【レビュー】セカンドグレードらしからぬ性能を誇る、iGPSPORTのスマートライト『VS800』
2024年5月にiGPSPORTから発売されたスマートライト『VS800』のレビューです。
iGPSPORTからは2024年2月に『VS1200』というライトが発売されており、VS800はセカンドグレードという位置づけ。VS1200との主な違いは、バッテリーの容量です。
それでも4,000mAhのバッテリーを搭載しており長時間の稼働が可能なほか、アプリからモードをカスタマイズ可能など後発ならではの充実した機能を高いレベルで実装しています。そのうえ価格も安い(税込7,920円、VOLT400よりも安い!)という、競争力のある製品です。
■総合評価
主な特徴は以下の通りです。VS1200の性能をほぼ受け継いでおり、ブルべなどのハードな状況から日常の通勤通学まで幅広く対応します。その他、搭載するセンサーやアプリとの連携により多機能を実現しています。
- ブルべから日常使いまで幅広く対応するスペック
- 150lmで約8時間、80lm(推定)で30時間弱という実用的なランタイム
- アプリから輝度を設定することで、ランタイムの調節が可能
- リバース充電機能を搭載してモバイルバッテリーとして利用可能
- アプリやサイコンに概ね正確なバッテリー残量を表示
- 環境光センサーを搭載し、トンネルでの自動ON/OFFに対応
兄弟モデルであるVS1200のレビュー記事はこちらから。
VS1200との使い分けですが、
- 最大1,200ルーメンが必要
- 少しでも長いランタイムが欲しい
という人は、VS1200。そうでなければVS800で十分と思います。
■入手経緯
今回はiGPSPORTさんよりVS800を提供いただきました。そのため通常は『購入動機』とするところ、今回は『入手経緯』としています。
ちなみに提供いただいたのは、サイクルモードのiGPSPORTブースに立ち寄った際のことでした。このような新製品が出ることすら聞いていなかったので驚きました。
■製品概要
スペック
主なスペックは以下の通りです。Bluetoothを搭載しておりアプリ連携で様々な操作が可能なこと、環境光センサーを搭載していること、4,000mAhの大容量バッテリーが大きな特徴です。
- 価格:7,920円(税込)※本体価格は7,200円
- 明るさ:最大800lm
- 重量:155g
- 本体材質:アルミ合金
- 本体サイズ:108×31×29mm(長さ/幅/高さ)
- 使用温度範囲:-10~50度
- 防水等級:IPX6
- バッテリー容量:4,000mAh
- ランタイム:800lm/2h、400lm/4h、150lm/8h、高輝度点滅/40h、低輝度点滅/80h
- 通信規格:Bluetooth
- 充電ポート規格:USB Type-C
- 搭載センサー:環境光センサー、加速度センサー
VS1200とのスペック比較
VS800はVS1200とスペックが非常に似ているので、比較表を作成しました。バッテリー容量が1,000mAh少ない点が最大の違いですが、重量は5g程度の差となっています。他の違いはマウント程度。バッテリー容量以外のスペックにほとんど違いがありません。
VS1200 | VS800 | |
公称重量 | 160g | 155g |
実測重量 | 160g | 156g |
サイズ(mm) | 108×31×29 | 108×31×29 |
ランタイム | 高輝度:1.45h、中輝度:4h | 高輝度:2h、中輝度:4h |
バッテリー容量 | 5,000mAh | 4,000mAh |
防水等級 | IPX6 | IPX6 |
搭載センサー | 加速度、環境光 | 加速度、環境光 |
充電ポート | Type-C | Type-C |
通信規格 | Bluetooth | Bluetooth |
使用温度範囲 | -10~50 | -10~50 |
マウント | Garmin互換 | 独自マウント |
基本の使用形態 | 下吊り | 上置き |
『1200lmの明るさが必須』という人はあまりいないと思いますので、自分の常用する明るさとランタイム、それと設置場所によって選ぶと良いでしょう。
パッケージと同梱品
パッケージはこちら。iGPSPORTの他製品と同様に白基調のシンプルなパッケージです。
パッケージ裏面には、モードごとのルーメン数とランタイムが記載されています。800lm/2時間、400lm/4時間、150lm/8時間、高輝度フラッシュ/40時間、低輝度フラッシュ/80時間とのこと。フラッシュについては輝度の関係でVS1200よりも長いランタイムとなっています。
箱の中はライト本体の他、USB Type-Cケーブル、マウント、マウント用ゴム2種、Goproアダプター、マニュアルが入っています。
マウント用ゴムの違いはここ。端の厚みが異なっています。
VS1200は下吊りが前提のため定価1,650円するM80マウントが同梱されていましたが、VS800はハンドルの上にマウントする上置き仕様です。
そのためM80ではなくキャトアイのフレックスタイト風のマウントが同梱されており、この点もVS1200との価格差の要因になっていると思われます(個人的にはフレックスタイト風マウントの方が有難いのですが)。
外観、実測重量
外観はシンプルです。VS1200では金属だった中央のラインがカーボン風に変更されています。
上部にインジケーターを兼ねた電源ボタンが1つ。ボタンの長押しで電源ON/OFF、クリックでモードの切り替え(高輝度⇒中輝度⇒カスタマイズ⇒高輝度点滅⇒中輝度点滅⇒スタンバイ)を行います。
後部は半透明の樹脂となっており、環境光センサーはこの部分に設置されています。
充電ポート
後端部にある充電ポートはUSB Type-C。フタは1mm程度の薄いゴムですが、VS1200から形状が変わっており防水性が向上しているように見えます(右がVS800)。またVS800には充放電の仕様が記載されており、INPUT/OUTPUTともに5V-2Aの仕様とのこと。
VS800では、フタに開閉用の『取っ手』が成型されており密閉度の向上に貢献しています。
ちなみに防水等級は、VS800もVS1200もIPX6。IPX6は『あらゆる方向からの強い憤流水による有害な影響がない』と定義されています(VOLT800NEOはIPX4)。
マウント部
マウントはVS1200同様に取り外しが可能です。ネジ穴の配置もVS1200と同じなので、ゆるふわーくすさんのVS1200用キャットアイマウント変換アダプターが使えます。
雨の中を走り続けるとこのネジ穴から浸水すると思いますが、VS800はマウント部が下になるので浸水の可能性は低そうです。
逆にVS1200は下吊りなのでネジ穴が上になっており、浸水の可能性があります。私は前述のキャットアイマウント変換アダプターに付け替えているのですが、アダプターに厚みがあるので多少の水は防げそうですが。
実測重量は156g(公称155g)でした。私が現在メインで使用しているCATEYEのVOLT800NEOは176gなので、20gも軽い。
マウント部は12gです。
アプリからの設定
この製品の最大の特徴が『アプリとの接続が前提である』ことです。アプリとの接続なしでも使えますが、それではこの製品の価値が半減します。
アプリとの接続後は以下のようなメニューが使用可能になり、本製品の性能をフルに活用することができます。
バッテリー残量および仮想ランタイムが表示される他、ライトの明るさ調節、オートON/OFF、オートスリープのON/OFFなどの設定が可能です。詳しくは後述します。
■レビュー
固定について
VS1200のGarmin互換マウントから、キャットアイのフレックスタイト風のマウントに変わりました。
Garmin互換の90度ターンが不要になったので有難いかぎり。マウントの細部はこのようになっており、ベルトが細いのでキャットアイのフレックスタイト用ベルである『OH-2400』が使用できます。
※オレンジ色のデザインですが、しまなみ海道モデルのOH-2400です
付属のGoproマウントを使用すると、ハンドルセンターに設置することが可能です。ただし元が上置きを前提としているので、電源ボタンが裏側になります。
ライト及びサイコンがしっかりとセンターに配置されるのは、空力的にも有難いですね。
配光について
レンズは丸形となっており、VS1200と変わりありません。
中心に光を集め周辺は2段階の明るさとする3段階の調節がなされており、これをアンチグレアと謳っています。この画像では壁に向けて水平に照射していますが、地面に向けて照射すると縦方向の楕円形状となります。
VS1200も全く同様の配光です。
アプリとの連携、カスタマイズについて
アプリに関する機能です。
先ほど紹介した通り、Bluetoothを使いアプリと接続するとバッテリー残量および仮想ランタイムが表示されます。
『ヘッドライトモード』はライトのモード切替をアプリから行うもの。モードの切り替えは本体のボタンをクリックしても行えますが、順番に切り替えることしか出来ません。アプリでは各モードを指定してダイレクトに変更することができます。
『待機する』はスタンバイモードです。ライトはOFFになりますが、センサーからの各種入力待ちの状態です。
『カスタムモード設定』はモード作成が可能なメニューです。ランドヌールにとっては、このメニューの価値が非常に高い。明るさの最小値は『10%』で、輝度は1%刻みで設定することが可能です。
そこそこの明るさを確保しつつ、状況(距離)に応じてなるべく長時間使いたいというのがブルべにおけるニーズ。『600kmなら(深夜は仮眠するため)9時間点灯すれば良いので20%にしよう』など、少しでも明るさを上げて安全性を向上させることが可能になります。
『インテリジェントな関数構成』(関数=functionの誤訳と思われます)は各種オート機能の設定です。
オートスリープで『自律性』を選択すると、何秒後にオートスリープするか設定可能です。インテリジェント感光は環境光センサーを使用したON/OFF設定です。
サイコンとの連携について
VS1200では、サイコンがiGPSPORTの『iGS630S』もしくは『BSC300』であれば、サイコンと接続してバッテリー残量およびランタイム情報を取得することが可能でした。
メーカーや代理店のサイトを読む限り、VS800に関してはサイコンとの接続に関する記載がありませんがどうでしょうか。
手元にあるサイコンで試したところ、iGS800は接続可能でした。iGS630S、iGS630は接続できず。GarminのEdge1040も試しましたが、こちらも接続できずでした。VS1200とここの仕様が異なる理由が謎ですね…。
iGS800と連携させると、このようにバッテリー残量と残りのランタイムが表示されます。スマホを取り出さなくてもランタイムが確認できるのは大変便利です。
環境光センサーによるON/OFFについて
ライトモードのカスタマイズに続いて、個人的に価値が高いと感じる機能がこの機能です。ブルべではトンネルを通ることも多いですが、トンネルに入るたびにライトのON/OFFをするのは非常に煩わしい。
環境光センサーが動作する様子を動画にしました。
実際のライドでもトンネルで使用しましたが、動画の通りにON/OFFされました。
参考として、こちらはVS1200の自動点灯時の様子の動画です。撮影のため歩いて通過していますが、トンネルに入ると絶妙なタイミングで点灯してくれます。
次が消灯時の様子です。こちらも非常にタイムリーに作動しています。
この機能に関しては、サイコンとの接続などは関係なくライト単体で動作します(設定はアプリから行います)。
ランタイムについて
ランタイムについては、公称で『800lm/2時間、400lm/4時間、150lm/8時間』とされています。バッテリー容量は4,000mAhです。
(VS1200は公称で1,200lm/1.75時間、600lm/4時間、300lm/8時間。バッテリー容量5,000mAh)
比較として、メジャーどころの製品におけるカタログスペックは以下の通り。
- VOLT800NEO(キャットアイ):200lm/12時間(4,800mAh)
- RN1500(OLIGHT):300lm/12.5時間(5,000mAh)
※RN1500が非常に優れているように見えますが、実際は300lmを維持するのは最初の30分程度であり、以降は200lm弱になることが知られています。
しかしVS1200およびVS800は明るさの調節が可能である点が大きな特徴。VS1200のレビュー記事を書いた際にテストしたところ、10%の設定(推定120lm)で約18.5時間持続しました。
VS800でも同様に10%の設定でテストしたところ、8時間の使用でバッテリーは28%減少。1時間あたり3~4%程度減少しており、単純計算で28時間程度持続する計算です。同時にテストしたVS1200は8時間で41%減少しましたので、前述の通り19時間弱という結果でした。
同じく10%の設定なのにVS1200よりもVS800の方がランタイムが長くなったのは、VS800の最大光量はVS1200の約67%に過ぎないにも関わらず、バッテリー容量はVS1200の80%です。この差がランタイムの違いにつながっていると思われます。
明るさについて
明るさについてはアプリから自由に調節可能です。VS800とVS1200の2本を装備して夜間走行をしましたが、どちらも明るさを最低の10%に設定しても意外と明るく、街中を走行するには十分でした。
配光については、水平照射した際に円形となりますので、地面に照射すると少し縦長の楕円となります。ここは人により求めるものが異なると思いますが、もう少し左右に広がりがあると嬉しいところです。
充電について
サイトの記載では、充電時間は約2hと記載されています。急速充電等の記述はありませんが、INPUT:5V-2Aの記載があります(あまり速くはない)。
通常の充電器で充電したところ、5V-1.2A程度で流れました。VS1200ではPD対応の充電器を使用したところV5-2Aで流れ、5,000mAhを約2時間で充電しました。VS800でも同様と思われますが、改めてテストします。
ライトを電源供給側とするリバース充電も可能。iGS800と接続したところ、5V-0.5Aで流れました。
■まとめ
アプリを使って任意の明るさ、ランタイムに調節が可能なライトです。調節が可能なだけでなく、150lmで8時間という実用的なランタイムを誇ります。
明るさを100lm程度に下げると20時間以上のランタイムとなります。明るい街中では明るさを下げてランタイムを最大化するという運用も容易にできます。
唯一の不安要素は防水性能(IPX6に対応はしている)ですが、これは今後のブルベでテストしていく予定です。VS1200からはマウント方法も改善されており、この点はありがたいところ。
アプリでiGPSPORTのデバイスを一括管理可能な点も大きなメリット。私はV1200と2本使っていますが、信号待ちの最中に2つまとめてさっと設定を変更出来るので便利です。
これで価格は8,000円弱というのですから、かなり競争力があると思います。VS1200との使い分けは、ハンドルへの設置方法と、1,200lmが必要かどうかによります。
VS1200に続いてブルベへの投入も決定。使わない理由がありません。VS1200のレビュー記事では『VS1200を2本使いたい』と書いたのですが、数か月でVS800が出てしまい、早々に実現することとなりました。
VS1200のレビュー記事はこちらから。