【レビュー】iGPSPORTの新たなフラッグシップサイコン『iGS800』
iGPSPORTから新たに発売された『iGS800』のファーストインプレッションレビューです。ステータス系の新機能については、使い込んで詳細が分かり次第、追記していきます。
■総合評価
軽快な動作のタッチパネルを搭載し、50時間『以上』という長いランタイムが特徴です。
- 3.5インチのタッチパネルを搭載した大画面サイコン
- バッテリーのランタイムは公称50時間以上に大幅アップ
- 心拍数などをベースとしたトレーニング指標提案機能を実装
■入手経緯
今回はiGPSPORTさんからiGS800を提供いただいきました。いつもありがとうございます。
本機種はiGPSPORT社のサイコンで初めてタッチパネルを搭載したエポックメイキングな機種です。更にiGPSPORTとしてクリス・フルームをグローバルアンバサダーに迎え、フルームのSNSに発表前のiGS800が登場するなどマーケティングにも力を入れています。
また本機種の発表は2024/4/6(土)。東京で行われた『サイクルモード東京』の初日に発表となりました。
■製品概要
スペック
基本スペックの一覧です。
- 画面サイズ:3.5インチ(320×480)
- 本体サイズ:
92×52×20mm⇒ 100×60×16.5mm - 重量:110g(実測107g)
- メモリ:32GB
- ランタイム:50時間以上
- 防水規格:IPX7
- 最大表示項目数:12
- wifi対応
- インターフェイス:USB Type-C
GarminのEdge1040と同様に3.5インチのタッチパネルを搭載していますが、Edge1040の282×470 ピクセルという縦長スクリーンに対してiGS800は320×480ピクセルという2:3の縦横比となっています。
私はEdge1040も使っていますが、個人的には縦長の画面は好みでは無かったのでiGS800の縦横比は嬉しいところです。
またwifiにも対応しているので、スマホ不要でログのアップロードが可能になりました。
iGS630SおよびiGS630とのスペック比較
タッチパネル&大画面になりましたがソフトの基本的な部分はiGS630S/iGS630と同様です。とはいえ、新機種ですから進化している点がいくつもあります。そこで、iGS800とiGS630S/iGS630のスペックを比較します。
iGS800 | iGS630S | iGS630 | |
公称重量 | 110g | 100g | 90g |
実測重量 | 107g | 96g | 90g |
サイズ(mm) | 100×60×16.5 | 92×52×16.5 | 92×52×16.5 |
ランタイム | 50h以上 | 45h | 35h |
バッテリー容量 | 確認中 | 1,700mAh | 1,300mAh |
充電の高速化 | 対応 | 対応 | 非対応 |
画面サイズ(inch) | 3.5 | 2.6 | 2.6 |
メモリ | 32GB | 16GB | 8GB |
GPS | デュアルバンド対応+衛星5つ | デュアルバンド対応+衛星5つ | シングルバンド+衛星5つ |
防水等級 | IPX7 | IPX7 | IPX7 |
価格 | 53,900円 | 39,380円 | 29,480円 |
基本的な使い勝手は一緒だが、細かな点で優れる…というのはGarminのEdge1040と540/840の関係に似ているものがあります。
まずバッテリーのランタイムが大幅に向上。恐らくですがiGS630Sと同様に、ランタイムの計測条件はセンサーの接続なし、バックライト点灯なし、と言ったバッテリー消費を最小限にしたものと思われますが、実際のランタイムは今後のブルベで確認していきます。
またiGPSPORTは以前からGarmin Edgeシリーズをベンチマークしていると思われますが、『タッチパネル』かつ『物理ボタンあり』というEdge840の主だった特徴をiGS800も備えています。搭載するメモリ(32GB)も同じですし『画面サイズの大きいEdge840』と言えそうですね。
主要スペック的には互角の状況でありながら価格は安いので、Garminほどの多機能・高価格なサイコンは要らないという人には刺さるのではないでしょうか。
開封の儀(パッケージと同梱品)
詳細な説明の前に、まずはパッケージと中身を紹介します。現時点の箱は簡素なデザインですが、こちらはベータ版です。流通時にはアンバサダーであるフルームが入ったデザインとなるとのこと。私はフルームのファンなので、箱だけ欲しいのですが…。
※4/10になって、フルームがプリントされたパッケージが納品され始めました。
箱を開けると、本体が鎮座しています。
本体の下には、以下のものが収まっています。まずは各国語のマニュアル。
更にその下にはマウント類一式、液晶保護用プラ板とクリーニングワイプ、シリコンケース、USB Type-Cケーブルです。
ステム用マウントのベースは、iGS630Sから採用された平坦なタイプです。
実測重量
実測重量です。公称重量110gに対して107gと優秀です。
外観
本体サイズはiGS630/iGS630Sと比べて全長が2mm短くなった(幅は同じ)一方、厚さが3.5mm増えています…とスペック表にはあるのですが、どう見てもiGS800の方が大きい。
まず両者のカタログ上の大きさは以下の通り。
- iGS800:92×52×20mm
- iGS630S:92×52×16.5mm
次に両者を実際に並べてみます。完全にiGS800の方が大きいですね。逆に、厚みは一緒です。
実測したところ、iGS800は全長100mm、幅60mmでした。前述の通り、厚さは同じ16.5mmです。
当初は本記事でもスペックを真に受けて『iGS630Sよりも面積が減った』と書いてしまいましたが、一回り大きくなっていますね。申し訳ありません。
ただ、大型化してもiGS630Sと比較して重量増が11gに抑えられていること、左右のベゼルが狭くなり大画面化を果たしたことは評価できると感じます。
■レビュー
iGS630Sの機能を受け継ぐ
iGS630からiGS630Sになって進化した点については、iGS800も全て受け継いでいます。主なものは以下の機能ですね。
- GPSデュアルバンド
- 自動リルート機能
- 充電の高速化
- 新しいインターフェイス
- iClimb
詳しくはiGS630Sの記事に書いています。
金属ベースの採用
最新のEdgeシリーズと同様に金属のベースが採用されました。本体側は摩耗せずマウント側が摩耗していきます。そのためマウント側のみ交換すれば良いことになります。
ステータス表示機能の実装
トレーニングの状況に応じて『運動ステータス』『フィットネスレベル』『回復状況』を提案してくれるようになりました。
例えばフィットネスレベルをタップすると、能力チャートや
VO2 MAXやFTPを表示してくれます(心拍計を装着して、アクティビティを記録することが必要)。
またアクティビティの内容に応じて回復状況を提案してくれます。
残りスタミナの状況も把握できます。
タッチパネル
最大のトピックであるタッチパネルです。操作についてはストレスを感じることなく、スマホと同様の感覚で操作可能です。レスポンスについては、Edge1040よりも優れていると感じます。
タッチパネル機能のON/OFFもメニューに設定されているうえ、物理ボタンを備えていることから雨の日でも問題ありません。
タッチパネルの恩恵を感じる場面の1つは、地図の縮尺を変更する場合かと思います。2本指でのピンチイン/アウトについてはさすがにスマホと同様とまではいきませんが、割とスムーズに動作します。
表示項目数の増加
1画面に表示可能な項目数が、iGS630Sまでの10から12に増えました。私は画面の上部に2コマ使ってDi2のシフト表示をさせているので、非常に有難い。Edge1040でも10項目まででしたからね。
■まとめ
iGS630Sの登場から半年しか経っていませんが、画面サイズを拡大しランタイムも向上した更なる新機種です。
これまでのフラッグシップであったiGS630をリニューアルしたiGS630Sが出たのが2023年の10月です。それから半年でのリリースとなりますので、iGS630Sのリリース時には既にiGS800の開発が佳境であったであろうことが分かります。
これまでタッチパネルの機種が無かったことがGarminラインナップとの違いでしたが、iGS800のリリースにより、その差はほとんど無くなりました。
ランドヌール的に有難いのは、ランタイムが大幅に向上しているにも関わらず本体が大きくなっていない点です。一等地であるハンドル上のスペースは狭いので、専有面積が増えるのは困りますからね。
iGS800の専有面積はむしろ減っており、厚みだけが増えたという点で非常に評価できます。Edge1040も同じ3.5インチの画面ですが、縦に長いので色々と装着しづらいのです。
またiGS630Sの記事には『EdgeとiGPの価格差は、リアルタイムスタミナなどのソフト機能の有無』と書いたのですが、iGPSPORTはiGS800でそれらの機能も実装してきました。それでいてGarminとの価格差は従来のまま、かなり安価となっています。
iGS800とiGS630Sの機能差は、タッチパネルの有無とリアルタイムスタミナなどの機能の有無ですから、それらの機能が不要な人はiGS630Sを、必要な人はiGS800を購入すれば良いと思います。選択肢が増えるということは、非常に歓迎すべきことだと思います。
私は2022年の3月からiGS630を使っていますが、iGPSPORTの製品は単純に機能が足りない、この機能があれば良いのに…と感じる場面はありますが、Garminのような厄介なバグに振り回されることが(今のところ)無いので、安定性も良いと感じています。第二の選択肢としてお勧めです。
廉価版という位置づけになったiGS630ならこちらから。紹介した通り、iGS630Sと決定的な違いがあるわけではありません。