【レビュー】カスタマイズ可能なアプリが優秀!『Magene L508レーダーテールライト』
グロータック社が販売するMageneブランドのレーダーテールライト『L508』のレビューです。GarminやiGPSPORTSとの比較も行います。
レーダーテールライトとは、その名の通り後方レーダーとテールライトが一体になった商品です。GarminのVariaシリーズがメジャーですが、ミリ波レーダーで捕捉した車両の状況をサイコン等に表示する他、安全性を向上するためテールライトとしての機能も備えており、状況に応じてライトの点灯モードが変わるなどの機能を備えています。
■総合評価
- レーダーテールライト製品の中では価格が安い
- 性能はGarminよりやや劣るが、実用上の不満は無いレベル
- ライト機能を完全にOFFにしてレーダーのみで運用出来る
※機能は2023年10月時点のファームウェアバージョン:0.114に基づいています
■入手経緯
2つ目のレーダーテールライトとして購入しました。
最初に入手したiGPSPORTのSR30では、ライト機能を完全にOFFにすることが出来ません(様々な事情でOFFにすることは出来ないらしい)。車両検知時にライトが数回点滅するという仕様があるのですが、車両を検知する度に光り続けてランタイムが短くなります。
交通量の多い場所ではひたすら光っていることになり、ランタイムが読めないというデメリットがありました。
こちらとしてはライトは山ほど持っているので、後方の車へのアピールはライトに担当させたい。レーダーは、その多いとは言えないバッテリー容量をレーダー機能のみに使って欲しいのです。
というようなことをX(Twitter)でつぶやいていたところ、Mageneであればライト機能を完全にOFFにすることが可能ということを聞き、購入した次第です。
ちなみにGarminにはVaria RVR315というライト機能なしのレーダーに特化した製品があります。しかしランタイムは最大で約7時間と、ブルべで使うには少々短すぎるのです。
■製品概要
まずは製品概要の紹介から。
Mageneとは
Magene社は中国のメーカーで、今回の商品の他にTPUチューブ、ホイールやパワーメーター、サイコンなどを販売しています。Magene社の日本における代理店がグロータック社です。
グロータック社のサイトを見ると、Mageneブランドの商品としてレーダーテールライト、パワーメーター、スピード/ケイデンスセンサー、TPUチューブが掲載されています(2023年10月現在)。
パッケージ
パッケージです。本体のカラーと合わせ赤と黒を基調としたシンプルな造りです。
パッケージにプリントされている本体は実物大です。
製品構成
パッケージの中には以下の物が入っています。
- 本体
- マニュアル
- 脱落防止ストラップ
- マウント
- シム固定用ゴムストラップ
- 充電用ケーブル(USB Type-C)
マウントはGarmin互換タイプです。ただしGarminのVariaシリーズとはマウントの向きが90度異なるため共用は出来ません。マウントのベースは、丸ポストとエアロポストのどちらにも対応可能な形状をしています。
マウント固定用のゴムバンドは長さ違いで3本付属しており、充電用ケーブルはUSB Type-A – Type-Cです。
本体概要
本体です。光沢のあるブラックで高級感があります。円形のライトの中央に電源とモード切替を兼ねたボタンが配されています。
裏面です。下部には充電用端子があります。技適を取得していることを示すマークもプリントされています。
端子はUSB Type-Cです。
ライト部分です。本体の左右は大きく面取りされたラウンド形状になっており、左右からの視認性も多少はあります。
スペック
スペックは以下の通りです。
- サイズ:94×38×25mm
- 重量:65g
- ランタイム:最大19時間
- 通信:Bluetooth、ANT+
- 防水等級:IPX7
- 明るさ:ソリッド、クイックフラッシュ…6~40lm、フラッシュ、パルス、プロトン、ローテート…6~20lm
※明るさはMagene本国サイトの表記による。
本体重量は63gと公称よりも軽量で優秀です。
マウントとシムの重量は19gでした。本体と合計で82g程度です。
他社製品との比較
レーダー付テールライトは既に数社から製品が販売されています。メジャーなGarminの他、競合製品とのスペックを比較します。
L508 (Magene) | RTL515 (Garmin) | SR30 (iGPSPORT) | GARDIA R300L (Bryton) | |
価格(税込) | 17,490円 | 29,700円 | 16,830円 | 18,480円 |
寸法(mm) | 94×38×25 | 98.6×39.6×19.7 | 99×39.7×20.3 | 97×40×20.9 |
重量(g) | 65g | 71g | 68.8g | 66g |
最大ランタイム | 19h(レーダーのみ) | 16h(デイフラッシュモード) | 25h(レーダーのみ) | 24h(レーダーのみ) |
最大探知距離(m) | 140 | 140 | 150 | 190 |
検出角度(水平) | 40度 | 40度 | 40度 | 40度 |
検知相対速度(km/h) | 10~120 | 10~160 | 10~120 | 不明 |
加速度センサー | あり | なし | あり | あり |
防水 | IPX7 | IPX7 | IPX7 | IPX7 |
充電端子 | USB Type-C | microUSB | USB Type-C | USB Type-C |
大きさや重量、検知可能な距離など基本スペックでは各社あまり変わりがありません。まず感じるのはGarminの仕様がmicroUSBと若干古く、価格が高いこと。しかしGarminは使っている人の評価が非常に高く、価格が高いなりに他の3社には無い高性能を実現しているとのことです。
Mageneの特色としては、価格の安さと軽量さ。価格はiGPSPORTとBrytonで1,500円程度の差なので、正直なところ横並びです。逆にランタイムは16時間と短めになっているのですが、アプリの設定でライトを完全にOFFにすることで、レーダー以外のバッテリー消費を最小限に抑えることが可能です。
iGPSPORTとBrytonは20時間以上のランタイムがありますが、ライトを完全にOFFにすることが出来ません。検知する車両の数やブレーキランプの点灯回数により、かなり変動することが想定されます。
■レビュー
それでは製品のレビューです。
取り付け
先ほどのマウントをシートポストにゴムバンドで取り付けました。ゴムバンドは大きさ違いで3本付属していますので、ポストの太さに合うものを使いましょう。
取り付ける際はリアタイヤやフェンダーと干渉しないよう、可能な限り高い位置に装着しましょう。私はシートポストにキャノンデール純正のSAVEを使っているのですが、上部にカーボンポストならではのくびれがあります。最初はここを避けるように装着した結果、リアタイヤと干渉して検知精度が若干低下した印象があります。またマニュアルには、本体は垂直に取り付けるよう指示があります。
本体の長さが約10cmあり、ミリ波の受発信部が本体下部であることから、シートポストがそれなりに出ていないと(Mageneに限らず)使えないアイテムであると言えます。
サイコンとのペアリング
この手の製品は検知した車両をディスプレイに表示します。そのため基本的にサイコンとペアリングして使うことが前提です。スマホアプリに検知した車両を表示させることも可能ですが、せっかくのスマホの大画面をレーダー専用にするにはあまりにも勿体ないので、おすすめはしません。
まずはGarminのEdge530とペアリングしてみます。いつもの様にセンサーを検索すると、レーダーとライトが見つかります。製品としては一体化していますが、センサーとしては別々に認識されます。ライトはペアリングしなくても機能しますが、レーダーはペアリングしないとサイコン画面に車両が表示されません。
ペアリングすると以下の様な警告が表示されます。冒頭で『この製品はGarmin製品では無い』と言われます。後半は『しっかり後ろを見ろ』という内容。
ペアリングが完了すると右上にレーダーのアイコンが表示されます。
センサー一覧画面から詳細メニューを表示させると、いくつかの設定が可能です。検知した車両を画面の左右どちらに表示させるか、検知時に音を鳴らすかなど。音を鳴らさない設定も可能ですが、車両の接近に全く気付かないためお勧めはしません。
iGPSPORTSのiGS630とも接続してみました。iGS630の場合は画面中央にレーダーのアイコンが表示されます。
wahooのELEMNT ROAM V2と接続した場合です。wahooは画面の解像度が高いため、車のアイコンが表示されます。
アプリについて
L508はMageneアプリとの連携が可能です。出来ることは以下の通り。
- スマホをレーダー画面として使用
- 各ライトモードの設定
- オートスリープなど省電力設定
- ファームウェアアップデート
各ライトモードの設定は以下の通り。明るさやレーダー機能、車両検知時のWarning、ブレーキライトの有無を設定可能です。
レーダーのみのモード(シングルレーダーモード)でも、この通り車両検知時のWarning、ブレーキライトの有無を設定可能です。
Mageneの本国サイトを見ると『You can turn off warning light to stop it flashing when vehicles approach successively. But it still flashes when it detects rear vehicle approaching for the first time out of safety concern.(車両が連続して接近した場合に、警告灯の点滅を停止することができます。 ただし、安全性を考慮して、初めて後方車両の接近を検出した場合には点滅します。)』という記述がありますが、実際に確認したところWarningライトは完全にOFFすることが可能です。
レーダーの表示について
画面上での表示についてです。
これはGarminを始め他社でも同様ですが、後方から接近する車両を検知すると、アラートが鳴ると共にオレンジ色のレーンと車両を示すアイコンが表示されます。アイコンは検知した車両の数だけ(最大8台)出ます。画像のサイコンはiGS630ですが、矢羽根のマークが車両を示すアイコンです。左右どちらに表示するかは、センサーの設定から変更することが可能です。
速度差が大きい場合はレーンが赤くなります。
検知した車両が消えた場合はレーンがグリーンに変わったのち、数秒後にレーンも消えます。
ちなみに峠道のような曲がりくねった道では、車両がレーダーの検知範囲からすぐに外れてしまうため、あまり役に立ちません。検知するとアラートは出ますので、後ろから車が来たことが分かる点は有難いですが。
電波は道路の形状に沿って曲がってくれるわけではありませんから、ここはいかんともし難い点です。
レーダーの使い勝手について
次に使い勝手について。
後方から車両が接近すると音とサイコン画面上のアイコンで知らせてくれますので、中々便利です。国道など大きな道では、後ろから高速で車に追い越される際は非常に怖いですが、予め接近が分かっていれば心の準備が出来ますし、少しでも端に寄っておくことも可能です。
また住宅街のような細い道では接近する車両に気付くのが遅れる場合もあります。そのような状況でも、120mも離れた車両を検知してくれますから非常にありがたいアイテムです。
レーダーの理想と現実
次に実際に使用して感じた、理想と現実的な念頭に置いておくべき事項を2つ。
1つ目は私がこの手の製品を今まで購入しなかった理由にもなるのですが、車の多い市街地では後方から車両が連続してやって来るため、ひたすらアラートが出続けます。
市街地を走る時は、レーダーが無くとも『常に車両が来るもの』という前提で走行しているため、レーダーを使用する費用対効果は低いと感じます。私はバーエンドに付けるミラーを使っているためそれで事足りてしまう感じですが、たまに車が途切れた時、次に車がやって来たことを知らせてくれるのは有難いと感じます。
2つ目として、検知する相対速度が10km/h以上であることです。ということは、相対速度が10km/h未満になるとそれまで検知していた車両をロストするということです。
例えば片側1車線の道で後方からトラックが来た場合、対向車がいるとトラックは自転車を追い越し出来ずに自転車と等速で走行することになります。
するとレーダーは車両がいなくなったと判断し表示は消えます。しかし自分の真後ろにはトラックがいるわけです。これは仕様なので仕方が無く、iGPSPORTSやBrytonも同様の挙動です。レーダーのみでは背後の車両の有無の判断はつきませんので、ミラーを併用するのが良さそうです。
同様に、後ろに車を引き連れたまま信号待ちに入るとそれまで検知していた車は全てロストします(信号待ちの最中に新たに車列に加わる車は検知されます)。再び走り出しても、速度差が少ない場合は改めて検知されることはありません。
前述のような状況で対向車がいなくなると、自分の後ろに付いていた車両が加速して自車を追い越しするような場面があります。その場合、速度差によっては画面に再度表示されます。
このような真後ろにいる車両から追い越しされる場面でも割と再検知してくれるので、検知する相対速度の最低ラインは10km/hではなく、7~8km/hくらいからなのでは?と感じています。iGPSPORTSのSR30の場合は、いったん消えた車両が再度検知されることはありませんでした。
またGarminユーザーの話を聞くと、速度差が0km/hになってもロストすることなく画面に表示され続けるとのこと。Garminのマニュアルにも他社と同様に『検知する車両の相対速度は10~160km/h』と明記されているのですが、判定ロジックが優れているようで価格の高さを説明できる付加価値があると言えます。
このような仕様であるため、特に市街地においては目視やミラーを併用して背後の状況を把握した方がベターだと感じました。
検知精度について
車両を検知する精度ですが、見通しの良い状況ではスペック通りに120m程度から捕捉してくれますし、検知漏れもありません。120mというのはミラーに映っていても気付かない距離なので、早めに認知できるのは助かります。
一方、後方に車がいないのにアラートが出る場合があります。アラートと共に車両のアイコンが表示された後、すぐに消えてしまうため誤検知であることが分かります。検知漏れがあるよりは余程良いですし、実際に後方から接近する車両に関しては検知漏れがありませんので、慣れるとさほど困りません。
iGPSPORTSのSR30も誤検知はしばしば発生するのですが、MageneはiGPSPORTS以上に誤検知が多いと感じています。自分の他に誰もいないサイクリングロードを走っていても、アラートが鳴る場合があります。
しかしこれは両方の製品を使い比べて初めて分かる程度の違いなので、Mageneしか使わないという人であれば『Garmin以外はどれもそれなりに誤検知がある』と割り切るしか無いと思います。
しかしアラートのたびに(1~2秒ですが)画面に視線を移動することになりますし、Garminは同様の誤検知がほとんど無いとのことなので、ここは改善して欲しい点です。
またミリ波の特性として、雨中で使用すると電波が吸収されて精度が低下すると思われます。
ライトについて
ライトは以下の6つのモードを備えています。スペック欄にも書きましたが、モードと明るさは以下の通り。モードは本体上部のボタンを押すたびに変わります。
- ソリッド、クイックフラッシュ…6~40lm
- フラッシュ、パルス、プロトン、ローテート…6~20lm
それぞれのランタイムは以下の通りです。
- ソリッド:4~11h
- クイックフラッシュ:15~18h
- フラッシュ、パルス:11~13h
- プロトン:10~16h
- ローテート:10~12h
- レーダーのみ:19h
車両を検知すると、車両へのWarningとしてライトが6回点滅します。車両へのWarningについては、Mageneの本国サイトには『※車両が連続して接近する場合、警告灯の点滅を停止することができます。ただし安全性を考慮して、初めて後方車両の接近を検出した場合には点滅します。』とありWarningライトを完全にOFFにすることは出来ない旨の記述があります。しかし私が確認したところ、アプリからOFFにしていればWarningライトは一切点滅しません。
また加速度センサーを搭載しているためブレーキを検知すると数秒点灯し、ブレーキランプとしても機能します。ブレーキランプは動作がかなり怪しい(ちょっと段差に突っ込んだだけでも点灯するが、実際にブレーキをかけると点灯しなかったりする)ので、とりあえずOFFにしておいた方が無難です。
iGPSPORTのSR30やBrytonのR300Lではこれらの機能を完全にOFFにすることが出来ないため、発動するたびにバッテリーが消費されていきます。ここはMageneの利点といえます。
リアライトは売るほど持っているので、レーダーだけ使用したいという人も多いはずです。レーダーのみのモードで19時間のランタイムがあれば、ブルべでも300kmまでならどうにか使えると思います。400kmや600kmでも、1度充電すれば使えそうですね。
■まとめ
グロータック社が販売するMageneブランドのレーダーテールライトです。
車両の接近をいち早く教えてくれるという、これまでに無い大きなメリットを提供してくれます。ミラーを使っている私からすると『後方から接近する車両の有無』を確認するために定期的にミラーを目視する必要が無くなり、車両の接近にいち早く気付けるようになりましたので、安全性の向上に寄与しています。
また機能面ではGarmin以外の競合他社と比較しても遜色はなく、ライト機能を完全にOFFにしてランタイムを延長することが可能な点もポイントです。
GarminやiGPSPORTはレーダーの他にサイコンなども展開しており1つのアプリでまとめて管理できる点がメリットですが、Mageneはこの製品のためにアプリを増やす必要がある点がデメリットでしょうか(大したことでは無いとは思いますが)。
現時点ではGarmin以外では最も使い勝手に優れる製品だと言えますので、興味がある方は購入されても良いと思います。