【レビュー】新素材『Polartec® AirCore™』で超進化した『ALPHA 150 JACKET』
2025年の秋冬新製品として発売された、PFASフリーに対応したカステリの新型フラッグシップジャケット『ALPHA150 JACKET』のレビューです。

分かる人は名前で分かりますが『ALPHA DOPPIO RoS JACKET』の生まれ変わりです。
商品の購入は、カステリ公式オンラインストアがお勧めです。本国の倉庫から出荷されるため、各サイズ/各色の在庫が揃っておりお勧めです(記事の最後に、当ブログ専用に発行されたクーポンコードの記載があります。常時使用可能です)。
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■総合評価
- PFASフリーに対応した新素材『Polartec® AirCore™』を使用
- 透湿性の大幅な向上を実現
- APLHAシステム(2重構造)を採用し、広い温度帯に対応
- 冬の高強度対応ジャケットならこれ一択
- 1着で幅広い気温に対応したい人
■入手経緯
通常は『購入動機』となるこのパートですが、今回はカステリ社のご厚意によりこちらのジャケットを提供いただきました。いつもありがとうございます。そのため『入手経緯』としています。
■製品概要
製品スペック
製品スペックを改めて確認します。
- 価格:53,350円(税込)
- サイズ展開:XS、S、M、L、XL、XXL、3XL
- 対応温度帯:-2~10度
- カラー展開:4色
- フィット:タイトフィット
- 公称重量:346g(恐らくLサイズの場合)
- 実測重量:307g(Sサイズ)
現時点のカステリのラインナップで最も高額なジャケットです。前作の『ALPHA DOPPIO RoS JACKET』は49,940円でしたから、約7%ほどの価格上昇となりました。
APLHAシリーズは『使えば分かる納得の高性能』ジャケットなので、私は冬ブルべではこれ一択。そのため特に高額とは感じないのですが、さすがに5万円を超えると思い付きで買うには躊躇しますよね(『MOROU25』クーポンで20%OFFになりますが)。
私も最初にこのジャケットを買った時はネット上にもあまり情報が無く、『5万円近くするジャケットなのに詳細が分からねぇ…』と不安なままポチりました。この高性能な製品が埋もれてしまうのは非常にもったいないですから、私が人柱になり(今回は提供いただきましたが)、皆さまには充分に納得のうえで購入いただきたいと思っています。
APLHA RoSの初回レビューはこちら。何度かリファインされているのでその度に購入し、既に3着買ってます。
製品ポジショニング
カステリは非常に多様な製品を販売しています。同様の温度帯の主な製品と比較して、本製品のポジショニングを整理します。
| 名称 | 断熱 | 防水 | 防風 | 通気 | 軽量 | 温度帯 | 重量 | 価格 |
| ALPHA 150 JACKET | 4 | 4 | 5 | 3 | 4 | -2-10 | 346 | 53,350 |
| ALPHA DOPPIO JACKET | 5 | 4 | 5 | 4 | 3 | -5-10 | 528 | 49,940 |
| COMPETIZIONE JACKET | 5 | 4 | 5 | 3 | 3 | -4-10 | 509 | 39,820 |
| ESPRESSO AIR JACKET | 5 | 3 | 4 | 4 | 4 | 0-10 | 355 | 31,350 |
前作のALPHA DOPPIOとの違いとして、断熱性のスコアが下がっていますね。透湿性を高めて高強度に対応するため、やや薄手の生地に仕立てており、断熱性が少し下がったのでしょう。これは仕方がない。必要であればベースレイヤーで補ったり、同じくAirCoreを使っている『COMPETIZIONE JACKET』を着てくれということでしょう。
一方、通気性は低下、軽量さは向上しています。通気性については同等もしくは向上していても良いのでは?と思っていますので、ここは良く分からない点ですね…。AirCoreにより通気性も向上した!という謳い文句のはずなのですが…。なぜなのか。
また厳密には、この『通気性』という項目は、通気性と水蒸気透過率(透湿性、MVTR)という別の機能性をひっくるめて評価していると思われます。本製品のポイントは透湿性が大幅に向上している点ですが、通気性もGOREよりは向上しています。従ってGOREを使っている前作よりスコアが低下することは考えにくいのです。
重量は約2/3になっており圧倒的に軽く、しなやかになっています。
次に『COMPETIZIONE JACKET』は、同じくAirCoreを使った製品。厚手の生地に仕立てることでより低温(-4度)に対応しています。
『ESPRESSO JACKET』は防風よりも通気性を重視した『RISTRETTO』という生地を使っており、こちらもPFASフリー。ESPRESSOシリーズらしく非常に軽くしなやかで、多少の空気を含むため断熱性が高いことが特徴です。
PFASフリーへの対応が求められて以降のカステリの新製品に共通するコンセプトですが、『ユーザーは、完全防水をそれほど求めていないのでは』という前提に立っています。防水性は適度に抑えつつ、通気性と透湿性をより重視してパフォーマンスを最大限発揮することを主眼にしています。
AirCoreについて語ったカステリのポッドキャストでは『普通のサイクリストは、雨の日は走らないか、zwiftをやる』と言っており、その通り過ぎるなと…。
PFASフリー
ここでPFASに関しておさらいです。撥水などを目的として、GORE-TEXなどに広く使われているPFASが規制されることになり、数年前から代替となる素材が開発されてきました。
- 有機フッ素化合物の総称
- 衣類に関しては、主に撥水性を付与する目的で使用されてきた
- 環境負荷の高さから使用に関して規制が強まっている
カステリでは2024シーズンの新製品としてPFASフリーの新素材『RISTRETTO(リストレット)』を使った『PERFETTO AIR』や『ESPRESSO AIR』がリリースされていますが、保温性と通気性に優れるものの、GOREのような防水透湿に優れる生地ではありません。
そこでカステリとポーラテックが共同で、GOREに代わる(むしろ進化した)生地を開発したのが今回の『AirCore』です。
GORE社も『ePEメンブレン』と呼ぶPFASフリーに対応した新GOREを出していますが、今のところ主に透湿性の面で以前の性能を達成できておらず、あまり評判が良くないという印象です。
■AirCoreとは
まずは本製品最大の特徴である『AirCore』の紹介から始めます。
防水透湿素材の種類
素材の紹介の前に、まず最初に防水透湿素材の種類をまとめます。色々調べた結果、大まかに以下の3タイプに分類されると思われます。
- 親水性無孔:主に親水性のポリウレタンを使ったもの。穴は無く、生地が吸湿して水分を排出するプロセスを経るため蒸れやすいが、メンブレンを薄くできる。
- 疎水性多孔:主に疎水性のテフロン(ePTFE)を使ったもの。微細な穴が多数あり、この穴を通じて水分を排出する。穴は必ずしも貫通しているわけではない。また穴があるので薄くすることが難しい。
※ePTFE:expanded Polytetrafluoroethylene - ナノファイバー:疎水性のポリウレタンに電圧をかけて超極細の繊維を作り(エレクトロスピニング法)、膜を形成する。膜といいつつナノレベルの繊維から成る構造体で、通気性がある。
疎水性多孔の代表的なものがGORE-TEX。『expanded』という名称の通り、基本的な原理はフィルムを物理的に引き延ばして孔を形成するものです。
ナノファイバー系メンブレン
AirCoreはナノファイバー系のメンブレンで、20,000ボルトの電圧をかけシリンジから髪の毛の約100分の1の細さのフィラメントを積層し、空気を通す極めて緻密な膜を形成するとのこと。
膜を引き延ばして製造するGOREとは全く異なる製法のため、このように書くと新しい製法のように感じますが、エレクトロスピニング法によるナノファイバー系のメンブレンは数年前からありました。
ポーラテックでは『ネオシェル』というメンブレンがそれで、これはカステリの『BETA RoS JACKET』に使われているのですが、残念ながらPFASフリーではないためにAirCoreなどを使った製品にいずれは置き換わっていくと思われます。
AirCoreの特徴
それではAirCoreは、同じくエレクトロスピニングで作られたネオシェルや、PFASフリーに対応した新GORE(ePEメンブレン)とどこが異なるのでしょうか。
※ePE:expanded Polyethylene(延伸ポリエチレン)
PFASフリーを実現しながらも従来と同等の防水透湿性を持つだけで十分に優れていると思いますが、以下に特徴を列記します。
- 通気性(Cubic Feet per Minute、CFM):従来の温度や湿度の差異による水蒸気の拡散ではなく、空気が出入りする。通気性はCFMという値で表されるが、AirCoreについては0.7に調整されており、新GOREは0。
- 透湿性(Moisture Vapor Transmission Rate、MVTR):35,000g/㎡・24hと非常に高い値を誇る。旧GOREは20,000g/㎡・24hあたり、ePEの新GOREで10,000g/㎡・24hあたり。
- 高いストレッチ性:これまでの生地の2倍以上の伸縮性を持ち、フィット感が高い。
- 耐水圧:5,000mmの耐水圧を備える。新旧GOREは20,000mmの耐水圧を備えるが、サイクリングでは過剰なスペックであるため(通常の雨は800mm程度)、性能のバランスを考慮し上記スペックに設定している。
まず最大の特徴として、新旧GORE(や、それに類するメンブレン)は内外の温度や湿度の差を利用して水蒸気の移動を行う構造ですが、ナノファイバー系のメンブレンは通気するため、それらの勾配差が無くとも対流により一定以上の透湿性を発揮します。
一方、防水性だけで言えば耐水圧を見てもGOREの方が高いのですが、その代わりGOREの通気性(CFM)は0です。登山に行くと分かりますが、ひとたび悪天候になるとサイクリングの比ではない過酷な状況になりますから、耐水圧の方が優先されます。
一方のAirCoreは耐水性をサイクリングで現実的な5,000mmに抑えながらも、CFMを高く設定しているという絶妙なチューニングを施しています。
それでいて透湿性は高く、生地が薄いのでフィット感も高い(2倍の伸縮性がある)という、サイクリングに特化したおかげで我々サイクリストにとっては非常に理想的な製品に仕上がっていると言えるのではないでしょうか。
ここがまさにAirCoreの優れている点で、高強度のサイクリングにおける『蒸れ』の解消にスペックがフォーカスされたために実現した性能であり、GOREには真似の出来ない点。
シリアスな登山まで幅広く使われるために、結果として登山以外の用途では最大公約数的な性能にならざるを得なかった新旧GOREの限界を克服する製品に仕上がっています。
ちなみにAirCoreは、カステリ(やスポーツフル)が独占的に使用することが出来る素材とのこと。ポーラテックとしては販路が限られることになりますから、この優れた素材であるAirCoreは今後色々な製品に応用されると思われます。
■製品詳細
細部の紹介
まずは全景です。今回のカラーは『MANGO MOJITO(マンゴーモヒート)』です。モヒートに入るミントのように、少しだけグリーンを入れたイエローという色味でしょうか。

また『完全防水』を目指さなくなったためか、肩口にあった防水のシームテープも無くなりました。
左袖には大きく『POLARTEC AirCore』のロゴが入ります。

ALPHAシリーズのジャケットは、このようにアウターシェルとインナーシェルの2重構造になっていることが特徴。この製造が非常に面倒そうな、しかし非常に優秀な構造に、我々は5万円を払っているのです。

襟は全体的に高くなっていますが、うなじ部分はフリース生地が備わっており、防寒と肌触りの良さを両立しています。

左脇にはベンチレーションを兼ねたセキュリティポケットが備わっています。

ジッパーは信頼のYKK。ジッパープルも冬グローブでの操作を前提に大型です。全面的にフラップが備わっており、防寒性を向上しています。ジッパーは意外と通気するので、フラップの有無は重要ですね。

ダブルジッパーになっており、高強度に対応。シリコングリップは控えめですが、黒い部分全体がグリップを発揮するので、充分な固定力を発揮します。

インナーシェルは『Polartec® Alpha』を使用。格子状の構造で通気性が高く、保温性も高いという相反する要素を両立している素材です。状況に応じて『両方のジッパーを閉める』『内側だけ開ける』『外側だけ開ける』の3つの選択肢があり、使いこなすと非常に快適に走ることが可能です。

以前は全周にインナーシェルが使われていましたが、素材の進化によりサイドには使われなくなりました。背面は断熱性向上のため完全に2重構造となっており、画像のように手を入れることもできます。

裏返したところ。インナーシェルの使用範囲はこのようになっており、闇雲に全面に使用されているわけではありません。

背面は3ポケット。ジッパー付きのシークレットポケットはありません。下部には反射素材が備わっています。裾のみ伸縮性の高い別素材となっており、黒い部分全体でグリップを発揮する構造です。

背中上部。レーシングラインであることを示す『ROSSO CORSA』のロゴ入り。生地自体の透湿性が向上したので、旧作まであったベンチレーションは無くなりました。

こちらが以前のベンチレーション。

ALPHAシリーズの構造として、袖口も2重構造になっています。

インナーシェルの上にグローブをかぶせ、更に上からアウターシェルをかぶせることで袖口の気密性を高める仕組みです。これ、しっかりやると本当に暖かい。『こんなにも袖口から体温が逃げていたのか…』という事実を気付かせてくれます。

実測重量
実測重量はSサイズで307gでした。公称346g(恐らくLサイズ)ですので、サイズの差異を考慮すると誤差。

ちなみに旧作はXSサイズで466gでした。大幅に軽量化されていることが分かります。

サイズについて
Sサイズを採寸しました。袖丈:67cm。

着丈:72cm。

身幅:47cm。

旧作のXSサイズは、袖丈:65cm、着丈:69cm、身幅:47cmでした。サイズごとの寸法に変更は無い様子です。
■レビュー
実走レビューです。
サイズ感
Sサイズを実際に着用した画像です。私の体格は、身長170cm、体重58kg。カステリは海外製品ということで袖が余りがちなのですが、冬ジャケットのため更に余り気味。多少長い分には問題ありませんが、足りずに手首が露出したりしたら使い物になりませんからね。

当然ながら前傾姿勢を前提に設計されていますので、バイクに乗ると背中のシワは消えます。

実走レビュー
11月の晴れた日、さいたま市の荒川CRへ出かけます。いつものコースです。
荒川に出る手前でマックに立ち寄りましたが、外の気温は8度(店に入った瞬間に9度になった)。テストには最適な気温。

食事を済ませて荒川CRへ。
話が戻りますが、このジャケットを着た時の第一印象は『薄い…軽い…』ということ。これまでのALPHAシリーズの愛用者としては、信じがたい薄さと軽さです。いや、もちろん性能が同じであれば薄くて軽い方が良いに決まっているのですが。
同様にAirCoreを使っている『Perfetto RoS3 Jacket』を着た時の感想と全く同じです。分かっているはずなのに驚いてしまいました。
CRに到着して走り出すと、まず感じるのは防風性。重量が35%も軽くなり、生地も明らかに薄いのですが、全く風を感じません。今までの基準からすると明らかにおかしい。技術は進歩するのだ!と理解しました。
そしてインナーシェルが良い仕事をしており、期待通りに暖かい。私が知っているALPHAシリーズの暖かさは健在です。

荒川CRは、荒川の堤防上をひたすら進む構造のためノンストップで強度を上げていくとともに、時間の経過で気温も暖かくなっていきます。ちなみにこの日の荒川は久々の強い北風で、普通に走るだけでもかなりの強度を要求されます。
しかしこれまでの経験に反してウェアの中はドライを保っています。この気温でこの向かい風、この強度なら、背中にじっとりと汗をかくはずだ…という長年の経験則があるのですが、今日はそれが無い。(良い意味で)色々おかしい。
レビューのために走っていますので要因を色々考えましたが、『ジャケットの透湿性が優れている』ためとしか考えられません。
向かい風の中をしばらく根性で走って折り返し地点に到着しましたので、体温調節のため立ち止まってインナーシェルのジッパーだけを開けます。インナーのジッパーを開けると保温層が無くなるので明らかに涼しくなるのですよね。
こんな風に細かな体温調節が可能なのがALPHA JACKETのメリットです。ヒルクラなどでは『アウターを開けて、インナーは閉める』という使い方もします。
この日はトータルで60kmほど走りましたが、ジャケットのおかげで、暖かいにも関わらず高強度でトレーニングすることが出来ました。向かい風の中でも蒸れることなくトレーニングできたのは初めての経験です。あれほど有難がっていたGORE-TEXに別れを告げる日が来るとは。別れはいつも突然ですね。
※限界まで踏めば、もちろん蒸れることもあります
■まとめ
薄手で高いフィット感と軽量性を備えながらも、前作と同様の防風性も備え、そのうえ体感できるほどの透湿性の高さを実現した中~高強度に対応した秋用ジャケットです。
2重構造のALPHAシリーズの良さはそのままに、『軽さ』『透湿性』という要素を確実に向上させ、更には防風性もキープしているという正統進化を遂げた製品となっており、文句のつけようがありません。まさに最終形態。
定価は約5万円と高額ではありますが、他社には更に高額なジャケットがありますし、カステリは定期的にクーポン配布やセールも行っていますので、上手に活用して入手して欲しいと思います。
アウターとインナーのジッパー開閉を工夫することで幅広い温度帯や強度に対応しますので、冬の早朝や夕方にトレーニングする人や、私のようにブルべで朝から晩まで走る人には最適のアイテムです。少しでも気になっていれば、一度は使ってみることをお勧めします。

カステリ社から当ブログ用のクーポンコードを発行いただきましたので、ぜひ利用ください。コードは2つあり、どちらも常時使用可能です。既に割引になっている商品に対しては使用することが出来ません。
- 『MOROU2025』:20%OFF。2025/12/31までの間、1アカウントで2回まで使用可能
- 『RideJapan』:15%OFF。有効期限なし。
※商品の購入やクーポンの使用により、私に収益が発生することはありません













