【レビュー】Type-Cを備えて公称70時間以上稼働するiGPSPORTのサイコン『iGS320』
6月にiGPSPORTさんより提供いただいた『iGS320』ですが、約6か月使用しましたので改めてレビューします。
概要編、設定編の記事はこちらから。
■総合評価
- バッテリー持続時間が公称72時間。端子にUSB Type-Cを備える連続稼働時間の長さが特徴のサイコン
- パワーメーターと接続できない点を除けば、基本機能も高性能。
- とにかく充電しなくて良い。サブのロードや通勤に最適。
■入手経緯
通常は『購入動機』とするパートですが、今回はiGPSPORTさんより提供いただきました。その他、一緒に各種センサー(スピードセンサー、ケイデンスセンサー、心拍計)とマウントも提供いただきました。
発送元は、国内でのiGPSPORTの代理店である(株)日直商会さんです。
各種センサーのレビュー記事も書いています。いずれもシンプルで使いやすく、安価なのでお勧めです。
■製品概要
スペック
スペックについては『概要編』の記事に書いていますが、以下に概要を再度掲載します。
主な製品スペック
- バッテリーのランタイム:72時間(1,000mAh)
- 画面サイズ:2.4インチ
- 価格:8,855円(税込)
- 接続端子はUSB Type-C
- 防水性能:IPX7
- GNSS:GPS、GLONASS、BeiDou、GALILEO、QZSS
- 対応センサー:スピード、ケイデンス、心拍数 ※パワメには非対応
この製品の最大の特徴はランタイムの長さ。公称値ですが、なんと72時間です。また実際にバッテリーを使い切るまでの持続時間も計測しました(詳細は記事の後半に記載しました)。端子はType-Cをとなっていますので、Androidスマホとはケーブルが共用出来ます。
同梱品
パッケージの中身は以下の通り。マニュアル、マウント、USB Type-Cケーブルが同梱されています。
外観
非常にすっきりした外観です。ボタンは2つのみ。ボタンの長押しなども使いながら、操作を行います。
重量
重量は71gです。大きなバッテリーを搭載しているためか、他社の同じような大きさ/機能の機種の中ではやや重め。
接続端子
スタンダードになりつつあるUSB Type-Cです。iGS630と同様に本体裏面に端子があり、走行中の充電は少々やりづらいです。
表示項目
iGS320の機能はシンプルです。GarminのEdgeシリーズのように、項目の編集は出来ません。そもそも液晶が7セグメントディスプレイで、決まったものしか表示出来ない仕様です。
表示可能な項目は以下の通りですが、画面は全部で3画面あります。自分がどの画面にいるのかは、画面下にバーが表示されているのでそれで把握します。下記画像だと2枚目ですね。切り替えは右側のボタンで行います。
- 共通項目:時刻、気温、GPS受信状態、バッテリー残量、bluetooth接続状態、進行方向/ナビ
- 1画面目:速度、斜度、経過時間と距離、心拍数、ケイデンス
- 2画面目:平均速度、平均斜度、標高、上昇量合計、平均心拍数、平均ケイデンス
- 3画面目:最大速度、最大斜度、カロリーと積算距離、最大心拍数、最大ケイデンス
2画面目は主に平均値、3画面目は最大値を表示するページという位置づけです。心拍数、ケイデンスはそれぞれのセンサーとペアリングした場合にのみ、下から2段目の時刻が表示されている部分に表示されます。
主な情報は1画面目に集約されているため、基本的には1画面目でほぼ事足ります。画面を切り替える手間が無いというのは、楽で良いです。
設定
設定は、本体から行う項目とiGPSPORTアプリから行う項目に分かれます。
以下が本体から行う設定で、初期設定に関するものとなっています。設定モードには、ログを記録していない状態で右ボタン長押しで入ります。その後、右ボタンをクリックするたびに設定項目が切り替わります。
- スマホとの連携
- タイムゾーン設定
- センサー類ペアリング
- タイヤ周長設定
- 距離の単位設定(メートル/マイル)
以下はiGPSPORTSアプリから行う設定です。主なものを紹介します。
『ロードマップ』からは、アプリにアップされているルートにアクセス可能。ナビもここからスタートさせます。ルートはiGPSPORTSのアカウントと紐づいていますので、他のデバイス(iGS630)などとも共有されています。
『センサー』は、本体の設定メニューでペアリングしたセンサー類の設定を行います。
『アラート』は時間、距離、心拍、ケイデンスの各項目でアラートを鳴らす閾値を設定可能。
『自動機能』では、以下の項目が設定可能です。使いそうなものは、オートスタート/ストップあたりでしょうか。自動ラップの機能もあります。
設定画面の下部です。
『音声』から、ボタンをクリックした時の音のON/OFFが設定出来ます。このクリック音がうるさいので、まずここをOFFにしましょう。
『他の設定』には、ラップ機能を有効にするための設定があります。この『ボタン機能の設定』で『ラップ』を選択すると、左ボタンにラップが割り当てられます。デフォルトは『記録一時停止』となっていますので、ラップを使いたい場合はここで切り替えます。
ラップ機能の話が出たついでに、ラップ機能の紹介をします。先ほどのボタン機能の設定で、左ボタンにラップ機能を割当することが可能です。記録中に左ボタンを押すと、このようにラップが切れます。
速度表示の左側にラップのカウント数が、画面右下にラップ距離が表示されます。ラップ距離が表示されるのはボタンを押した後の数秒間だけなので、ブルべでキュー毎の距離を頼りに走行するような目的には不向きです。その場合は後述のナビ機能を使った方が良いでしょう。
■レビュー
6か月使用したレビューです。
操作性
まずボタンが2つしかありませんので、日常で使う分にはすぐに操作を覚えられます。
操作パターンはこの7つしかありません。ログの保存時に右ボタンを使うだけで、後は全て左ボタンで済みます。覚えることが無くて物足りない。
衛星の捕捉
iGS320は5つの衛星測位システム(GPS、GLONASS、BeiDou、GALILEO、QZSS)に対応しています。日本にいる限りでは5つ全てに対応している必要性は低いですが、世界中に流通させるには対応しておく必要があるでしょう。
測位完了までは、約30秒程度の時間を要します。このあたりはGPSの仕組みによるものなので、一般的な速度でしょう。
スピードセンサーとのペアリングが無い場合は位置情報を頼りに速度を表示しますが、割と精度が高く十分実用レベルです。
Edge530ではブレが大きかったので速度センサー無しでは可能な限り使いたくありませんでしたが、iGS320では加速/減速がリニアに反映されるので、ストレスがありません。
持続時間
サイコンのバッテリー持続時間は使い方や使う環境によって大幅に異なります。本製品の持続時間は公称72時間となっていますが、メーカーの謳う持続時間はかなり理想的な環境で測定した最大値と考えた方が良いでしょう。
というのも、72時間もバッテリーが持続するサイコンをブルべで使用すると確実に夜間走行にかかるわけです。当たり前ですね。夜間は自動でバックライトが点灯しますから、その分のバッテリー消費も増えます。
他にも様々なケースが想定されますが、そのような現実の使用条件を前提としたうえで『72時間持続する』とは謳っていないため、実際にはもっと少ない持続時間になるだろう…と感じていました。
代理店の日直商会のwebサイトには『フル充電から72時間のバッテリーライフは、例えて言えばパリ・ブレスト・パリなどのロングライドでも安心して使えます』とあるのですが、PBPこそ確実に夜間走行のあるシチュエーションです。その辺りを考えずに72時間持続すると考えてしまうのは、やや早計であると思います。
そこで、満充電の状態からバッテリーが切れるまで実際に何時間かかるのかを測定することとしました。日頃のクロスバイク使用時や週末の練習時にもひたすらiGS320を使い、充電はせずにバッテリー切れになるまで働いてもらいます。
約50日かかってバッテリーを使い切ったのですが、ストラバに上がったログを集計すると結果としては約36時間稼働してくれました。使用環境としては1/3が週末の練習。残りが通勤時の自宅と駅間の往復および週末の移動(近所のスーパーに買い物にいくとか)です。週末の練習は昼間のみの使用ですが、その他は夜間走行が含まれておりその間はバックライトが(自動で)点灯します。センサー類の接続は一切ありません。
夜間走行の時間のみを集計することは難しいですが、通勤での使用時において帰路は確実に夜になっていることから、1/3程度は夜間走行をしていたと思われます。すると約8時間のバックライト点灯によって、持続時間が半分となる36時間になってしまうことになります。
テスト期間が50日という長期に亘ること、時期が10月~11月末の比較的寒い時期であったことを考慮すると、温暖な時期に短期間のうちに使用すればもう少し稼働時間は増えると思われます。しかしリチウムイオン電池の自然放電は1ヶ月で1~5%程度といわれていることから、結果が大きく変わるほどではないと考えています。
このことから、ブルべで使用するには400km(制限時間:27時間)までが無充電で使用出来る範囲と言えそうです。600kmになると確実に夜間走行が入るため、多くの人は充電が必要になると思われます。
通勤など短時間で使う分には、バックライトを使っても36時間持続するというスペックは驚異的ですから非常に実用的です。実際、日々の通勤で使う程度ではバッテリー残量表示が全く減らず『いつまで続ければ良いのだ…』と地味なストレスになっていました(笑)
ナビ機能
iGS320にアプリからルートを転送するとナビが可能になります。と言ってもこの液晶画面で出来ることは限られていますので、簡易的なものです。
ルートを転送して、アプリ側でコース横のトグルスイッチを『ON』にするとナビ開始です。次の曲がり角までの残り距離と左右のどちらに曲がるかが上から2段目に表示されます。要するにキューシートのような機能ですね。
この残距離ですが、常時4つの衛星を補足しているだけあって割と当てになります。
しかしあくまでも右左折の矢印が出るだけなので、要所ではアプリでのマップと併用していくことになるでしょう。例えば左方向に2本の道が出ている5差路などがあると、どちらに進んで良いのか判断がつきません。
各種設定
右ボタンを長押しすると設定モードに入りますが、設定が可能な項目は以下の5つ。
- スマホとの連携
- タイムゾーン設定
- センサー類ペアリング
- タイヤ周長設定
- 距離の単位設定(メートル/マイル)
iGPSPORTSのサイコンはスマホ連携が前提で、アプリも割と使いやすいため、iGPSPORTSのサイコン全体の価値を底上げしていると思います。私のようにiGS630と2台使っているとアプリを共通で使用出来ますから、大変便利です。
ちなみにiOS版アプリの場合、2台のiGPSPORTSサイコンを使用している場合でもアプリとペアリング可能なのは1台とのこと(2022年10月現在)。ペアリング先の端末を変更したい場合は、いったんペアリングを解除する必要があります。解除しても設定などは保存されていますので、再度ペアリングすればすぐに元通りに使用可能です。
■まとめ
基本的な性能がしっかりしており、バッテリー持続時間も『公称72時間、バックライトを点灯させて適当に使っても40時間位はもつ』というロングライフが特徴のサイコンです。
パワーメーターには非対応であるものの、これで価格は1万円未満。パワメを使わないサブバイクや街乗りクロスバイク、ログ取りのバックアップ用途にはもってこいではないでしょうか。
パワメにさえ対応していればメインバイクに使おうと思っていたほどなので、非常にお勧めです。