油圧ディスクブレーキを1年間使ってみて。リムブレーキは消えゆく運命なのか①
ディスクロードを買って1年4か月ほどが過ぎました。思う事をつらつらと書いてみます。
■ディスクロードを買って1年過ぎました
思い切って買って良かった
油圧ディスクのロードを買ってから1年4か月ほどが経過しました。新しい相棒のシナプスとは色々な場所に行きましたが、思い切って買ってよかったと思う事ばかりです。
これは『自分の買った商品を否定したくない』というバイアスが働いているせいも多少はあると思いますが、リムブレーキ時代にはブレーキについては色々不満もありました。しかし『これしか選択肢が無いから仕方ないよな』と諦めていた部分が大きかったのですが、ディスクブレーキになった事でそれらのネガティブ面が見事に解消されてました。
このあたりについては、次回書く予定です。
進む油圧ディスク化
2020年モデルも各ブランドから徐々にリリースされていますが、ディスクロード化がますます進んでいます。去年は『リムブレーキで十分』『ディスクブレーキなんてロードに必要ない』という方が大勢いたのですが、今では同じ人が『次はディスクロードを買う』と言っていたりするほど一般への普及が進みました。
途中で意見が変わることは自然な事なので構わないのですが、それ程までに消費者の意識がリムブレーキからディスクブレーキに変わったという事でありましょう。もはや『一時的なブーム』と思っている人はいないと思います。
メーカーとしてもフレームを2種類作り分けるのはコストばかりかかりますから、リムブレーキはさっさとやめたかったはずです。ただしそのタイミングを見誤ると『リムブレーキ版が欲しかった』というユーザーを他社に奪われてしまいます。
ディスクブレーキへの一本化で獲得出来る顧客と失う顧客、(リム版とディスク版を両方開発した場合に)発生する開発費とプロモーション費用を天秤にかけて、ディスクに一本化の方が利益が出る!となれば、商品ラインナップにおけるディスクブレーキ化を推進してくるはずです。
⇒2021/05追記:既にグランツールでは、リムブレーキモデルに乗るのはチームイネオスのみとなってしまいました。しかしリムブレーキのドグマ(ピナレロ)に乗るベルナルがマリアローザという展開。これを見てもディスクブレーキが全ての面で優れているからディスクに一本化されるのではなく、両方開発しても商売にならないのでディスクに一本化される面が強いのだと思います。
⇒2021/09追記:シマノのR9270系デュラエースがリリースされました。リムブレーキモデルは販売されるものの、ブレーキキャリパーについてはR9100系が型番変更されてそのまま使用することになります。開発が終わってしまいました。
ということで、ディスクロードの道筋が見えたところでリムブレーキさんの今後について考えてみようと思います。
■リムブレーキの未来
ロード用のリムブレーキは
このタイトル自体がおかしな話ですが、所詮は自転車に付くブレーキなんですから、止まれれば何でも良い訳です。
しかしロードバイクでは長年…それこそ100年近くリムブレーキの時代が続きました。私もあのシンプルな形状は大好きです。美しいですよね。残念ながらディスクブレーキにそんな要素は一切ありません。しかしとうとうディスクブレーキがリムブレーキにとって代わるかどうか、という時代になってしまいました。
一部のブランドでは既にトップグレードのモデルにリムブレーキの設定がありません。ブランドも商売ですから都合があるとは言え、ディスクブレーキの必要性を感じていない人には迷惑な話です。
今までの動きを観察している限りでは、傾向としてスペシャライズドやトレックなどの大きなメーカーはトップグレードについてはディスクロードのみになっていくでしょうが、ピナレロやデローザなどのイタリアンブランドはしばらくリムブレーキのモデルを残していくと思われます。2021年のグランツールでも、チームイネオスはリムブレーキのドグマを使っていますね。
するとリムブレーキが欲しい人は、買えなくなる訳ではないけれども選択肢が狭まってしまいます。これはホイールにも同様の事が言えると思います。リムブレーキのロードバイクが消滅する事は無いでしょうが、今までの様にトップグレードでは買えなくなってくるという事ですね。
またトップグレードが出なくなるということは、進化も停滞気味になるということです。これまでリムブレーキのフレームに対して投入されていた研究開発費は、ディスクブレーキ版のフレームに投入されることになります。
シマノはいつまでデュラグレードを出してくれるのか
すると問題はコンポメーカーが…要するにシマノがいつまでデュラグレードのリムブレーキを真面目に開発し、リリースしてくれるのか?ということです。
僕らのシマノが『売れなくても関係ない。制動力の向上と軽量化を目指して50年後もDURA-ACEのキャリパーブレーキを開発し続ける。』と言ってくれるでしょうか?
現実的にはシマノとしても売れるなら開発するでしょうが、大手ブランドはディスクブレーキに舵を切ってしまったので『リムブレーキは先細りだな』と考えていると思います。
それどころか、ヘタすると10年後はみんなe-bikeに乗っている気もします。そうするとブレーキの方式が…なんて話はどうでも良くて、『どこまで機械に頼るのか?』というもっと本質的な議論がなされていることでしょう。e- bikeは絶対普及しますよね。大容量バッテリーを積んでいますから、ライトもサイコンもパワメにもDi2にも電力を供給可能です。外部出力機能を付けたらスマホにも充電出来てしまいます。
モーターユニットは無くても良いので、ダウンチューブにe-bikeと同じバッテリーを積んだロングライド向けの『電力の心配が一切ない』フレームとかあったら欲しいです。例えば800ルーメンのライト2灯を20時間(2晩)点灯し続けられるとしたら?リアライトも昼間から点灯出来て安全ですし、サイコンもスマホもバッテリーの心配なし。電力の心配が無ければナビも大画面に出来ますよね。今でも、ロングライドする人は20,000mAhのデカいモバイルバッテリーを持って走っているじゃないですか。それをダウンチューブに内蔵して欲しい。
話が逸れましたが、デュラエースが12速化されるであろう次のモデルチェンジ(恐らく2021年)で早くもキャリパーブレーキが無くなるのか、それとも更に次のモデルチェンジなのか。さすがに来年(モデルチェンジがあるとして)キャリパーブレーキがデュラエースのラインナップから落ちるという事は無いと思っていますが、更にその次のモデルチェンジ(4年周期なので、2025年?)では、設定が無くなる可能性は大いにあるでしょう。
⇒2021/05追記:どうやら次期デュラエース(R9200)は、変速についてはDi2のみの設定になりそうです。果たしてブレーキはどうなるのか。
⇒2021/09追記:リムブレーキは無くならなかったですが、新規の開発は止まってしまいましたね。これは更に次期モデルのデュラエースでは、完全に油圧ディスク1本になってしまいそうです。
その点、カンパさんはレコードでもしばらくはキャリパーブレーキを出してくれるかも知れません。リムブレーキを使いたい人はカンパ派に今の内に転向するのが良いかも知れません。
結局はシマノ次第
もしデュラエースグレードのキャリパーブレーキが無くなってしまったら、いかにデローザやピナレロがリムブレーキのモデルを作りたくても、トップグレードにアルテグラのキャリパーを付けるわけにはいかないと思われます。
するともうトップグレードのロードバイクでリムブレーキというのは、完全に無くなってしまいます。ひょっとすると、現行のR9100系のキャリパーブレーキ(BR-R9100ですね)だけ継続して販売されるかも知れません。
MTBでは
ちなみに既にディスクブレーキに移行しているMTBの世界ですが、Vブレーキが全盛だった頃にはやはり『ディスクブレーキなんて必要ない』という人が一定の割合でいました。しかし実際はあっと言う間にディスクブレーキに置き換わってしまい、XTRにはVブレーキの設定なんてとっくの昔にありません。デオーレXT以下のグレードにはまだ普通にありますが、仕上げなどはかつてのXTRのVブレーキには及びません。
ということで、次のデュラエースのモデルチェンジではリムブレーキがラインナップに生き残ると思いますが、さすがにその次のモデルチェンジには消える可能性が高いと思いますし、各ブランドのラインナップからはもっと早く消えると思います(今ですらそうなので)。
ユーザーは難しい判断を迫られますが、デュラのキャリパーが好きな方は今の内にいくつかストックしておく必要があるかも知れませんね。ちなみに私の家にも7700系のデュラエース一式がまだあります。高性能なうえに頑丈なので、全く壊れないんですよね。
2020/04/26追記:サイクルスポーツ2020年6月号の特集『ミドルグレードディスクブレーキ ロードバイク特集』がありました。スズキのSさんが安井さんと共に登場していますが『プラットフォームは2つ共存することはない』と言っていたのが印象的でした。雑誌の特集ですからこの様な発言になるのは当然としても、発言自体はもっともだと思います。
とにかく、市場の大きさが決まっている以上、メーカーとしてはどちらも最高のものを開発し続けるのは難しいという現実的な問題があるのです。これはもう好きとか嫌いとか、必要とか不必要とかの話ではありません。この手の話が出るたびに『やはりリムブレーキが優れている』などと言う人がいますが、ブレーキシステムとしてリムブレーキがレースに向いていたとしても、ディスクブレーキに一本化されてしまうのです。スペシャのS-WORKSターマックにリムとディスクの設定を作っても、2倍売れないからです。
その②はこちらから。
ついにTREKがリムブレーキをやめると宣言しました。
現在、過渡期のクイックリリースタイプのワイヤー式ディスクブレーキの折り畳みに乗っていますがリムブレーキよりも制動が高く、街乗りでの信頼感は高いです。油圧式は高いからと遠慮する人も安いグレードでの機械式のディスクブレーキで恩恵を得ればリムブレーキよりもとっさでの瞬間にありがたさを体感できると思います。
ただやはりハイエンドのリムブレーキ型は消えると思いますがシマノで言う105グレード以下は両立して存在するのではないでしょうか
ただ、ディスクブレーキでは輪行が難しくなるので(要調整)ミドルクラスは混合ブレーキも出てくるのかも知れませんね
ミドルクラスから下は、リムブレーキが生き残るのか、はたまたワイヤー式のディスクになっていくのか、興味深いところですよね。私もワイヤー式のディスクは手軽そうなので、ぜひ使ってみたいです。
MTBではレースグレードのXT(アルテグラ相当)ではVブレーキが消えてしまいましたが、トレッキング用のXTではVブレーキがあります。
ロードでも同様のラインナップになるのか、こちらも興味深いところです。見守っていきたいと思います。
10年ほど前にワイヤー式MTBを買いました。
機構的に片押しなのでブレーキの鳴きが気になったのとワイヤー式の宿命である
ワイヤーの伸びが煩わしく、短期間で油圧化に踏み切りました。以後ずっと油圧式のディスクです。
油圧のいいところは季節を通じて調整が不要なところですかね。
取付時に緩め、レバーを握った状態で本締めすればセンターは出ますし、輪行でもストッパーをかましておけば意図しないブレーキレバーの動きを止めてくれます。
なんといっても、雨天での安心感は絶大なものがあります。