーノの利点は『汚れなさによる性能維持性』にあると思っていますので、その防汚性はいかほどか、楽しみです。
今回は正月にチャレンジした『大阪⇒東京キャノンボール』でロッサーノを使いました。距離は約515kmほどありますので、小分け容器も持参して途中で注油します。
まずは朝5時に大阪梅田の道路元標を出発。潤滑性能は最初からやや乾いた感触で、ヌルヌル感は無く、特段良いとも感じません。普通です。しかしこの製品に期待するポイントはそこではありません。
280kmあたりから油膜が無くなる感触が発生。ゴールまでに1度は注油する必要があるのは想定通りなので、停車して注油します。普段であれば注油の前にはチェーンの洗浄を行うところですが、この時点ではほとんど汚れていないので気にせず重ねて注油。小分け容器は便利ですね。
注油すると性能が復活。そのまま残り約230kmは問題なく走れました。
515kmを一気に走った感想としては、潤滑性能は普通です。もう少し滑らかさが欲しいと感じますが、防汚性と引き換えでしょうから許容範囲です。私はこのオイルを使ってキャノボを達成したわけですから、性能に不満はありません。
防汚性については謳い文句通りの高さであり、500km以上を一気に走ったにも関わらず汚れによる性能低下はほとんど感じませんでした。一定の性能が維持されるのがメリットですね。
この画像はキャノボを走った後、更に100kmを走った後(合計で約620km)のもの。
さすがにピカピカとはいきませんが、600km以上を走ったとは思えない綺麗さです。プーリーも普段であれば倍以上の汚れが蓄積しています。
1,000km以上のブルべとなると、どのオイルを使っていても途中で注油が必要になります。しかしこの汚れなさであれば、チェーン洗浄をせずに汚れの上から注油しても悪影響を最小限に抑えられると思われます。
注油の回数は増えますが、優れた防汚性によって長距離走行の際の性能低下を抑制できるオイルということですね。またチェーンに付着した汚れは研磨剤のようなものなので、チェーンの寿命を縮めます。そのため副次的にチェーンの摩耗を抑える効果もあると思われます。
■まとめ
ヴィプロス社が販売する『サスペンド系オイル』の中で、防汚性を高めたモデルです。
概ね300km程度で油膜切れを感じるようになりますので、『再注油の手間はあるが洗浄の回数は減る』という特徴をどう捉えるかによって評価が変わる製品だと思います。
個人的には、兄弟モデルのブルーノを使ってみたくなりました。ここまで防汚性は要らないので、もう少しの持続性とヌルヌル感が欲しいと感じたためです。
チェーン洗浄の環境が無いので洗浄回数を減らしたいとか、1,000km超のロングライドでチェーン洗浄する機会が無いとか、そのような場合に使い分けを行うのも良いと思います。
ブルーノはこちら。