【レビュー】安価で導入しやすい『iGPSPORT SR30 スマートレーダーテールライト』
iGPSPORTのスマートレーダーテールライト『SR30』のレビューです。
スマートレーダーテールライトとは、テールライトと後方レーダーが一体になった商品です。GarminのVariaシリーズがメジャーですが、ミリ波レーダーで捕捉した車両の状況をサイコン等に表示する他、ライトの機能を備えており状況に応じてライトの点灯モードが変わるなどの機能を備えています。
■総合評価
- 他社と同レベルの性能ながら、価格は安い
- ソフトの性能はGarminの8割といった印象だが、実用上の不満はない
- iGPSPORTアプリでサイコンと一括管理が可能
■入手経緯
通常は『購入動機』とするパートですが、今回はiGPSPORTさんから本製品を提供いただきました。
iGPSPORTの商品は、私もサイコンのiGS630とiGS320の2台を愛用しています。気まぐれなGarminのEdgeシリーズと異なり、非常に安定して稼働しています。iGS630も当初は機能不足が否めなかったものの、毎月のようにアップデートを繰り返し、今ではコストパフォーマンスがとても高い商品になっています。
本製品(SR30)は、これまでサイコンとその付属品(スピードセンサーなど)がメインであったiGPSPORTが、(レーダー付の)テールライトという新たなカテゴリーに進出した商品となります。
■製品概要
まずは製品概要の紹介から。
パッケージ
シンプルな造りですが平均以上のクオリティはあります。最近はどのブランドもパッケージに力を入れている印象があります。iGPSPORTも例外ではなく、ブランド力を向上させたいという意思を感じますが、それでいて価格は他社と比較して抑えめなのでユーザーとしては有難いところ。
製品構成
パッケージの中には以下の物が入っています。
- 本体
- マニュアル
- 脱落防止ストラップ
- マウント
- シートポスト取り付け用シム(2種)
- シム固定用ゴムストラップ
- 充電用ケーブル(USB Type-C)
マウントは、iGS630などサイコンと同様にGarmin互換タイプです。Garminマウントが問題なく使えます。またマウントをシートポストに取り付けるためのシムは2種。丸タイプ用とエアロ用ですね。
裏側はこのようになっています。
マウント固定用のゴムバンドは、長さ違いで3本付属しています。iGPSPORTの製品は、このゴムバンドが非常に優秀です。太くて耐久力がありながら適度に伸縮性もあり、使い勝手が非常に良い。当然ながらiGPSPORTのマウントにもGarminが付くので、マウントはiGPSPORTに置き換わってしまいました。
充電用ケーブルはUSB Type-A – Type-Cです。
本体概要
本体です。マウントはGarmin互換形状。下部には充電用端子があります。
端子はUSB Type-C。
上部にボタンがあります。長押しすると電源ON/OFF、クリックでライトのモード切り替えです。
ライト部分です。メインライトの他、左右にもライトがあり横からの視認性も高くなっています。
スペック
スペックは以下の通りです。
- サイズ:99×39.7×20.3mm
- 重量:68.8g
- ランタイム:最大25時間
- 通信:Bluetooth、ANT+
- 防水規格:IPX7
- 明るさ:点灯1…20lm、点灯2…6lm、パルス…20lm、デイフラッシュ…65lm、ナイトフラッシュ…20lm
本体重量は69gと公称通りで非常に優秀でした。
マウントとシムの重量は37gでした。本体と合計で106g程度です。
他社製品との比較
レーダー付テールライトは既に数社から製品が販売されています。SR30は後発製品となりますので、他社製品との差別化が必要になるはずです。他社製品とスペックを比較することで、そのポイントを探ってみます。
SR30 (iGPSPORT) | RTL515 (Garmin) | L508 (magene) | GARDIA R300L (Bryton) | |
価格(税込) | 16,830円 | 29,700円 | 17,490円 | 18,480円 |
寸法(mm) | 99×39.7×20.3 | 98.6×39.6×19.7 | 94×38×25 | 97×40×20.9 |
重量(g) | 68.8g | 71g | 65g | 66g |
最大ランタイム | 25h(レーダーのみ) | 16h(デイフラッシュモード) | 16h(レーダーのみ) | 24h(レーダーのみ) |
最大探知距離(m) | 150 | 140 | 140 | 190 |
検出角度(水平) | 40度 | 40度 | 40度 | 40度 |
検知相対速度(km/h) | 10~120 | 10~160 | 10~120 | 不明 |
加速度センサー | あり | なし | あり | あり |
防水 | IPX7 | IPX7 | IPX7 | IPX7 |
充電端子 | USB Type-C | microUSB | USB Type-C | USB Type-C |
大きさや重量、基本スペックでは各社あまり変わりがありませんが、1つ言えるのはGarminのハードウェアスペックがやや古いということ。しかしこの分野の商品を先駆けて開発してきた歴史から、ソフトウェアの完成度は一歩リードしている印象です(後述)。価格は断トツに高いですが。
iGPSPORTのSR30の特色としては価格の安さとランタイムの長さ。しっかり他社を研究して『スペックは遜色が無いか若干上回り、価格は安い』というラインを攻めている印象です。こうしてスペックだけ見ると優秀です。magineは価格はほぼiGPSPORTと同等ですがランタイムが短い、Brytonはランタイムは同等ですが価格がやや高い。
ちなみに、特に重要な要素となるランタイムですが、どの製品も1~2日程度の日中ライドであれば十分に運用できるランタイムを備えています。iGPSPORTのSR30やBrytonは25h程度のランタイムを備えていますので、200km(制限時間:13.5h)や300km(制限時間:20h)のブルべでも使えそうです。
しかし実際に使ううちに、ランタイムに関しては公称スペックからだけは判断できない要素があることが分かりましたので、後ほど紹介します。
■レビュー
それでは製品のレビューです。
取り付け
先ほどのマウント+シムをシートポストにゴムバンドで取り付けます。ゴムバンドは大きさ違いで3本付属していますので、ポストの太さに合うものを使います。
取り付ける際はリアタイヤと干渉しないよう、可能な限り高い位置に装着しましょう。私のシートポストはキャノンデール純正のSAVEですが、上部にカーボンポストならではのくびれがあります。最初はここを避けるように装着した結果、リアタイヤと干渉して検知精度が若干低下した印象があります。またマニュアルには、本体は垂直に取り付けるよう指示があります。
ちなみにマウントはGarmin互換形状ですが、GarminのVariaは何故か爪の位置がGarminサイコンとは90度異なっており、Variaのマウントは使えません。
背後から見ると中々の存在感です。それなりにシートポストの長さが無いと取り付けは厳しいでしょう。
サイコンとのペアリング
ペアリングです。まずはGarminのEdge530とペアリングしてみます。いつもの様にセンサーを検索すると、レーダーとライトが見つかります。ライトはペアリングしなくても使えますが、レーダーはペアリングしないとサイコン画面に車両が表示されません。
ペアリングすると以下の様な警告が表示されます。冒頭で『この製品はGarmin製品では無い』と言われます。後半は『しっかり後ろを見ろ』という内容。
ペアリングが完了すると右上にレーダーのアイコンが表示されます。
iGPSPORTのiGS630とも接続しました。2台のサイコンと同時接続が可能です。iGS630の方が情報量が多いですね。ANT接続であること、個体番号はレーダーもライトも同じであることが分かります。接続時にGarminの様な警告は出ませんでした。
iGS630の場合は画面中央にレーダーのアイコンが表示されます。
アプリについて
SR30もiGPSPORTアプリとの連携が可能です。出来ることは画像の通り。
まずは車両の表示です。サイコン画面にアイコンで表示されていた車両が、スマホの画面に車のイラストで表示されます。
レーダーの表示に対応したサイコンは、一定以上の高機能モデルになります。対応していないサイコンを使っている場合や、サイコンは不要なのでレーダーのみ使いたいという場合に、アプリを使うのは便利です。
次にファームの更新と、オートスリープの設定です。これだけでは少々寂しいので、せめてライトモードの変更やブレーキランプのON/OFF、車両検知時の点滅動作ON/OFFもスマホから出来るようにして欲しいところ。
レーダーの表示について
ペアリングが完了したので実走です。まずは画面上での表示。
これはGarminを始め他社でも同様ですが、車両を検知するとアラートが鳴ると共にオレンジ色のレーンと車両を示すアイコンが表示されます。アイコンは検知した車両の数だけ(最大8台)出ます。SR30とiGS630のiGPSPORTの組み合わせの場合は矢羽根のマークがアイコンです。左右どちらに表示するかは、センサーの設定から変更することが可能です。
速度差が大きい場合はレーンが赤くなります。
検知した車両が消えた場合はレーンがグリーンに変わったのち、数秒後にレーンも消えます。
レーダーの仕様についてですが、峠道のような曲がりくねった道ではレーダーの検知範囲から外れることがあるため、すぐに車両をロストしてあまり役に立ちません(後ろから車が来たことが分かる点は有難い)。
電波は道路の形状に沿って曲がってくれるわけではありませんから、ここはいかんともし難い点です。
レーダーの使い勝手について
次に使い勝手について。
私がこの手の製品を今まで購入しなかった理由にもなるのですが、車の多い市街地では後方から車両が続けて来るため、アラートが出続けます。こちらも常に車両が来るものという前提で走行しているため、レーダーを使用するメリットは薄いです。
2点目として、検知する相対速度は10km/h以上であるため、10km/h未満になると検知していた車両をロストします。例えば後方からトラックが来た場合、対向車がいるとトラックは自転車を追い越し出来ずに等速で走行することになります。
するとレーダーは車両がいなくなったと判断し表示は消えます。しかし自分の真後ろにはトラックがいるわけです。これは仕様なので仕方が無いのですが、mageneやBrytonとも同様とのこと。レーダーだけですと背後の車両の有無の判断はつきませんので、ミラーを併用するのが良さそうです。
ちなみにGarminだけは速度差が0km/hになってもロストすることなく画面に表示され続けるとのこと。マニュアルにも他社と同様に『検知する車両の相対速度は10~160km/h』と明記されているのですが、判定ロジックが優れているようで、価格の高さを説明できる付加価値があると言えます(それにしても高いとは思いますが)。
この『速度差が0km/hの車両の扱い』については難しい点と思われます。例えば信号待ちで自分の後方に車両がいる場合、レーダーとしては捕捉しているわけです。しかし『動かない物体(路上駐車の車両など)』を全て車両として表示してしまうと、それも不都合があるでしょう。そのため速度差が一定以上ある物体を表示するというロジックを組んでいると思われますが、今度は前述の様な不都合が生じます。
同様に、後ろに車を引き連れたまま信号待ちに入ると検知していた車はロストします(信号待ちの最中に新たに車列に加わった車は認識されます)。走り出しても速度差が少ないため再度表示されることはありません。
このような仕様であるため、特に市街地においては目視やミラーを併用して背後の状況を把握した方がベターだと感じました。
検知精度について
車両を検知する精度ですが、見通しの良い状況ではスペック通りに150m程度から捕捉しているますし、検知漏れもありません。150mというのは車がミラーに映っていても気付かない距離なので、早めに認知できるのは助かります。
一方、後方に車がいないのにアラートが出る場合があります。パターンとしては恐らく2通りあって、1つ目は対向車とすれ違った場合に出ることがあります。2つ目は車両がいないのに出るパターン。
いずれのパターンでも車両のアイコンが表示された後、すぐに消えてしまうため誤検知であることが分かります。検知漏れがあるよりは余程良いですし、後方から接近する車両に関しては検知漏れがありませんので、慣れるとさほど困りません。
しかしアラートのたびに画面に視線を移動することになりますし、Garminは同様の誤検知がほとんど無いとのことなので、ここは改善して欲しい点です。
またミリ波の特性として、雨中で使用すると電波が吸収されて精度が低下すると思われます。
ライトについて
ライトは以下の6つのモードを備えています。モードは本体上部のボタンを押すたびに変わります。
- 点灯1:中(20lm)
- 点灯2:弱(6lm)
- パルス:弱~中(6~20lm)、ゆっくり点滅
- ナイトフラッシュ:中(20lm)、通常速度で点滅
- デイフラッシュ:強(65lm)、ゆっくり点滅
- レーダーのみ:点灯なし
ランタイムはレーダーのみモードで約25時間、デイフラッシュで約20時間とされています。
また車両を検知すると数回のフラッシュが入ります。その他、ブレーキを検知すると数秒点灯し、ブレーキランプとしても機能します。これらの機能はレーダーのみモードでも作動し、OFFにすることが出来ません。そのため実際のランタイムは車両検知やブレーキの回数分だけ短くなります。
SR30のセールスポイントとして25時間のランタイムを謳っているので、ライトを完全にOFFに出来ない点は改善して欲しいところです。mageneでは、アプリを使ってモードごとに車両検知とブレーキライトのON/OFF設定が可能なので、iGPSPORTSでも同様のアップデートを期待します。
ライトとレーダーが一体になっている点はスマートですが、ブルベで使用するにはとにかくランタイム。リアライトは売るほど持っているので、レーダーだけ使用したいという人も多いはずです。実際、GarminにはRVR315というレーダーのみのモデルがあります。
逆に1日で終わるライドや、通勤で使う分にはレーダーとライトが一体になっているのは非常に有難いです。せっかくの便利な製品なので積極的に使っていきたいですが、ブルべで使うためにもライトの完全OFF機能はぜひ実装して欲しいです。
■まとめ
iGPSPORTからリリースされたスマートテールライトです。
リアレーダーを使用するのは初めてでしたが、車両の接近をいち早く教えてくれる点はこれまでに無い大きなメリットでした。ミラーを使っている私からすると『後方から接近する車両の有無』を確認するために定期的にミラーを目視する必要が無くなりましたので、安全性の向上に寄与していると感じます。
また機能面ではGarmin以外の競合他社と比較しても遜色はなく、それでいて価格が最も安いです。
現時点(2023/09)ではソフト面、機能面を改善すると非常に競争力のある商品になると感じます。iGS630と同等に…とまでは要求しませんが、開発力の高さで早急に対応して欲しいところです。ハード面での差別化は難しいと思われますので、この製品ジャンルはソフト面での勝負になるでしょうから、ぜひ頑張っていただきたい。
個人的にはiGS630での対応の早さを見ていますので、もしこのジャンルの製品を購入するのであれば今後の機能改善が最も期待出来るという点で、個人的にはiGPSPORTがお勧めです。