【レビュー】iRC ASPITE PRO RBCCをフックレスリムでクリンチャーとして使う

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iRCのクリンチャータイヤ『ASPITE PRO RBCC』を購入しました。ブルべと練習で400km程走ってきたのでレビューです。今回購入したのは28Cです。チューブレス専用であるフックレスリムに使えるクリンチャーという点が、特徴の1つとなっています。

■総合評価

  • クリンチャータイヤとしてかなり高性能
  • フックレスリムでの使用には全く問題ない
  • iRC伝統の脱着のしづらさは健在

今回はフックレスリムにクリンチャータイヤとして使用。2年ほどチューブレスばかり使っていましたが、クリンチャーもここまで良くなるのかというのが第一印象です。チューブレスに迫るというだけのことはあります。

ただしタイヤはチューブレス並みに脱着しづらいので、パンク修理の際は(私は)タイヤレバー必須。実際にチューブを1本ダメにしたので、パンクからの復帰性の容易さというクリンチャーの良さがスポイルされていると感じます。

■購入動機

PBPはパンクからの復帰性を考えて、クリンチャーを使おうと計画しています。

現在使っているホイールはフックレスの『ENVE45』。チューブレスしか使えないため、クリンチャー対応のホイールを調達しようと考えていました。そこに登場したのが今回のASPITE PRO。何とフックレスリムで使えるクリンチャータイヤということで、ホイールを調達しなくて済むかも?と思い購入。

ただしiRCのタイヤに対する私のイメージは『性能は良いが、恐ろしく脱着のしづらいブランド』。iRCのチューブレスも使ったことがありますが、脱着には本当に苦労しました。フックレスでも外れないクリンチャーということで、単に『気密層の無いチューブレスタイヤ(と同様に脱着しづらい)』を想像していたのですが、果たして実態はいかに。

■製品概要

概要

このASPITE PROの特徴の1つは、フックレス対応クリンチャータイヤであること。フックレスリムのオーナーは、フックレスを買う時点でチューブレス専用であることを当然ながら認識しており、クリンチャーとは縁を切る覚悟でホイールを選んでいます(複数のホイールを使い分ける人を除く)。

それでもこのタイヤをフックレス対応として発売した理由ですが、iRC曰く『フックレスでクリンチャーを使いたいというニッチなニーズがある』ためだそうです。私のように『クリンチャーとは縁を切ったつもりだったけど、やっぱりクリンチャーも使いたい』という奇特な人がそこそこいるらしい。覚悟が全然出来ていなかった。

ちなみにこのタイヤに限らずフックレスリムに対応させるには、伸びない素材をビードに使うことが重要らしいです。一般的なビードの素材であるケブラーは、この点で不適だとのこと。

またタイヤ自体の性能として、iRCは『チューブレスに迫る強さとグリップ力』と謳っています。これらの性能は、コンパウンド、トレッドパターン、断面形状から主に実現されているとのことです。

重量、サイズ展開、価格

ASPITE PROはRBCCとS-LIGHTがありますが、今回はRBCCの28Cを購入しました。私が使っているENVE45は内幅21mmで、28Cの装着を想定しているためです。以下にRBCCのサイズ展開と重量を載せておきます。

・25c:220g 
・28c:250g
・30c:275g

TPIは全て180。耐パンクベルトであるCROSS GUARDを搭載し、コンパウンドはRBCC(RICE BRAN CERAMICS COMPOUND 2)を使用。価格はいずれも7,480円(税込)です。

トレッドパターンについて

このタイヤから新しいトレッドパターンである『iRC HELLING BORN PATTERN』を採用しています。センターはスリック、更にショルダーとサイドでもそれぞれパターンを変えており、最適なグリップが発生する設計になっているとのこと。

その他

タイヤサイドの表記を紹介します。まず『HOOKLESS RIM COMPATIBLE』の表記。

空気圧に関しては、INFLATE TO 550-700kpa(80-100PSI)とあります。ただしこのENVE45のリム自体の最大空気圧が90PSIであるため、それ以内に抑える必要があります。

■レビュー

それではレビューです。

実測重量について

まず実測重量です。今回は28Cを購入しました。公称重量は250gですが、どちらもぴったり260g。2本とも同じ重量ということが凄いですが、10gも重いです。私の計測が間違っている…?

と思ったのですが、どうやら他の太さでも10g程度重い様子。乖離の度合いとしては25Cの方が大きいですね。

作業性について

気になる脱着時の作業性です。チューブレス専用のフックレスリムに装着するため、それなりに手強いことが予想されます。しかしあまりに手強いとレバーを使用せねばならず、装着時にパンクさせてしまう危険性が高まります。

まずビード部の形状ですが、一般的なクリンチャーのビード部と変わりません。チューブレスのようにゴツくなっているかと思いましたが、そうではありませんでした。

裏側もノーマルなクリンチャータイヤです。チューブレスばかり使っていたので新鮮です。

さてここにチューブを入れてビードをはめていきます。片側のビードを入れ、チューブを入れます。今回、チューブはスペシャライズドのスタンダードチューブを使用。もう片側のビードを入れていきますが、残り3割くらいから全くはまりません。もちろんビードはしっかりセンターに落とし、タイヤをしごいて寄せています。

これはかなり手強い…GP5000チューブレス並みです。iRCのタイヤレバーを使って無理やりはめていきます。時間がかかりましたが、どうにか押し込むことに成功。汗だくです。

さてフロアポンプで空気を入れてみると…空気が入りません。チューブを外して観察すると、タイヤレバーで傷つけており見事にパンクしていました。嵌め合いがきつすぎます…。

気を取り直して予備のチューブで再チャレンジ。2回目はしっかり空気が入ってビードが上がりました。

2回目で無事にチューブを入れることが出来ましたが、3回目も100%成功させる自信がありません。予備のチューブを最低でも2本は携行する必要がありそうです。

この作業の感触からすると『出先でパンクしても容易に復帰出来る』というクリンチャーの良さがあまり感じられません。特に一発勝負のPBP(Paris-Brest–Paris:1200kmある)では、一体何本のチューブを持っていけば良いのか不安になります。

ただし、この作業性の悪さはENVE45の深いハンプにも原因がありそうです。同じフックレスリム仲間であるZIPPの303を使っている人は『フックレスリムの方が脱着が簡単』という感想ばかりで、話が合わないのです。ましてや通常のフックドリムならもっと簡単なのだろうと想像します。

グラベルで荒い走りをしても、絶対にタイヤが外れなさそうなリム

走行性能について

肝心の走行性能です。iRCによると、新ASPITE PRO RBCCは以下の特徴を備えていると謳っています。

  • 高い耐パンク性能
  • しなやかな乗り心地
  • 高いグリップと転がりの良さの両立

これらの特徴を走る前に見てしまうとバイアスがかかってしまうので、私はレビューを書く時まで見ないことにしています。

以下は私が400km走って感じた特徴と、それぞれの感想です。また私の体重は57kg、身長170cm、空気圧はチューブレスを使っている時と同様の4.0barでセットしています。

最初に感じたことは、チューブレスのFORMULA PRO TUBELESS RBCCのクリンチャー版です。コンパウンドも同じものを使っていることもありますが、クリンチャーなのにチューブレスに近い乗り味を実現していると思います。

・グリップ

非常に良い。コーナーで倒しても非常に安定していて安心感が高い。ヴィットリアのようにタイヤ自体が変形してグリップするではなく、コンパウンドの特性で実現している印象です。むしろサイドには剛性があって、変形せずに粘っている感触です。その方が重心の軸を通せるので、私には扱いやすいと感じます。

・走り(転がり)の軽さ

コーナーでのグリップ感に反して、走りはそこそこ軽いです。コンチネンタルのGP5000には敵いませんが、GP5000の85%くらいの軽さは実現している感触です。

・振動吸収性

サイドの剛性感と走りの軽さからすると振動吸収性は悪そうですが、意外と悪くありません。アスファルトの表面の粗さのような細かい振動は拾わずに吸収してくれている感触です。これもコンパウンドが仕事をしている印象を受けます。

ただしあくまでクリンチャーなので、チューブレスではタイヤが上手に変形して吸収していた少し大きな段差などはそのままの衝撃を伝えてきます。そのため路面追従性という点では、70点という感じです。

総合すると、iRCが謳っている高いグリップと転がりの良さはチューブレス並みにしっかり実現されていると感じます(これだけでも十分素晴らしい)。しなやかな乗り心地という点では、細かい振動は吸収するものの、チューブレスほどの路面追従性には今一歩及ばずと思います。それでもかなり高いレベルです。チューブをラテックスにすると更に良くなりますね。

冒頭に述べたとおり、チューブレスの『FORMULA PRO TUBELESS RBCC』とキャラクターはそっくりで、性能もそれに迫るものをクリンチャーで実現していると思います。

耐パンク性能だけは数千キロ走らないと分かりませんので、ご容赦を。

■まとめ

クリンチャーでありながらチューブレスに迫る性能を実現していると思います。チューブレスを使う前(約3年前)は、好んでコンチネンタル(GP4000SⅡ~GP5000)を使っていましたが、GP5000よりも人によっては高評価になるのではないでしょうか。

ただしiRCは『ホイールから外れないこと』を元から重視しており、更にフックレスリム対応ということもあって、脱着は非常に大変です。私のホイールとの相性もあると思うのですが、それを差し引いても苦労しそうです。出先でチューブ交換に失敗することを考えると常用しない人も出てくるかもしれません。

性能には非常に満足しましたが、チューブ交換のことを考えるとこのリムを使ってのブルべでの使用はちょっと考えてしまいます。近々他のホイールを買う予定なので、そちらでも試してみたいと思っています。

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ABOUT ME
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当サイトは自転車関連のパーツレビュー、ブルべの走行記録を中心としたブログです。
管理人は40代のロードバイク乗り。20年前にCannondaleのCAAD3を買って以来、Cannoncdaleばかり乗り継いでいます。 昔はメッセンジャーやレース、今はロングライドとブルベ中心。2022年エベレスティング達成、2023年PBP認定、2024年キャノボ達成。ブルべの主担当もやります。
年間走行距離は約10,000km。身長170cm、体重57kg。
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