【新製品レビュー】ほどほどの明るさで長時間稼働という絶妙ライト iGPSPORTのスマートライト『VS500』
2024/10/08にiGPSPORTから発表されたスマートライト『VS500』のレビューです。
iGPSPORTはサイコンの他にライトにも注力しています。以下の通り2024年だけで既に3つのライトをリリースしており、今回の『VS500』で4作目。すごい開発ペースです。
- VS1200:2024年2月リリース
- VS800:2024年5月リリース
- VS1800:2024年6月リリース
ちなみにモデル名の『VS』に続く数値は最大ルーメン数を表しており、本作『VS500』は最大で500ルーメンを照射するライトとなります。
2024年5月に開催されたサイクルモードのiGPSPORTブースで話を伺ったところ、iGPSPORTでは事業部として『サイコン』『ライト』『ウェアラブル』の3つを組織しているということでした。ライトが事業部として組織されているとのことで、力を入れて開発していることが伺えます。
■総合評価
主な特徴は以下の通りです。これまでのVS1200やVS800と同じサイズですが、少し路線が異なっています。最大ルーメン数は500ルーメンとやや控え目。その分、長めのラインタイムを実現しています。
その他、これまでのライトと同様に、搭載するセンサーやアプリとの連携により従来機種と同等の使い勝手の良さを実現しています。
- ブルべから日常使いまで幅広く対応する現実的なスペック
- 250lmで約8時間、50lm(推定)で35時間弱という非常に実用的なランタイム
- 着脱式のマウントホルダーを備え、ハンドル上置き/下吊りに対応
- アプリから輝度を設定することで、ランタイムの調節が可能
- リバース充電機能を搭載してモバイルバッテリーとして利用可能
- アプリやサイコンに概ね正確なバッテリー残量を表示
兄弟モデルであるVS1200、VS800、VS1800のレビュー記事はこちらからどうぞ。
■入手経緯
今回はiGPSPORTさんよりVS500を提供いただきました。そのため通常は『購入動機』とするところ、今回は『入手経緯』としています。いつもありがとうございます。
■製品概要
スペック
主なスペックは以下の通りです。
- 価格:6,930円(税込)
- 明るさ:最大500lm
- 公称重量:157g(実測162g、本体のみ)
- 本体材質:アルミニウム合金
- 本体サイズ:108×31×29(長さ/幅/高さ)
- 使用温度範囲:-10~50度
- 防水等級:IPX6
- バッテリー容量:4,000mAh
- 公称ランタイム:500lm/3.5h、250lm/8h、100lm/約35h
- 通信規格:Bluetooth
- 充電ポート規格:USB Type-C
- 搭載センサー:加速度センサー
VS1200、VS800とのスペック比較
兄弟モデルとなるVS1200およびVS800とのスペック比較表です。VS1800は製品の特性がかなり異なるので、比較対象外とします。
VS500 | VS1200 | VS800 | |
公称重量 | xxxg | 160g | 155g |
実測重量 | 162g | 160g | 156g |
価格 | 6,930円 | 11,220円 | 7,920円 |
サイズ(mm) | 108×31×29 | 108×31×29 | 108×31×29 |
ランタイム(lm) | 500:3.5h、250:8h、100:35h | 1200:1.45h、600:4h、300:8h | 800:2h、400:4h、150:8h |
バッテリー容量 | 4,000mAh | 5,000mAh | 4,000mAh |
防水等級 | IPX6 | IPX6 | IPX6 |
搭載センサー | 加速度 | 加速度、環境光 | 加速度、環境光 |
充電ポート | Type-C | Type-C | Type-C |
通信規格 | Bluetooth | Bluetooth | Bluetooth |
使用温度範囲 | -10~50 | -10~50 | -10~50 |
マウント | Garmin互換、上下反転可能 | Garmin互換 | 独自マウント |
基本の使用形態 | 上置き/下吊り | 下吊り | 上置き |
明るさとランタイムを見ると、『高効率のLEDを搭載したVS800』のような性能をしています。
またハンドル上のスペースが厳しいランドヌール的には、標準で上置きと下吊りに対応している点が有難い。樹脂バンドを使った独自の固定方式を編み出しており、VS1800の様に工具を必要とせず反転が可能です。
しかしながら装着に際しては、脱着にスペースが必要なGarmin互換マウントに戻っている点がやや残念ポイント。VS800とVS1800で採用されていたキャットアイ方式のマウント+樹脂バンド方式という実装が厳しかったのでしょう。
これまでと同様にアプリから明るさをカスタマイズ可能ですので、好みに合わせてランタイムを伸ばすことが出来ます。
パッケージと同梱品
今回は開封動画を撮影しました。製品概要も含めて紹介しています。バンドの質感を確認したい方はぜひ。
パッケージはこちら。これまでと同様に白基調のシンプルなパッケージです。
パッケージ裏面には、モードごとのルーメン数とランタイムが記載されています。カスタムモードはデフォルトで100lmにセットされているとありますが、そのラインタイムは何と約35h。ミディアムモード(250lm)の半分弱の明るさですが、ラインタイムは4倍強になるというのは辻褄が合いませんね。
同梱品はライト本体の他、マウント&シム、3&4mmアーレンキー、マニュアルが入っています。これまで同梱されていたUSB Type-Cケーブルは付属しません。
マウントは見ての通り、Garmin互換マウントです。
外観、実測重量
外観が酷似しているVS800と並べて撮影しました。上がVS800、下がVS500です。ゴム製のマウントホルダーが非常に目立ちます。それ以外はVS800とほぼ同じデザインです。
本体側のマウントもしっかりとGarmin互換です。
マウントホルダーは着脱可能です。本体上部に電源ボタンが配置されています。
電源ボタンの長押しで電源ON/OFF、クリックでモードの切り替え、ダブルクリックでロービームとハイビームの切り替えを行います。またVS1800からの新機能として、電源ボタンをトリプルクリックするとSOSモードに入ります。
後端部はVS800と同様に半透明の樹脂となっています。充電に関する仕様も記載されており、INPUT/OUTPUTとも『5V-2A』となっています。こちらもVS800と並べましたが、右がVS500。VS800に記載のあった技適マークなどは、本体への記載が省略されています。
前面のレンズ部です。縦スリットの新たなレンズ形状となっており、左右への拡散を意図した形状となっています。
実測重量は162g、公称よりも5gの差異。VS800は156g、VS1200は160gなので僅かに重い。恐らくマウントホルダーの影響でしょう。
マウントは標準シム込みで33gでした。VS800のキャットアイ風マウントは12gでしたから、如何にゴツいかが分かります。
充電ポート
後端部にある充電ポートはUSB Type-C。フタは1mm程度の薄いゴムでVS800と同じ仕様。数時間の雨ライドであれば問題はなさそうな密閉度に感じます。実際、VS1200やVS800では10時間以上の雨ライドでも問題ありませんでした。
ちなみに防水等級は、これまでのiGPSPORTの他のライトと同様にIPX6。IPX6は『あらゆる方向からの強い憤流水による有害な影響がない』と定義されています(VOLT800NEOはIPX4)。
※数字が大きければ一概に優れているというわけではありません。実際にロードバイクの雨ライドで使用して浸水しないかはまた別の話です。
アプリからの設定
この製品の最大の特徴が『アプリとの接続が前提である』ことです。アプリとの接続なしでも使えますが、それではこの製品の価値が半減します。
アプリとの接続後は以下のようにアプリ上に製品が表示されます。
接続後は以下のメニューが使用可能になり、本製品の性能をフルに活用することができます。ファームウェアのバージョンは画像ではV1.00ですが、レビュー中に何度かアップデートがかかり2024/10/06時点ではV1.11となっています。
バッテリー残量および仮想ランタイムが表示される他、カスタマイズモードの編集、オートスリープのON/OFFなどの設定が可能です。詳しくは後述します。
ちなみにアプリに登録可能なiGPSPORTの製品は10個が上限ということが判明。VS500を登録しようとしたらエラーが出てしまいました…。
■レビュー
初回起動保護機能
VS500から搭載された新機能です。輸送中の事故を防止するためか、充電するまでロックがかかり起動しないという保護機能が搭載されています。
本体側面に図解がなされており、STEP1は充電しろ、STEP2で点灯するよ、という流れになっています。本体に通電し、緑ランプが点灯するとアクティベーションが完了するという仕組みです。
マウントについて
VS500の最大の特徴がこのマウント方式です。マウントホルダーを反転可能な仕様とすることで、上下どちらでも設置可能となっています。
マウントホルダーは硬めのゴムといった素材で十分な固定力があり、走行中にホルダーがずれることはほぼ無いと思われます。Garmin互換なので、Garminマウントであれば何にでも装着可能です。
逆にVS500のマウントにEdgeを装着することも可能。これは意外と便利かもしれない。
VS1800もマウントの上下を変更可能な方式でしたが、VS500は工具不要。本体にネジ穴が空くこともなく、防水性と言う視点では優秀な方式です。
GarminのEdge製品を買うと付属する例のゴムバンドでベースを固定する方式と比較すると、高さが出るようになっています。空力は悪く、不格好ではありますが、装着の際に90度ターンが必要なGarminマウント的には周囲の機器と干渉しないため有難いです。
ちなみにGarminマウントを下向きにして使用することは、マウント側の爪強度に不安があることから、個人的にはあまりお勧めしません。
また冒頭の開封動画でも紹介しましたが、同様のマウントを採用しているVS1200と比べると精度が向上しています。装着すると『カチッ』と音が出るほどで、非常にしっかりと固定されます。
そして良く見ると、このマウントはGopro方式が採用されており汎用性が高い。画像のように互換性のある他のアダプターが装着可能で、接続部の『めねじ』側はマウントに埋め込まれており固定力も高いです。
アームが無いのに33gと重量級のマウントですが、固定力と汎用性が高く、意外とこの製品のキモになっています。ライトにおけるマウントの重要性がやっと分かってもらえましたか…という感想です。
アプリとの連携、カスタマイズについて
アプリに関する機能です。
先ほど紹介した通り、Bluetoothを使いアプリと接続するとバッテリー残量および仮想ランタイムが表示されます。
これまでのテスト結果から、実際のランタイムは仮想ランタイムより1割ほど短くなります。恐らくですが、発熱等による電力ロスを考慮していないためか?と思っていたのですが…baruさんの検証によると、最後の1時間になると突如光量がアップするためランタイムが短くなっているとのこと。確かに、最後の1時間はバッテリーの減りが倍の早さになるのですよね。
各モードですが、『ヘッドライトモード』はライトのモード切替をアプリから行うもの。モードの切り替えは電源ボタンをクリックしても可能ですが、順番に切り替えることしか出来ません。アプリでは各モードを指定してダイレクトに変更することができます。
デフォルトの状態では上記の3つのモードしかありませんが、右上のトグルスイッチアイコンをタップするとモードの追加/削除が可能なメニューに移ります。常時点灯モードの追加はここから行います。
VS1200とVS800で存在していた『待機モード(スタンバイモード)』はメニューとしては無くなりましたが、カスタマイズモードで『待機モード』を作れるようになっています。
同様に『待機モード』の無いVS1800では『カスタマイズモード』が3つ設定可能でしたが、VS500では1つのみ。10%などの低輝度で利用するか、待機モードを作るか、どちらかを選択することになります。
ちなみに自動ON/OFFの機能が充実しているため、貴重なカスタマイズモードを待機モードにする必要は薄いと思います。
『ヘッドライトモード』画面の『カスタマイズ1』の右側にある『>』マークをタップすると、カスタマイズ画面に移ります。ランドヌールにとってはこのメニューの価値が非常に高い。
VS1200とVS800では明るさの最小値は『10%』でしたが、VS500では『0%』です。『0%』に設定したものが待機モードです。輝度は1%刻みで設定することが可能。『ちらつき』はフラッシュで、点滅の間隔も調節が可能です。
そこそこの明るさを確保しつつ、状況(距離)に応じてなるべく長時間使いたいというのがブルべにおけるニーズ。『600kmなら(深夜は仮眠するため)12時間点灯すれば良いので25%にしよう』など、表示されるランタイムを見ながら少しでも明るさを上げて安全性を向上させることが可能になります。
『インテリジェントな関数構成』(関数=functionの誤訳と思われます)は各種オート機能の設定です。
VS1200/VS800も優れた自動機能を搭載していましたが、VS500では新機能が追加されています。主な項目の概要は以下の通り。
- 速度による明るさ:サイコンとペアリングしている場合、サイコンから速度情報を取得して速度に応じた明るさに自動調節します。速度向上と共に明るくなります。
- オートスリープ:設定した時間でスリープモードになります。
- 静止した低輝度:静止状態を検知すると、設定した時間が経過後に輝度が下がります。
ランタイムについて
ランタイムについては、デフォルトの各モードにおける公称値では以下の通りとなっています。何故100lmの場合のみ『約』が付いているのかは不明。
- 500lm/3.5h、250lm/8h、100lm/約35h
※この項の最後に実際に点灯テストを行った結果を記載しています
また比較として、メジャーどころの製品におけるカタログスペックは以下の通り。
- VOLT800NEO(キャットアイ):200lm/12時間(4,800mAh)
- RN1500(OLIGHT):300lm/12.5時間(5,000mAh)
※RN1500が非常に優れているように見えますが、実際は300lmを維持するのは最初の30分程度であり、以降は200lm弱になることが知られています。VS500は最大輝度こそ低いものの、4,000mAhの高容量バッテリーを採用して『低輝度・長ランタイム』を実現していることがポイント。
正直なところライトを最大輝度で使う場面というのは私には経験が無く、そこそこの明るさ(200lmとか)で長時間稼働してくれるスペックが一番有難い。
この製品は正にそれを実現してくれており『ようやく分かってもらえましたか』という感想。
参考として、デフォルトで用意されているモード(上の2つ)およびカスタマイズモードで明るさを調節した場合に表示される仮想ランタイムは以下の通り。
- 高輝度常時点灯:3h10m
- 中程度の明るさで常にオン:7h20m
- 100%:3h30m
- 50%(推定250lm):7h05m
- 20%(推定100lm):18h15m
- 10%(推定50lm):36h35m
先ほども書きましたが、250lmで8hなのに100lmで約35hというのは辻褄が合いません。改めてパッケージを確認しますが、100lmというのはカスタマイズモードの明るさとなっています。
しかし先ほど紹介した通りカスタマイズモードでは明るさを直接指定するわけではなく、パーセンテージで指定します。そしてデフォルトでセットされているパーセンテージを確認すると10%です。
このパーセンテージの基準は、最大輝度である500lmと理解するのが自然…ですよね。ということは、100lmではなく50lmなのではないでしょうか?仮に50lmであるとすると、50lm/35hですから、250lm/8hとの関係性も説明がつきそうです。
また公称のランタイムですが、これまた初めてテスト環境がマニュアルに明記されるようになりました。テスト環境は『温度:23度±2度、湿度:30%ー50%』の実験室環境とのことです。
最後に検証のため、カスタムモードで輝度20%(推定100lm)に設定し、バッテリー残量100%から消灯するまでの時間および残量の変化を記録しました。前述の通り、20%の場合で表示されるバッテリー残量は18h15mです。各種自動機能は全てOFFにしています。
テスト結果は23h30mで消灯しました。これまでのiGPSPORTのライトはアプリに表示される仮想ランタイムよりも1割ほど短かったのですが、VS500は2割以上もタイムが伸びるという予想外の結果に。
目視で確認する限りでは徐々に暗くなることは無く、最後まで明るさを保ったまま突然消灯しました。バッテリーの減少率は一定では無く、1時間あたり3~5%の幅で減少しています。
ただし最後の10%になってからは、baruさんの検証結果の通り輝度がアップしているためか?1時間あたりの減少率が約6%となっています。
配光について
本製品はiGPSPORTのライトで初となる、縦にスリットが切られたレンズとなっています。これを屋内で壁に向かって水平照射すると、このように見事な半円形の照射範囲となります。上方向への配光がカットされていますね。
実際に屋外で地面に向けて照射するともう少し拡散してこのような形状になります。上方向をカットしつつ、足元は意外と広く照射されています。
サイコンとの連携について
iGPSPORTのサイコンとペアリングさせると、バッテリー残量とランタイム情報をサイコンに表示することが可能になります。手元にあるサイコンで試したところ、iGS800/iGS630S/iGS630はペアリングができました。
サイコンとペアリングさせると、このようにバッテリー残量と残りのランタイムをサイコンの項目として表示可能です。スマホを取り出さなくてもランタイムが確認できるのは大変便利ですね。
接続可能なサイコンは現在のところ上記3機種の他、BSC300、BSC300Tも対応しています。Edge1040でテストしたところ接続は出来ず、iGPSPORTのサイコンのみが接続可能となっています。
■まとめ
iGPSPORTの4作目のライトです。
豊富な自動機能を搭載しており、アプリを使って任意の明るさ、任意のランタイムに調節が可能です。
明るさを100lm程度に下げると18時間(実測23時間)、50lmでは35時間以上のランタイムとなります。明るい街中では明るさを下げてランタイムを最大化するという運用も容易です。
アプリで簡単に設定変更が可能な点もポイント。私はV1200とVS800を使っていますが、信号待ちの最中にささっと設定を変更出来るのは大変便利です。ここはキャットアイが全くキャッチアップできていないポイントですね。
また今作から着脱可能なゴムバンド式のマウントホルダーを採用し、ハンドル上置き/下吊りのどちらにも対応してきました。マウントがGarmin互換な点が唯一のウィークポイントですが、マウントの高さが出るように取付けすることで、周辺のデバイスとの干渉は解消可能です。
これだけのスペックを備えていながら、価格は7,000円以下。ハンドル上の取付スペースさえ確保できればブルべでも十分に使えるスペックで、VS800を上回る驚異的なコストパフォーマンスと言えます。バックアップを含めて3つ買っても21,000円程度ですからね。
街乗り用としてちょうど良い価格でありながら、ブルべでも十分に一晩を凌げるスペックを有しています。1つ目のiGPSPORT製品としてもお勧めです。