シマノDi2で飛行機輪行する場合のシートポスト内蔵バッテリーの外し方について
シマノDi2のシートポスト内蔵バッテリーを使っている自転車で、内蔵バッテリーの外し方と飛行機輪行をする場合にどのように対応するかをまとめました。
今回参加予定の2023PBPでは、私はエールフランスを使用してフランスまで移動しますが、諸々の事情を勘案してシートポストから内蔵バッテリーを抜くことになったためです。
内蔵バッテリーはリチウムイオン電池を使用しているため、エアラインによって受託手荷物として扱えるかどうかが異なります。基本的には受託手荷物扱いにはならず、手荷物としてキャビン持ち込みの前提で行動することが無難です。
するとバッテリーをフレームから外さねばならず、そのあたりをどうするか?というお話です。
■基本はエアラインに事前確認を行い、指示に従う
まずはシートポストを含む、内蔵バッテリーを使った自転車の扱いを確認する必要があります。結論としては受託手荷物として扱えるかどうか、早めに利用予定のエアラインに事前確認を行いましょう。
他のブログでは『ワット時定格量が160Wh以下なら問題ない』と書いてあったりしますが、どうも使用するエアラインを『JAL/ANAのみ』で想定している様子です。国内でもLCCだったり、私のように海外へ移動する場合は、事前に確認することをお勧めします。
そもそもリチウムイオンバッテリーを使用した製品は手荷物によるキャビン持ち込みが基本です。しかしエアラインによって線引きが微妙に異なるため、中には受託手荷物として預入れ可能な場合があります。
預入れが不可であれば、内蔵バッテリーを外して手荷物として機内に持ち込まねばならず面倒です。しかし事前確認も取り外す準備もなく空港へ行き『受託手荷物としては預かれません』と言われた場合、最悪の場合は予約した便を見送ることになります。
SRAMであればディレイラーに装着されているバッテリーを外すだけで済みますので簡単ですが、シマノの内蔵バッテリーは工具が必要な場合があり面倒です。
経験則や周りの話を聞く限りでは、JALとANAの国内線は受託手荷物として預入可能な場合がある模様(確認すらされない場合もある)。海外エアラインは受託手荷物としての扱いは基本的にNGという印象です。
参考までに、JALとエールフランスのリチウムイオン電池に関するアナウンスが記載されているページのリンクを載せておきます。
以下にケース別の方法を整理します。
受託手荷物として預入れ可能な場合
特に何もすることはありません。OS-500などを利用して普通にパッキングを行い、そのまま預け入れることになります。
ただし、誤作動を防止するため前後ディレイラーからエレクトリックケーブルは外しておき、ディレイラーが動作しないようにしておきましょう。
受託手荷物として預入れ不可な場合
バッテリーを外し、キャビン内へ手荷物として持ち込むことになります。
シートポストに内蔵されている場合は、サドルごとシートポストを外すかシートポストからバッテリーを抜くかのどちらかです。サドルごとシートポストを抜いてキャビンに持ち込む方が楽ですが、パッキングの都合により変わると思います。
バッテリーを抜く場合ですが、『Di2対応シートポスト』であっても、製品によりバッテリーの固定方法が異なります。事前に脱着方法を確認して、目的地でも問題なく復元できるようにしておきましょう。
内蔵される場所がシートポストではなくダウンチューブなどの場合は、脱着の手間を心配する必要はあまり無いと思います。
■シートポスト内蔵バッテリーの外し方
例えば輪行バッグが『SCICON エアロコンフォート』の場合、画像のようにサドルを利用する固定方法のためサドルを外すことが出来ません(その代わり、固定力は高い)。
そのためバッテリーだけをシートポストから抜く必要があります(代わりのシートポストとサドルを挿しておくという方法もなくはない)。
内蔵バッテリーをシートポストに固定する方法はいくつかありますが、ここではスナップリングを使っている場合の取り外し方法を具体的に紹介します。
バッテリーの固定方式について
内蔵バッテリーをシートポストに固定する方式ですが、代表的なものはこれ。アダプターをかまして固定する方式です(画像はDEDA用のアダプター)。工具などは不要なので比較的楽なケース。
大変なのはスナップリングを使って固定されている場合です。スナップリングプライヤーが必要になります。
私が乗っているキャノンデールのシナプス(2018モデル)はシートポストが1インチ(25.4mm)です。衝撃吸収を重視して径が細いため、アダプターをかますスペースが無いためでしょう。
ちなみに25.4mmという径のシートポストを作っているブランドはほとんど無く、画像のシートポストはキャノンデールブランドです(一応カーボン製です)。そのためか分かりませんが、現行のシナプスでは一般的な27.2mm径に変更になっています。私もシートポストを自由に選びたい。
スナップリングの外し方
それではスナップリングの外し方です。リングを外すだけなので、慣れれば大したことはありません。
まずは用意するものその1、スナップリングプライヤー。穴用と軸用がありますが、穴用を選びます。私はトップ工業のHB-125を購入しました。
ここで安物を選ぶと後悔しますので、最初から良いものを買いましょう。スナップリングは狭いスペースに収まっているので、精度の高い工具でないと脱着ができません。
私は最初に某ホームセンターのPB品を買ったのですが、精度が甘いせいでスナップリングを外すことができませんでした。結局、上記の製品を買い直しです。
次はエレクトリックワイヤーの脱着工具。400円程度なので持っている人も多いと思います。12速用なら『TL-EW300』。11速用なら『TL-EW02』ですね。
※表示されている価格はAmazonのものです。楽天、Yahooは通常価格で販売されています。
工具が揃ったら作業に入ります。シートポストを抜いて、エレクトリックワイヤーを外します。
続いてスナップリングプライヤーを使い、スナップリングを外します。リングの隙間が無くなるまでプライヤーで掴み、丁寧にリングを外します。しっかりと掴まないと外れませんので、工具の精度が作業の成否に反映されます。
無事にバッテリーが外れました。
このスナップリングを使用する固定方法はシマノ推奨の固定方法ですが、やたらパーツが多いです。シムをかませて外径を合わせて、
ワッシャーを載せます。ウェーブワッシャーを2枚のワッシャーで挟んでいます。当然ながら移動先ではバッテリーをシートポストに装着する作業が発生しますので、構造を理解しておきましょう。
ちなみにバッテリーの固定にアダプターを使わないパターンの場合、脱着すると分かりますがポスト側の径もほぼ1インチ(恐らく26.0mm位)でバッテリーの径とほとんど変わりません。これを利用して薄手のテープを巻き、バッテリーの径を太くすることでスナップリング無しでも固定することが出来てしまったりします。手で強く引っ張ると抜けますので、海外遠征の時くらいであれば、この程度の固定力があれば十分だと思います。私はPBPの時はこの方式にすることにしました(私が通うショップのお客さんでもこの方式の人が何人かいるとのこと)。ただし荒れた路面を走ると下がってくる場合があるので、可能な限り強めの固定力に調節しておきましょう。
ちなみにスナップリングの穴の位置には指定があり、三角形のポートの下側、ややスペースのある部分に収めよとなっています。
またバッテリーにはポートが3つありますが、中央のポートは必ず使用しなければならない仕様になっています。中央ポートにケーブルを接続しないと、ディレイラーは動作しません。
バッテリーを抜いたシートポストは、再びフレームに挿すことになります。その際、フレームから出ているエレクトリックワイヤーをシートチューブの中に押し込むことになります。念のため余ったエレクトリックワイヤー2本をテープで束ねてシートポストに突っ込み、少しでもシートチューブの中に押し込まれないようにしておきます。
取り外したバッテリー、シム、ワッシャーはそれぞれ別のジップロックなどに入れて保管しておきましょう。
これで内蔵バッテリーの取り外しは完了です。取り外したバッテリーは手荷物としてキャビンへ持ち込み。フレームは受託手荷物として預けます。ここまでやれば、当日に心配する必要はないでしょう。慣れたら10分あれば作業完了しますので、問題になることはないはずです。
以上、飛行機輪行時のシートポスト内蔵バッテリーの扱いについてでした。当初は私も『シートポストからバッテリーを抜くのは極力避けたい』と思っていたのですが、工具を揃えて実際にやってみたら、思っていたよりは楽な作業でした。
現時点では当日の搭乗トラブルが無いという観点で最もリスクの少ない方法と思いますので、対応方法について悩んでいる方は今の内に脱着の練習を行っておくのが良いと思います。