チューブレス用のプラグ系 パンク修理キットは、ロードバイクに使えるのか?その1:レザイン チューブレスキット

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■今回の主旨

今回のテーマは、チューブレスタイヤ用のパンク修理キットについてです。よく見かける『プラグで穴をふさぐ系』の修理キットですが、ロードバイクのタイヤに使える実用性があるのか?を確認します。

この『チューブレスは使いたいけれど、パンクしたらどうするのか問題』は何年経っても永遠のテーマ的な問題となっていますね。パンクした際の対応策を調べると、色々なショップのブログや動画が見つかります。パンク時の対処方法自体が特に進化していないので、同じような内容のブログ等を違うショップが定期的に投稿しているという状況です。

それらの情報は実際にチューブレスを使っている私が見ても有用なのですが、どうしてもショップの発信する情報ということで、一定のバイアスがかかっていると思ってしまいます。

一方チューブレスタイヤというシステム自体は、MTBはもちろんのこと車やバイクでは一般的で広く使われています。パンク修理の方法も、プラグを穴に挿して塞ぐ方法は珍しくも何ともありません。そもそも、それらの乗り物ではもはやタイヤシステム=チューブレスであり、チューブレスタイヤはパンク修理出来るものという状況です(今回取り上げる『ヒモ状のプラグを穴に挿して塞ぐ』タイプの製品は『ヒモ系』などと呼ばれていたりするのですが、その呼称の違いはまた別の機会に)。

しかしロードバイクでは、プラグ系の修理キットを実際に使用したという話はあまり聞かず、MTBほどには広まっていない印象です。私の周りのチューブレス使用者を見る限り、パンク時にはチューブを入れたり、IRCのファストリスポーンのような修理剤を使うなど、プラグ系以外の手段を使っています。

恐らくですが、他の手段の比較して敬遠されているためだと推測します。私もそうでした。何故なら、使いづらそうだからです。では、その『使いづらそうと感じる理由』というのは、一体何なのか?

単なる食わず嫌いで実は非常に実用的なものなのか、それとも本当に使いづらいのか。実際に使ってみます。

■今回使う製品

今回はメジャーなブランドであるレザインの修理キット『TUBELESS KIT(チューブレスキット)』です。シンプルな商品名ですね…。いつものショップの店頭に並んでいたので、まずはこれを購入。コンパクトなので、ツールボトルに入れる時にスペースを取らいこともメリットです…が、後述するように1つ重大な注意点があります。

■製品概要

注意事項

買ってから気付いたのですが、この製品は『使用上の注意事項』があります。その内容は以下の通り。

チューブレスキットシリーズは、マウンテンバイクやグラベルバイクのタイヤ等の低圧で使用するタイヤを前提として設計しております。ロードバイクなどの高圧で使用するタイヤへの使用ができない可能性がございます。(高圧のタイヤで使用すると圧入したプラグが抜けてしまう可能性がございます)
タイヤ幅35cm以上、空気圧50psi以下のチューブレスタイヤを目安にお使いください。
※原文ママです

私がこの製品を買った『いつものショップ』はこのブログに何度も登場していますが、ロードバイクの専門店です。もちろんMTBの販売やメンテもしますが、店頭に並ぶ完成車やホイールの在庫は全てロードバイクです。そのため基本的にロードバイクに使える商品が並んでいるという認識でいたのですが、今回は調査不足でした。

注意事項の内容を見ると、どう見てもロードバイクには使えません。私のホイールはフックレスなのでロードとしては低圧の3.8barで運用していますが、50psiというのは約3.4barです。空気圧の面からはギリギリいけなくもないか…?という数値ですが、タイヤ幅が厳しそうです。

ちなみにタイヤ幅の記載はどう考えても35mmの誤りなのですが、ダイアテックのサイトには35cmと記載があるのでそのまま記載しました。

ちなみに実際にテストする前は、この注意事項を読んでもこのような指定がなされる理由が全く分かりませんでした。結果的にはロードバイクのタイヤには適していなかったのですが、それはこの製品が悪いのではありません。注意事項に反して購入したせいなのですが『なぜタイヤ幅や空気圧の指定があるのか』という点について、主に検証していきたいと思います。

部品構成

この商品の特徴は、前述の通りコンパクトになること。筒状の本体に必要なものが収納されており、使用時にはグリップにもなります。使用方法のイラストも描かれています。

これがプラグです。スポンジ状の固くて細長い樹脂に、粘度の高い液体が含侵されています。海苔の佃煮みたいです。長さは5cmあります。

こちらがニードル。先端の太い部分は幅が6mm、厚さが2mmもあります。かなり太いです。

使い方

だいたい想像が付くと思うのですが、ざっくりと使い方を紹介します。まずこれがニードル。この先割れの部分にプラグを入れます。
※本来はプラグを刺す前にニードルのみの状態で穴に刺し、穴を整形する工程があります。この時は初見だったために『プラグ無しで刺す』という行為に心理的な抵抗が非常にあったので、整形の工程をスキップしてしまいました。いま振り返ると、この工程は飛ばさない方が良いですね。

これをパンクした穴に突っ込み、ニードルを抜くとプラグだけ穴に残ります。プラグを穴に詰める事で塞ぐという仕組みです。

■実際にパンク修理してみる

パンクの概要

それでは、実際にパンクを修理してみます。見る限りは普通にプラグを刺して修理が出来そうなのですが。装着しているタイヤやパンクの状態は以下の通り。

  • 使用タイヤ:シュワルベ プロワン 28C
  • 使用シーラント:スタンズ
  • タイヤ消耗度:約1,000km使用
  • パンクの状態:サイドカット。シーラントで何とか塞がっており、空気圧が3bar程度で数十キロ走行出来た。ただし4barくらいまで空気圧を上げるとシーラントが噴出する、という微妙な大きさの傷です。

パンクの詳細はこちらでも記事にしています。

パンクはシーラントにより一応塞がってはいるのですが、空気圧を上げる(と言っても4bar弱程度)と膜が破れてシーラントが出てきます。今回は、それをプラグで塞いでみたいと思います。

1回目

先ほどの画像の続きです。プラグをニードルにセットして、サイドカットの傷に刺します。
※今さら手遅れですが、まずはニードルのみを刺して事前に穴を拡げておいた方が良いです。

まずですね、そもそも傷口が小さくて、ニードルが全く入りません。これではテストにならないので、手のひらを使って無理やり押し込みます。何とかサイドウォールを破って突き刺すことに成功。『ザクッ!』という効果音が頭の中で響きました。

ニードルの先端が大きいので穴をあえて拡げる必要があり、中程度の傷の全てに使える訳では無いということが分かります。完全では無くてもシーラントがどうにか働いているような状況では、使わない方が良いですね。

また画像をみると、ニードルがかなり斜めに突き刺さっていることが分かります。これはタイヤの幅が20mmほどしか無いため、ニードルを真っ直ぐに刺すスペースが無いからです。斜めに刺してどうにかプラグを7割ほど挿入することに成功している状況です。サイドの傷の場合、35Cくらいはタイヤ幅が無いと真っ直ぐ刺せませんね。まさしく注意事項の通りです。

ここからニードルを上手に抜きます。斜めに刺さっているせいで、上手く抜けません。ぐりぐりやっているせいで、逆に穴が拡大しているような状況。。。

何とか抜けました。プラグが盛大にはみ出ています。これではフレームと干渉してしまい走ることが出来ません(出来なくはないけど)。ニードルを使ってプラグを中に押し込む事にします。はさみかカッターを持っていればカットして対処することが出来ますが、普通は携行していないですよね。

何とか押し込んだのですが、それでもこんなにハミ出ています。

ともあれ、一応は塞げているように見えますので空気を入れてみます。

それなりに空気は入りますが、3.5bar程度まで上げると明らかに隙間から空気が漏れる音がします。見た目は隙間など無いのですが、プラグの微妙な角度によって漏れてきてしまうようです。やはり斜めに刺しているのが良くないのか?また空気圧が3bar程度なら大丈夫なのかというと、やはりわずかに漏れているようで、結局のところ徐々に空気圧が低下していきます。

2回目

1回目は本当に初めてだったので、勝手が分かりませんでした。では2回目ならもう少し上手に刺せるだろうということで、2本目のプラグを使って再チャレンジです。28Cのタイヤでもプラグが長すぎるということが分かったので、今回はプラグを少しカットしてから使います。全長は5cmありますが、さすがに半分は短すぎるので3.5cmくらいにカットします。

途中は割愛して、挿入完了です。良い具合に出来ました。今回も刺すのは難しかったですが前回よりはマシです。果たして、穴はちゃんと塞がっているのか?

エアを入れるとなんと2.5barくらいで漏れてきます。前回よりも悪化しているじゃないか!漏れている箇所を確認すると、ニードルを抜いた場所から漏れている模様。やはり2回もやったのは宜しくなかったのか…。かなりグリグリやりましたからね…。事前に整形しておけば回避出来たのか??(ちょっと懐疑的)

もやもやしますが、結果としては穴を塞げなかったという結果になりました。

■タイヤの裏側はどうなっているの?

このプラグですが、タイヤの裏側はどうなっているのか見てみましょう。実験対象となったタイヤはもう使えませんので、外してみます。

表側。一見すると、穴は完全に塞がれているようにしか見えません。でも漏れてくるんですよね…。

タイヤの裏側です。こんな感じでプラグが詰まっています。シーラントの膜が削れている箇所は、ニードルを深くまで刺すために斜めにしてグリグリやった痕跡です。タイヤはリムに装着されているので折りたたまれていますし、空気も入っていないのでつぶれています。やはりロードのタイヤ幅だと、ニードルが入るスペースが無いということですね。

横から見ると、内部のプラグの形状が良く分かります。この程度にプラグが詰まっていれば十分に穴は塞がりますので、ロード用として使い場合はプラグは短く切った方が良いですね。

■今回の学び

今回はレザインの修理キットを使用しましたが、この製品はニードルが長くて太いため、注意事項の通りロードバイクのタイヤ幅には向いていませんでした。他の製品だと以下に挙げるデメリットをクリアしているものもありますので、これからも試してみます。以下、今回の学び事項です。

一定以上の大きさの穴に適している

今回は1mm程度のサイドカットでした。4bar程度まで空気圧を上げるとシーラントが出てくるのでプラグ系キットでの修理を試みましたが、ニードルが太くて刺さりませんでした。あえて穴を拡大させるリスクを冒してまで、プラグを刺して修理する必要は無いと思われます。

注意事項しかり、使用方法のイラストにもまずニードルだけ刺して回転させて穴を整形するステップが記載されています。これも、少なくとも3mm程度は穴が開いている前提ですよね。何しろニードルの太さが6mmもあるので。しかし他の製品も、ニードル的なものを刺すことには変わりません。どんなに細くても3~4mmはあると思いますので、小さな穴への使用は厳しいのでは、、、

※次回はプラグがコンパクトなスタンズのダートツールを試してみる予定。

ロードのタイヤ幅だと、ニードルが奥まで入らない

今回のタイヤは28Cでした。パンクして空気が抜けた状態では幅が2cm程度になってしまいますので、ニードルが途中までしか刺さりません。ニードルをかなり斜めにして奥まで刺しましたが、却って穴を拡大させる結果を招きました。35C以上の指定がなされている理由は、こんなところにあるということが分かりました。

プラグが長い

元のプラグが長く、タイヤから盛大にはみ出ます。はさみかカッターが必須です。もしくは予め切断しておきましょう。

■まとめ

ということで、今回はレザインの『TUBELESS KIT(チューブレスキット)』を試しました。注意事項の通り、ロードバイクへの使用は少々厳しいですね。35C以上のタイヤに使うのであれば、全く問題無いと思います。

ただし、それでもCO2ボンベのように事前の練習が必要と感じました。クリンチャータイヤでのパンクの対処方法として、チューブ交換の講習会を行う販売店は普通ですが、この手の修理キットも講習会をやって欲しいレベルです。事前に不安を払拭しておかないと、販売は厳しいのではないでしょうかね…?

でもシーラントで塞げない穴が開いてしまったら、この手のプラグが無いとリカバリー不可能だと思います。その点では持っていても損は無いです。もしくはチューブを入れてクリンチャー化するか、ですね。ただタイヤを外すとシーラントでベトベトになるので、タイヤを外したくない人も大勢いるはずです。そういったニーズにはこれらの製品はしっかり応えていると思います。

今回分かったように、28Cでもこれですから25Cのタイヤだと更に厳しいです。ただし今回のインプレはプラグ系修理キット全般の話ではなく、あくまでも今回の製品に起因するもの(ニードルが太い)もありますので、そこは区別していただきたいと思います。今後も他の製品をテストしてみます。

シーラントにスタンズを使っているので、次回はこのダートツールを使ってみたいですね。

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スタンズのダートツールも試してみました。

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  1. 匿名

    Blackburnの類似品を使ってパンク修理を試みたことがありますが、空気圧が4barを越える辺りから空気が漏れました。
    加えて、タイヤの最外周付近で穴が空いた場合、スリックタイヤでは地面にモロに接するためか、走っているうちに砂などがひっついて、しまいには取れてしまいました。どうも、ブロックタイヤのようなものでないと上手く機能しない気がしますね。
    それとも何回かこなせば上手くできるようになるでしょうか…?

  2. morou2

    匿名さん
    私もこのレザインとスタンズのダートツールを試しましたが、基本的にロードバイク向けに作られていないと思いました。練習してもダメだと思います。おっしゃる通りブロックがあると、プラグが上手く隠れるのでしょうね。

    ただ、いずれにしてもパンク時の空気圧はせいぜい3.0barくらいが良いと思います。シーラントに塞がせる場合も、4.0barくらいまで圧を上げるとシーラントが漏れてきます。
    それと、違うツールを使う人から『ロードでも問題なく修理出来ている』というコメントももらっているので、ツールによっては大丈夫なのかもしれません。ダイナプラグという製品なのですが、既に買ってあるので次にパンクしたら試してみる予定です。

ABOUT ME
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当サイトは自転車関連のパーツレビュー、ブルべの走行記録を中心としたブログです。
管理人は40代のロードバイク乗り。20年前にCannondaleのCAAD3を買って以来、Cannoncdaleばかり乗り継いでいます。 昔はメッセンジャーやレース、今はロングライドとブルベ中心。2022年エベレスティング達成、2023年PBP認定、2024年キャノボ達成。ブルべの主担当もやります。
年間走行距離は約10,000km。身長170cm、体重57kg。
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