ロードの油圧ディスクのブリーディング(エア抜き)を行う。簡単にやり方を紹介 作業編

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それでは油圧ディスクブレーキのブリーディング作業の紹介です。今回は作業に入ります。準備編はこちらから。

■作業の準備

自転車の固定

まずは自転車をメンテスタンドなどで固定します。ブレーキキャリパーをフレームから外した状態で作業をしますので、自転車が固定されていないと作業が出来ません。可能であればホイールも外します。クランプで挟むタイプなどの大型メンテスタンドを持っていればベストです。

そんなものは持っていないという場合は、ディスクローターをビニール袋でくるむなどして保護して下さい。万一オイルがかかってしまうと、ローターの性能が大幅に低下します。

ブレーキパッドを抜く

ブレーキパッドも抜きましょう。そのままでも作業自体は出来ますが、ローターと同様にオイルが付着してしまうと使い物にならなくなります。

スペーサーの取り付け

パッドを抜いたらスペーサーを入れましょう。途中でブレーキレバーを握る工程がありますので、スペーサーは必須です。スペーサーはパッドを固定していた固定ボルトで固定出来ますので、同じように固定しましょう。

ちなみに私はスペーサーを発注したものの間に合わなかったので、コネクターインサートをホースに取付する際に使用するブロック(TL-BH61)で代用しました。何故か幅がぴったり。ただし固定が出来ないので、ビニールテープで巻いて落ちないように固定しました。

ハンドルの角度調整とファンネルの取り付け

ブラケットカバーをめくり、ブリードねじを露出させます。このねじはリザーバータンクのキャップの機能を果たしています。なのでオイルがこぼれないように、ねじ上面が水平になる角度にハンドル角度を調整します(※Di2系の場合)。

ハンドル角度を調整したらブリードねじを外します。Di2系の場合はこの根元がリザーバータンクとつながっています。機械式変速の場合は先端部分がタンクですね。ねじについているOリングがレバー側に残ってしまう場合があるので注意しましょう。

ねじを外したらファンネルを取り付けます。旧型のファンネルの場合はファンネルアダプターも必要です。機械式変速の場合は、ハンドルの角度調整をせずにファンネルを装着し、装着後にハンドルを前に傾ける手順となります。

■リア側からのオイル注入

準備が出来たら作業に入ります。今回はリアブレーキを作業します。作業はシマノマニュアルに従っていますので、まずはキャリパー側からオイルを注入します。

キャリパーをフレームから外します。

ブリードニップルについているゴムのカバーを取ります。

ここに7mmレンチをかけ、この様にチューブを接続します。オイルを入れると写真が撮りづらくなるので、オイルが入っていない状態で撮影。本来、チューブの先端には抜け止めのための黒いスリーブが付いているのですが、撮影の際に先端の状態が良く見えないので取っています。これが無いとチューブが抜けます。チューブが抜けてしまうとエアが入りますので、真似しないように。

実際はチューブをつなぐ前にシリンジにオイルを充填します。

チューブの先端をボトルに入れ、シリンジで吸い上げます。30mlも吸えば十分です。シリンジ内にエアも一緒に入りますので、チューブの先端を再度ボトルに入れ、シリンジを押して上手にエアを押し出しましょう。なのでオイルは多めに吸い上げておくと良いです。チューブの先端にエアがあると、ブリードニップルにチューブを装着する際にエアが入ってしまいます。表面張力でこぼれないギリギリまでエアを追い出しておきます。

ブリードニップルに7mmレンチをかけ、続いてオイルを充填したチューブをつなぎます。先ほども書きましたが、チューブ先端のエアを巻き込まないように注意します。あふれさせつつ接続する感じです。

実はこの時点でキャリパーをフレームに再固定しました。キャリパーが固定されていないと作業がやりづらいのです。特にレンチでブリードニップルを回す作業が出来ません。チューブが抜けそうになります。マニュアルにも『キャリパーはバイスやクリップなどで固定する』とありますが、バイスもキャリパーを挟めるようなクリップもありません。

そもそもオイルホースは途中までフレーム内蔵なので、露出している長さが10cm程度しかないんですよね。オイルホースが30cmくらい露出していればフレームから離れた作業しやすい場所で固定することを考えるのですが、、、残念ながらそうではないので、結局フレームに固定しました。

黒いスリーブとチューブホルダー

1つ分からない事がありました。先ほども書いたのですが、チューブの先端には黒いスリーブが付いています。これを付けたままブリードニップルにつなぐと、チューブの先端が拡がらないため抜け止めになります。しかしこの事はマニュアルには記載がありません。

チューブには更に『チューブホルダー』も付いています。↑の画像の黒いレバーです。こいつも抜け止めのためについています。しかしこのホルダーは非常に移動がやりづらい。オイルをシリンジで吸い上げる際に、チューブの半分位をボトルに突っ込みます。その時にホルダーも中ほどに移動させるのですが、そこから先端まで移動させる際にチューブが抜けそうになります。

結局、ホルダーは使わずにチューブの固定は黒いスリーブを使用。さらに、そのリングがずれて移動しないようにホルダーで抑えるという使い方に収まりました。

マニュアルとしてはホルダーを使えと書いてあるのですが、使いやすいのはスリーブ。スリーブだけでもチューブの固定は問題ありません。まぁチューブが外れなければ何でも良いと思いますが、正解が知りたいですね。あのスリーブは『納品時にチューブの先端を保護するだけのパーツなので、使う時は捨てて下さい』なんて事が無ければよいのですが…。

オイルを注入

無事にシリンジをつないだら、ブリードニップルを1/8回転だけ緩めて開きます。開いたらオイルを注入します。画像ではチューブ接続時にミスってエアが入ってしまっていますが、真似しないようにしましょう。エアが移動しないように気を遣って注入すれば大丈夫ですが、非常に面倒でした…。

出口となるファンネルからは、注入した分だけ古いオイルとエアが(あれば)出てきます。20mlをシリンジから入れましたが、押し出されたオイルはまだ綺麗でした。エアは1mmほどの気泡で出てくるのですが、ブクブクと出る訳では無く(そんなに出てくる状態ではまともにブレーキが効かない)たまにポコっと出てくる程度。ちなみにリアブレーキの位置でオイルを注入していると、ハンドルに付けたファンネルの中は覗くことが出来ません…。

この作業では、エアは出てこなかったと思われます

ここではオイルを移動させることでエアを抜くという作業ですが、長いオイルラインのどこかで引っ掛かっているであろうエアが必ず出てくるとは限りません。リアキャリパーのすぐ近くにあるエアなんて絶対に出てこないでしょう。

ちなみに機械式変速の場合は、ハンドルの角度を45度にしゃくり上げて更にオイルを注入しエアを抜くという手順が追加されています。リザーバータンクの位置がDi2とは異なるので、手順が微妙に異なるのですな。

作業が終わったら、ブリードニップルを閉じてチューブを外します。チューブを外す時はウエスを用意して、オイルが飛び散らないようにします。

■キャリパー側からのエア抜き

次はキャリパー側からエアを抜きます。まずはブレーキレバーを10回ほどニギニギして、オイルラインに圧力をかけます。

チューブと袋をつなぐ

ブリードキットに付属していたチューブと袋を用意します。袋を輪ゴムやテープなどでチューブに固定して、ブリードニップルにつなぎます。袋が無ければレジ袋でも何でも良いです。

チューブをつないだらブリードニップルを緩めてオイルを抜いていきます。キャリパー側にエアがあれば一緒に出てきます。マニュアルには、オイルライン、ブレーキレバー、キャリパーをドライバーのグリップなどで叩いて振動を与えるとエア抜きに効果的とあります。私はハンディマッサージ機を使って振動を与えました。これは中々効果的かもしれません。

この時、抜けたオイルの分だけファンネルに入っているオイルが減っていきます。オイルが無くなってしまうとエアが混入するという最悪の事態が生じますので、油面が下がってきたらオイルが切れないように必要に応じて注ぎ足します。

その後は適当に放置して、これ以上はエアが出ないと判断したらブリードニップルを閉めます。

更にエアを抜く

次はブレーキレバーを引いた状態で固定し、オイルラインに圧力をかけておきます。そのままの状態でブリードニップルを瞬間的に(0.5秒程度)開閉します。これを2~3度繰り返します。リア側の場合、この作業は手が3本無いと出来なかったのでバンドを使ってレバーを固定します。

この状態で一瞬だけブリードニップルを開きます。

作業が終わったら、ブリードニップルをしっかり締めておきます。締め付けトルクはマニュアルを参照して下さい。

■レバー側からのエア抜き

リザーバータンクのエアを抜く

最後にレバー側からエアを抜きます。Di2系の場合は、ハンドルのこの位置にあるCEマークが地面と平行になるようにハンドルの角度を変えます。機械式変速も同じくハンドルをおじぎさせます。

レバーをゆっくりニギニギします。するとリザーバータンクに溜まっていたエアが上がって来ますので、出てこなくなるまでやります。機械式変速の場合は、ハンドルを45度にしゃくり上げて再び同じことを行います。この時はそれなりにエアが出てきました。

この作業を終えると、正常な状態であればレバーもいつもの位置まで引いた時にレバーあたりが出て、それ以上引けなくなるはずです。私も適切な位置であたりが出たので、エアは抜けたと判断しました。

ファンネルを外す

ここまで出来たらエア抜きは一旦完了です。ファンネルを外しますので、オイルストッパーを用意します。

ファンネルの底にある穴に挿して栓をします。栓が出来たらファンネルアダプターごとファンネルを外します。

リザーバータンクの入り口周辺にはオイルが少しあふれているはずですが、そのままにしておきます。

ブリードねじを装着

ブリードねじでふたをするので、ブリードねじを用意します。

リザーバータンクにエアが混入しないようにするため、オイルをあふれさせつつそのままブリードねじを締めます。あふれさせたオイルは拭き取っておきます。とにかくエアを入れないことが重要です。

これで一通りの作業が完了です。

■作業後

この後、シリンジやホース類を片付けます。外したブレーキパッドをキャリパーに戻し、ホイールを装着。必要であればキャリパーとパッドのクリアランス調整を行います。

作業後にブレーキを握ってみた感触では、今までずっと微妙に甘かったリアのブレーキタッチがカチっとして完璧になりました。はっきり言って『人によっては気にしない程度』のタッチの甘さだったのですが、私はいつも気になっていたので非常に満足です。

左右でタッチが異なっていたので、どうしても気が付いてしまうんですよね。右も同じく微妙に甘いタッチであった方が、むしろ気にならなかったかもしれません。

作業のコツ

振り返って自分なりに作業のコツをまとめると、

  • オイルはケチらない。50mlのタイプは付属品がついてくるので1度は購入するが、最低でも100mlのタイプも別に用意した方が良い。
  • とにかく作業途中でチューブが抜けないように注意する。
  • マニュアル通りにやる。

あたりでしょうか。エアが長いオイルラインのどこにあるのか分からないという事が最大の問題です。なので、最初はとにかく順番通りにやるしかないと思います。オイルは何度もやる予定なら1Lを買ってしまうのも選択肢です。Amazonの1Lのところにあるレビューはまさにその通りで、湯水のごとく使う…まではいきませんが、経験が浅いうちはオイルをケチると上手くいかないこともあると思います。

作業が終わった後に、一晩経つとどこかに残っていたエアが移動してタッチが甘くなってしまう場合があります。その場合はレバーを数十回ほどニギニギするとエアがリザーバータンクに移動するという事なので、後は先ほどの『レバー側からのエア抜き』をやればエアを抜く事が出来ると思います。

SR600四国山脈のトラブルの時にこれを知っていれば…。もっと早くブリーディングを自分でやっておくべきでしたね。出先でトラブっても道具がないですけど。

ということでブリーディングも経験しましたので、油圧ディスクブレーキに関する日常メンテ作業は一通り出来るようになったと思います。あとはやった事が無いのはフレームから油圧ディスク車を組むことですね。オイルホースの切断にも専用工具があったりしますので、さすがに面倒そう。

作業は自分の備忘録を兼ねてまとめましたので、長くなりましたが参考にされて下さい。準備編はこちらから。

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当サイトは自転車関連のパーツレビュー、ブルべの走行記録を中心としたブログです。
管理人は40代のロードバイク乗り。20年前にCannondaleのCAAD3を買って以来、Cannoncdaleばかり乗り継いでいます。 昔はメッセンジャーやレース、今はロングライドとブルベ中心。ブルべの主担当もやります。
年間走行距離は約10,000km。身長170cm、体重57kg。
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